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 あれから10日が経った。  結論から言うと、俺はPKS研究所にいて、緋室さんと共に暮らしている。  ……と言っても、あのような無理な実験や拷問を受けているわけではない。  むしろ。 「おいで、あゆむ」  やわらかく呼ばれ、狭いベッドにもぐる。  胸のあたりに頬をすり寄せると、髪をそっとなでられた。  気持ちいい。居心地がいい。 「きょうは楽しかった?」 「うん。だんごむしいっぱい見つけた」 「それはうれしいね」 「緋室さんだいすき」  緋室さんの前では、自然体でいられて、童心に帰れる。  子供みたいにすねても怒っても根気強く向き合ってくれるし、かけがえのない存在を見つけたように思う。 「緋室さん、あしたはサンドイッチたべたい。ピクニックしたい」 「ごめんね。あしたは別の治験の方が来るから、遊びに行けないんだよ」 「やだっ。治験、男? エッチする?」 「あはは、しないしない」  俺の額に、ちゅっと口づける。 「すっかり壊れたね、あゆむは」 「なあに?」 「ううん、何でもない」  緋室さんは、裸のままちょっと布団から出て、手帳に何やら書き込んだ。 「ピクニックはできないけど、早起きして、サンドイッチ作りは一緒にしようか。うんとおいしいのを作ろう」 「やった! 緋室さんだいすき」  抱きつくと、緋室さんは俺の背中をつうっとなぞった。 「……ぁっ」 「これだけで感じちゃう?」 「ん、ん。きもちよくなりたい」  緋室さんは、手際良く全身のあちこちを触り、俺を絶頂に導く。 「……ぁ、あ、あ……、きもちい、イッちゃぅ」 「うん。イッて?」 「んぁっ、ぃ、イク、ぁあッ……!……あぁ……っ!」  大好きな緋室さんの青白い指を、欲液で汚した。  そう考えるだけで、なんとも言えない満たされた気持ちになった。  息を切らしながらそっと盗み見る。  ざっと俺の体を拭いた緋室さんは、慈しむように目を細め、何度も「可愛い」とささやきながら、俺の髪をなでた。  心地いい声。息遣い。肌の温もり。心臓の音。  眠りに落ちる前、緋室さんは優しく微笑んだ。 「きょうはどうしたい?」 「ん、おくすり、して」 「分かった。じゃあ、可愛いお尻の穴見せて?」  四つん這いになり、頬はべったりとシーツにくっつけて、お尻を高く上げる。  両手で開いて見せた。 「あゆむは、無理やりされてるの?」 「ううん。緋室さんにしてほしくて、じぶんから言ってる」 「そうだね」  欲しくて仕方がないお尻の穴がひくつく。  愛液を分泌するようになったお尻の中からとろっと蜜が漏れて、周りをぐっしょりと濡らす。  緋室さんは、ぐいっと座薬を挿入した。  ぬちっという粘着質な音で、イッたばかりの体がまた興奮する。 「ぁあッ、ああ!」 「よしよし、いいこだね」 「ぁあ……ッ、……ぁ……」  緋室さんに背中をさすられるうち、興奮していたものがおさまり、ふわふわした感覚になる。  ぼーっとした意識のまま体を預けるようにしたら、眠気がやってきた。 「きょうも幸せな夢を見られるといいね」 「うん。おやすみなさい」  ぼんやりと、夢を見る。  心優しい科学者が、俺の脳を少しずつ切り刻んでいく、優しい夢を。 (了)

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