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誠を思い通りにさせることに成功したあの日から、早半年。
予定では、すっかり主従関係が出来上がり、性奴隷にまで堕としている頃……だったはずなのだが。
「たかひろさん、見て見て。どうかな?」
「ん、よく似合う」
冬物のアウターを羽織り、ぐるりと1周回って、無邪気に笑う。
「買ってあげようか?」
「ううん、バイト代下ろしてきたから平気。すいませーん、これくださーい」
ハンガーを持ってさっさと店の奥に入っていく誠を、くすっと笑いながら見守る。
我ながら、すっかりあの子にほだされたな、と思った。
本気で俺のことが好きだったらしい誠は、恋人という形になってから、驚くほどによく甘えてきた。
それに、俺のアドバイスを聞いて、着々と成績を伸ばしている。
勉強を通して自信がついたのか、いつの間にか人見知りも直り、最近アルバイトを始めた。
まっすぐに、好き、会いたいと伝えてくるその眼差しがまぶしくて、気づけば俺も、変わってしまったのだと思う。
自分好みに調教なんかするより、ありのままの誠が感じている姿を見る方が、そそられる。
純真で無垢な誠が自ら見せる、淫らな一面は、どんな妄想にも勝つのだと知った。
それに。
「たかひろさん、見て。次回5%割引券もらった。また来ようね」
「何か欲しいものあるの?」
「んーん。たかひろさんに似合いそうな服いっぱいあったから。また来たい」
無邪気に抱きついてくる仕草が可愛くて……まあ要するに、俺がイチコロにされているのだ。
内心苦笑いしながら、頭をぐしゃぐしゃとなでる。
誠は、こてんと首をかしげて、上目遣いにこちらを見て言った。
「ね、このあと、たかひろさんの家に行きたいな」
「買い物はもういいの?」
「うん。それより、くっつきたい。ダメ?」
「ダメなわけないでしょ」
「やった。じゃ、早く行こ?」
志望校は、三橋大だという。
誠の部屋の壁には、『たかひろ先生と先輩後輩!』と貼り出してあり、現役で合格できれば1年間だけ一緒に通えるので、それを楽しみに勉強をしているのだそうだ。
親御さんも、誠が俺に懐きっぱなしなのを、微笑ましく見ているらしい。
いつもすみませんと言いながら夕飯のおかずを分けくれたりしているので、なんだかもう、すっかりと。
人間の価値観がこんなに変わるものかと、自分で笑ってしまう。
「たかひろさん。ねね、きょうは何教えてくれるの?」
「別にセックスしながらじゃなくてもいいでしょ?」
「僕あれけっこう好きなんだもん。すぐ頭に入るし」
白肌を赤く染めて、潤んだ瞳で『先生早く教えて』なんて言われるのは……誠にベタ惚れになってしまった俺には、少々刺激が強すぎる授業だ。
(了)
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