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 僕こと三船(みふね)秋人(あきひと)は、いま、人生で最高潮に緊張しています。  なぜならば、恋人で同棲相手の深澄(みすみ)に、とある大事な提案をしようとしているからです。  順調な交際。  極めて平凡なふたりの生活。  そう自負していますが、僕のこの提案は、もしかしたらそれを壊してしまうのではないかと思っています。  でも、できれば理解して欲しい。  そんなことをぐるぐると考えながら、深澄がどんな反応をするのかを想像すると……緊張しています。  僕たちの説明をさせてください。  いまから3年前、僕たちは、高校教諭と教え子という、いわゆる『不適切な関係』から交際を始めました。  しかしいまは、深澄は大学2年生になり、やましいことはありません。  平和そのもの。  どこにでもいる普通のカップル。  幸いなことに、深澄のご両親は寛大な理解を示してくださり、今年の春に同棲を始めて、まもなく4ヶ月というところです。  僕があしたしようとしている提案は、そんな、何もしなければ平和な毎日に、あえて石を投げるような行為です。  僕としては、この願いが叶えばきっと楽しいものになるはずだと思っているけれど……もしもそれが、僕のただのエゴだったら?  エゴを押し付ける僕を、深澄が見限ってしまったら?  考えるほどに、緊張しています。  もしこの話を読んでくださっている方がいらっしゃいましたら、どうぞ、祈ってくれませんでしょうか。  僕は深澄が大好きで、深澄がいないとうまく生きられません。  そんな僕が、彼の手を離さずにいられるよう……祈って欲しいのです。  僕の気持ちが、深澄に伝わりますように。

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