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親の期待に応えて、教師の期待に応えて、友達には親切にして。
そういう態度でいるのが一番楽だというのが、17年生きてみての感想だ。
自分の我なんか通すより、人が求めていそうなものをこなしている方が、結果的にストレスなく生きられる。
誰にも悪意を向けられない。
そういうのが一番楽で。
「誰か、水上 の家にプリント届けてくれないか?」
帰りのホームルームが終わる直前に、担任がそう言った。
俺は、当たり前のように手を挙げる。
「俺行きますよ」
「おー、悪いな、筧 」
全然悪いと思ってなさそう。
周りはほっとしている。
まあ、どう考えても面倒だもんな。
俺はプリントが入った封筒を受け取り、なぜかここのところ学校に来ないクラスメイトの家に向かった。
面倒ごとを買って出たのは、早々に疑惑から外れるためだった。
急に不登校になるなんて、いじめがあったと思われても不思議はないし、高3の6月という大事な時期に揉めごとに巻き込まれるのはごめんだ。
……と考えると、些細な用事を1回引き受けるだけで除外してもらえるなら、全然苦じゃない。
自宅の2駅手前で電車を降り、地図アプリを見つつ、伝えられた住所に向かう。
普通の住宅街の、普通の戸建て。
荒んだ家庭ってわけでもなさそうだなと思いながら、インターホンを押す。
「はい」
「つむぎくんのクラスメイトの筧です。プリント届けに来ました」
「えっ!? かけいくん!? え、えっ」
出たのは本人だったらしい。
たいそう慌てふためいた様子で、何か言っている。
「あ、体調悪いとかだったら全然、出てこなくて平気だよ。ポストに入れておけばいいかな?」
「え! いや、せっかく来てもらったのに、もっ、申し訳ないから……っ、待ってて」
インターホンが切れ、しばらくすると、玄関ドアがそっと開いた。
そのすき間から見えた姿を見て、仰天する。
生っ白い素肌にまとっているのは、子供に大人気のキャラクター『ぴよちゃん』のパジャマ。
柔らかそうな丸いボブの前髪も、ぴよちゃんのヘアピンで留めてある。
顔が真っ赤だ。
「ご、ごめんね……変なかっこで。誰も来ないと思ってたから、部屋着で」
「え? いや、全然。こっちこそ急でごめん」
戸惑いつつ上がり、水上くんの自室に案内される……と、俺は思わず絶句してしまった。
部屋中ぴよちゃんだらけ。
ベッドの上は、シーツも掛け布団もぴよちゃんだし、大小のぬいぐるみが敷き詰められている。
机の上の文具もぴよちゃん。カレンダーもぴよちゃん。
お茶を持って階段を上がってきた水上くんは、消え入りそうな声で言った。
「…………き、気持ち悪いよね。男がこんな、」
「別にいいんじゃないの。好きなものは好きで」
座るのに罪悪感が芽生えるようなぴよちゃんのクッションをすすめられ、おずおずと座る。
俺は、気まずくならないように、軽く質問してみた。
「GW明けからずっと休んでるけど、大丈夫? 体調悪いの?」
「ううん、そういうわけじゃないんだ。ただ、なんとなく行きにくくなっちゃっただけで……」
「誰かにいじめられてるとか?」
「違うよ。むしろ、あんま誰とも絡んでないし」
クラスの端っこにちまっと居る人。
俺の中で水上くんはそういう印象しかない。
「言いたくない理由? 無理にとは言わないけど、相談とかあるなら全然、聞くし」
「ん。ありがと。でも大丈夫」
そう言って水上くんは、ぴよちゃんのガラスコップを両手で包み、ちょっと口をつける。
小さな唇が麦茶に触れていて、そのまま上目遣いにちらっと見られたら……なんだか妙な気分になってしまった。
俺も麦茶を飲む。
「筧くん、来てくれて、うれしい。ありがとう」
水上くんはコップをミニテーブルの上に置くと、俺の横にすすっと寄ってきて、小首をかしげた。
「あの……覚えてる? 4月の最初のグループワークのとき、筧くんが僕のこと入れてくれたの」
「ああ、覚えてる覚えてる。ってか、まともに話したの、あれ以来かもね」
「うん。あのとき優しくしてくれてうれしくて、また話したいって思ってたけど、筧くん人気だから話せなくて」
純粋な目で見られたら、ちょっと申し訳なくなってしまった。
点数稼ぎみたいにしたことをずっと覚えていて、話したいと思っていてくれてたなんて。
「学校休んでるの、それと関係ある?」
「……ある、かも」
水上くんは、俺の腕をやんわり掴むと、突然キスしてきた。
「ん……!?」
「ごめん、好き。好きな人が来てくれると思わなくて。ごめん、止まんない」
「ちょっ、はっ!?」
ごろんと世界が反転して、押し倒されたのだと理解する。
「ちょっ、冗談よせって」
「冗談なんかじゃないよ、ほんとに僕、筧くんのことずっと好きだったから」
顔を両手で挟まれて、そのままキスされる。
柔らかい唇でふにふにと口づけられて、力が入らない。
「ん、んぐっ」
「好き、かけいくん、すき」
水上くんの片手が、俺のベルトのあたりをさまよっている。
驚いて突き飛ばそうとしたけれど、頭にぴよちゃんをくっつけた人物に乱暴なことをするのは憚 られて、……そんなことをしているうちに、ズボンをずり下げられてしまった。
「筧くんは何もしなくてもいいから」
水上くんはそう言ってパンツをずらすと、俺のペニスを咥 えた。
「……、ちょ、」
「ん、んむ」
小さな口でフェラチオされて、いとも簡単に勃ってしまう。
絶対やばいと思っているのに、頭を押さえる手に全然力が入らない。
言葉だけの抵抗を口にする。
「…………っ、やめろって」
「きもひぃ?」
「っ、はぁ」
彼女いたことないし。
付き合うとか別れるとか、敵を作るようなことはしないし。
だから、人にこんなとこ咥えられたこと、ないし。
「ぅぁ、も、……っ」
「いっへぃぃょ」
「離っ、やめ……ぅ、ン…………ッ!」
じゅるじゅると吸われて、口の中に思い切り射精してしまう。
水上くんはとろんとした目で全て飲み干し、ぺろりと舌で唇を舐めた。
「筧くんの味」
「……やめろ、マジで、ふざけんな」
「ふざけてないよ。筧くんも、もっと気持ちよくなりたいでしょ?」
勃起がおさまらないペニスをつんつんと突かれて、絶望する。
「もう1回口でしてもいいし、僕のお尻、挿れたかったら挿れていいよ」
ぴよちゃんパジャマのズボンを下げると、するりとしたお尻が見えた。
挿れたら……気持ちいいんだろうか。
やっぱり、自分の手で擦るのと穴に挿れてするのでは、気持ちよさが違うんだろうか。
水上くんが四つん這いになりお尻を開くと、ダメだと分かっているのに、目が釘付けになってしまう。
「挿れて? 気持ちよくなろ?」
俺は無言で水上くんの腰を掴み、ペニスをぐっと挿れた。
「あ、ぁ……っ」
白い肌が、真っ赤に火照っている。
少し動くと、中の壁が吸い付いてきて、くちゅくちゅと卑猥な音を立てた。
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