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「あ、あっ、奥、きもちぃっ」
「……ッ」
何も言わず、ひたすら腰を振る。
女を抱いているような気持ちで、好き勝手に乳首をいじくりながら、薄い胸を揉む。
壮大なオナニーだと思うと興奮してきて、前からしてみたいと思っていた妄想を次々やってみた。
肩を噛む、乳首を乱暴に引っ張る、太ももを鷲掴みにする。
「はぁっ、筧くんっ、きもち……ッ、あン」
気持ちいいことをすると中が締まるようなので、俺は水上くんのペニスを扱 いた。
男のこんなものを触るなんて狂ってるけど、そうするとこっちが気持ちいいんだから仕方ない。
そう言い訳して、先走りで濡れそぼるものをぐちゅぐちゅと扱く。
「んッ、ふぁ、筧くんがエッチしてくれてる……、んぅ」
「いつも何想像してた?」
「……こうゆうこと。後ろからちょっと乱暴にされたり、とか」
「エロいな」
「ひ……、ぁッ」
いじわるなことを言うと、中が締まって気持ちいい。
より興奮できるものを求めて、無い胸を揉みしだきながら、耳の中に舌を挿れる。
「ぁンッ、おっぱいきもちぃ。乳首、もっとコリコリして……っ」
「なんで男なのに胸揉まれて気持ちよくなってるの?」
「ぁぅ、興奮する、女の子になったみたぃ」
「ちんこは? 女なら触んなくていいよね?」
「や……、おちんちんも触って」
「ダメ」
素早く腰を打ちつけるたび水上くんのペニスがぷらぷらと揺れていて、興奮してくる。
執拗に胸を揉みしだき乳首をカリカリと刺激すると、水上くんは身をよじった。
「はぁっ、お尻の中、熱い。じゅぼじゅぼいってる」
「うん。穴すごい広がって、ちんこが出たり入ったりしてる。普通こんなの入んなくない? なんで入ったの?」
「んぅ、筧くんにおちんちん挿れてもらうの、いっぱぃ想像してたぁ……っ」
「こんな可愛い部屋で、クラスメイトのこと考えながら、ひとりでエロいことしてたんだ?」
「は、はぁっ……、えっちでごめんなさぃ」
再びペニスを扱いてやると、絶叫してそのまま射精した。
「ああぁ……ッ!」
「やば、気持ちいい」
「あンッ、も、イッてるっ、や……っ! ぁあッ!」
「ずっとイッてて」
ビクビクと体が跳ねてイクたび、俺も引っ張られるように中に出してしまう。
こぼれてきた精液で、太ももまでびしょびしょだ。
「ぁ……っ、もぅイケないっ、んぅっ」
「やめる?」
「んん、やめないで、……やめないで、帰らないで」
ぐずぐずと泣き出したので、俺はゆっくりと動きをゆるめ、ペニスを引き抜いた。
こてんと力なく倒れた体に覆いかぶさり、何度か口づける。
「もうやめよっか」
「…………、」
「さっきのあんな誘惑してきたの、無理してたでしょ?」
「ちがぅ」
「大丈夫だよ。やめても帰らないから」
水上くんは大きく目を見開いた。
俺は頭を撫でながら、首筋に顔を埋めてつぶやく。
「酷くしてごめん」
ふるふると首を横に振るので、ぎゅーっと抱きしめた。
「興奮して、道具みたいにしちゃった」
「ううん。そうしてって言ったのは僕だし」
ぼろぼろと涙を流すのを、指ですくう。
その表情を見て、胸の奥がぎゅーっと締め付けられる感じがした。
「……俺ほんとは、プリント届けに来たの、先生の点数稼ぎたかっただけなのね。特別水上くんのこと心配してたわけでもないし、相談乗るって言ったのも、他の人にいじめとか疑われたくないから、ちょっと味方しとこうかなみたいな打算で。ごめんね」
一気に打ち明けると、水上くんは少し困った顔をしたあと、首を横に振った。
「ううん。全然。それでも来てくれたのうれしいし、筧くんは優しいと思う」
「こんなのこと言ってるのも、またセックスしたいだけの打算かもしれないよ」
「そんなことないと思う。筧くんは優しい」
水上くんの真剣な目と、おでこのぴよちゃんが同じ目をしていて、じっと見られると、ちょっとおかしくなってきてしまう。
「付き合おっか」
「え……っ!? な、なんで……? いいの?」
「うん。いい。水上くんがいい。俺、こんな風にほんとのこと言えたの、はじめてだから」
俺が頭を撫でると、水上くんはくすぐったそうにして笑った。
「僕、あしたからちゃんと学校行く。実は、学校行けなかったの、筧くんのこと好きなのに見てるのが辛くなっちゃっただけだから」
「え? てことは、俺のせい……?」
「せいとかじゃないよ。ただ僕が勝手に行」
がばっと抱きしめ、あちこちにキスする。
「責任取る。1ヶ月授業受けられなかったの、俺のせいでしょ?」
「せ、せきにんなんてそんな、大げさだよ」
「いや。もう他人の点数稼ぎなんてやめた。もっと大事なことが人生にはある」
* * *
「――なつかしい」
俺は、ちょっと汚れたぴよちゃんのヘアピンをつまみ上げながら言った。
「何が?」
「ほら、つむぎが高校のときにつけてたヘアピン。棚の奥にあった」
「やめて、黒歴史」
「なんでだよ。ちょっとつけてみって」
つむぎは頬を膨らませながら受け取り、前髪を留めた。
「おー可愛い。ハタチとは思えない」
「もう、こんなことしてたら荷造り終わらないよ」
ぷりぷり怒りながら、引っ越しの段ボールにぴよちゃんタオルを詰め込む。
俺は笑いを噛み殺しながら、ぴよちゃんマグカップを緩衝剤で包んだ。
高3の6月から付き合い始めた俺たちは、俺がきっちり責任を取る形で勉強を教え、同じ大学に合格した。
それからさらに2年、順調に交際を重ね、ついに同棲するというわけである。
周りの目とかは全く気にしない。
つむぎのことだけ考えているのが、楽だからだ。
「つむぎ、おいで。ちょっと休憩しよ」
「えー? 間に合わなくなるよ」
「あとで寝ずに働くから」
あぐらをかきぺんぺんとひざを叩くと、つむぎは恥ずかしそうにしながら、俺の太ももに乗った。
「……これ、ヘアピン、家でふたりきりのときは使おうかな」
「うん。絶対外につけてかないでね。俺以外の奴に見せちゃダメ」
「見せるわけないでしょ、こんな子供っぽくて恥ずかしいの」
つむぎは俺の鎖骨におでこをくっつけながら言った。
「ひとりしか見せません」
生きるのが楽だ。
つむぎと居ると、嫌なことも良いこともひっくるめて、世界が好きになる。
ふたりなら大体うまくいくと、信じられる。
(了)
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