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 あれから3年が経った。  僕たちはとある離島で、神奈川県で生き残った50人ほどのコミュニティの一員として、暮らしている。  自衛隊員のひとが言っていたとおり、ゾンビに襲われたひとと助かったひとの差は、その時点で子孫を残しそうかどうかだったようだ。  うちの学校は、僕たち以外全滅。  恋愛なんて興味ない、二次元の女の子しか興味がないと言っていた友達もけっこういたけれど、結局彼らも、誰かと恋愛をしたかったのだろうな。  島の中で出会って恋をした男女カップルが新たに子供をもうけても、ゾンビは出てこなかった。  成長した子供たちも、好きなひとを見つけている。  恋愛に興味がないひとは、それはそれでのびのび暮らしていて、周りからの重圧がなくなって生きやすいと言っている。  お年寄りは優しいひとばかり。  そして―― 「おーい、小平! カニいる!」  磯の岩間からひょっこり顔を出した先輩は、片手に大きなカニを持っていた。  僕はバケツを抱えて駆け寄る。 「うわ、めっちゃ大きいですね」 「富沢のばーちゃん喜ぶぞこれ」 「僕、味噌汁食べたいです」  自然に手を繋いで、ほんのちょっとキスする。  すると、そばで遊んでいた子供が大声で叫んだ。 「あー! またキスしてるー!」 「うるせえなー可愛いからいいんだよ」 「ちょ、ちょっと……っ」  肩を抱き寄せて無理やりキスしてこようとするのを、カニを押しつけて阻止する。  そして、小声でつぶやいた。 「そういうのは家ですればいいじゃないですか……」 「んー? お前ほんと、誘い上手だなあ」 「さ、誘ったわけじゃないですよっ」  収穫したものを共用食堂に預けて、自宅に戻る。  けっこうみんな好き好きに家を建てて住んでいて、僕たちも半年ほどかけて小屋を作って、ふたり暮らしをしている。  文明のほとんどは本土に置いてきた。  だから、ガスも電気も水道もないし、お年寄りの知恵や専門職だったひとたちの知識、それから日々の発見で生きている。  先輩は帰るなり僕を毛布の上に押し倒した。  この手作りローションは、誰に教わったんだっけ? 「ほら、脚開いて」 「ん……恥ずかし」  先輩の骨張った指が、お尻の中にするりと入ってくる。  いとも簡単に気持ちよくなってしまって、かなり恥ずかしい。  全然慣れない。 「ぁ、……はぁっ、は、」 「すげえ、中、吸いついてくる」 「んぅ、ふ、ぁ……っ」 「挿れる前に1回イク?」  返事もできず、息を詰めてのけ反る。  薄い壁の適当な小屋だから、派手に喘ぐと外に聞こえてしまう。 「…………ッ、せんぱぃ、だめ、んっ」 「我慢すんな」 「ダメ、イク、んぅ……ッ、……!……っ!」  指で激しく掻き回されて、長く長くイッている。  精液は出ない。  体がビクビクと跳ねて、そんな僕を、先輩はいやらしい目で見下ろしている。 「挿れる」  服を脱ぐと、日常で鍛えられた弾力のある筋肉が露わになった。  反り立つペニスを見て、思わず生唾を飲む。  ずぷずぷと侵入してくると、快感に身をよじった。 「ん、……ん、んっ」 「こっち見ろって。可愛い顔見たい」 「……ふぁ、」  先輩はかっこいい。  率先して体力仕事をしたり、子供と遊んだり、それでいてこんな風に、僕だけに特別な目を向けてくれる。 「すき、……すきっ、ぁぅ」 「かっわいー」 「奥きもちぃ」 「うん。小平はエッチ好きだもんな」 「ちが……っ、先輩がすき、ん、はぁっ、だめ」 「いいよ、イッて」  ぎゅーっと目をつむる。 「も、イク、あぁッ……!」  ビクビクと吐精しながらうっすら目を開けると、先輩は艶っぽい目で僕を見下ろしていた。  興奮のままに熱を撒き散らす。  先輩は小さくうめいて、僕の中で果てた。  夜、眠る前。  寝ているのか起きているかの境目があいまいなとき、いまだにあの日の悪夢を思い出して、飛び起きることがある。  そうすると先輩はいつも目を覚まして、黙って僕を抱きしめてくれる。  もちろん、先輩も同じようにうなされることとかがあって、そういうときは抱きしめてあげる。  多分、世界中で生き残ったひとたちはみんなこんな感じで、小さな群れの中で最小限の平穏を繰り返し噛み締めながら、生きているのだろう。 「大丈夫、大丈夫。もう怖いことなんてないだろ?」  頭を撫でられ、目をつむると、先輩の胸のあたりに耳がくっつく。 「はい。怖くないです」  生きている。僕も、先輩も。  これからも。 (了)

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