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 僕はこの神殿で奉公をしている。  質素倹約を心掛け、毎日神に祈りを捧げてきた。  そして、14歳になったきょう、新たな洗礼を受け、修道士になる。  洗礼のための小さな礼拝堂は、神殿の敷地のはずれの森の中にある。  僕ははじめて足を踏み入れるので、どんな場所かは分からない。  洗礼は司教のアーヴィンさまのおっしゃるとおりにすればいいのだと、修道士の先輩に聞いた。 「ロイ、こちらへ」 「失礼します」  小さな礼拝堂には窓がなく、正面の祭壇と主の彫像、そして、その(かたわら)に天蓋付きの寝台が置いてあるだけだった。 「まずは洗礼をしましょう」  アーヴィンさまは扉にかんぬきをかけ、僕を正面に促した。  祭壇の前でこうべを垂れ、両手を組んで、洗礼の言葉を待つ。  アーヴィンさまはロザリオを手に掛け、お言葉を口にした。 「ロイ・ミハエル・コレット。主のお導きに従い、身も心も捧げることを誓いますか?」 「はい。誓います」  顔を上げると、アーヴィンさまが胸の前で斜めのクロスを切られた。  僕もそれに(なら)ってクロスを切りながら、決意を心に刻む。  何があっても、神の御心のままに生きていこう。  ふわりと、顔にベールがかけられる。  白いレースのすき間から、アーヴィンさまの美しい姿が見えた。  上品な笑みを浮かべ、僕の門出を祝福してくださっている。 「さあ、ロイ。儀式を始めますよ」 「儀式……とは?」 「私に身を任せてくれればいいですよ。それが即ち、主に従うことです」  そっと手を引かれ、寝台へ歩を進める。  僕はよく分からないまま、そこへ寝かせられた。  ベールがはらりと床に落ちる。 「あ、ごめんなさいっ」 「そのままで」  アーヴィンさまが、寝台に乗ってくる。  そして、僕が着ているワンピース型の修道着の下に、手を入れた。 「……っ、」  訳が分からず固まっていると、服がめくり上げられた。  アーヴィンさまが、僕の胸に唇を寄せる。 「あなたの心音を確かめています」 「……はい」 「ロイは幼いころから神殿に仕え、よく働いてくれました。感謝していますよ」  美しく微笑みながら、左胸に、何度も口付けてくる。  僕はパニックになって、思わず身じろぎしてしまった。 「ふぁ、……アーヴィンさま。そ、そこは、」  乳首――そんな直接的な言葉を口にするのは恥ずかしくて、言葉を続けられない。  アーヴィンさまは、僕の乳首を吸い、舐めながら言った。 「これは主のお導きですよ」 「あ、……だめです、こんな」  こんな、辱め。  主の教えは肉欲を捨て去ることなのに、僕の体は、はしたない反応をしてしまう。  アーヴィンさまは、くりくりと乳首をつまみながら、僕の下着に手を伸ばした。 「ロイは、ここを自分で触ったことはありますか?」 「あ、ありません……」 「純潔を守ってきたのですね。偉いですよ」  細くしなやかな指が、下着越しに僕のものに触れる。 「ん、アーヴィンさま、これは……」 「儀式です。ロイが14歳になるまで守ってきたものを、主に証明するのですよ」 「ぁ、あ……っ、」  僕のものは、簡単に勃ち上がってしまった。  恥ずかしい――羞恥心でいっぱいになり、体がどんどん熱くなってくる。 「ごめんなさい、僕、ぼく……」 「主の前で、全てをさらけ出しなさい。君の中にある、本当の欲を」 「欲なんて、」 「いいえ。人の心の中には、必ず肉欲があります。主を(あざむ)くのですか?」  アーヴィンさまは、僕の目をまっすぐ見据えていた。 「……ごめんなさい。ごめんなさい。本当は、そういう気持ちになるときがあって……触らないようにしていても、朝起きたら下着がぐっちょり濡れてしまっているときがあって、僕はだめなんだって思って……ごめんなさい」  涙があふれてくる。  アーヴィンさまは優しく微笑みながら、僕の頬に流れる粒を、舌で舐めとった。  そして、下着の中に手が入ってくる。  ずるりと脱がされ、全てが神の前に明かされてしまった。 「ロイ。いま、君の正直な体はどうなっていますか?」 「はしたなくて……気持ちよくなってしまって、ごめんなさいっ」 「私の手で、こうなっているのですよね」  アーヴィンさまが僕のものを握り、上下に擦る。 「はぁっ……、ぁ、アーヴィンさまっ。ゃ、あ」 「否定してはいけません」 「あんっ、あ……っ、」 「自分でできますか? 欲が昇り詰め、弾けるところを見せてください」  アーヴィンさまの手が離れる。  僕はふしだらだ。  修道着をめくり上げ、主の彫像に裸を見られるところを想像しながら、ペニスに手を伸ばした。  擦り上げてみると、感じたことのない強烈な気持ちよさに体が支配されて、擦る手が止まらなくなってしまう。 「……あ、ぁっ、んっ」  アーヴィンさまは、僕の全身を舐め回すように見ている。  主に代わって、お役目を果たされているのだと思った。 「ぁぅ、アーヴィンさま、……っ、も、……ぅ、」 「昇り詰めるところまで。さあ」 「はあっ、はっ、……っ、あんっ、ぁ……っ、神様、ああっ、あぁ……ッ!」  体中を快感に支配され、僕は羞恥心でいっぱいになりながら、欲液をこぼした。  握りしめる指のすきまを、熱いものがどろどろと流れ落ちていくのが分かる。 「…………あ、ぁ……」  熱が去ると、アーヴィンさまに全てを見られてしまったのだと思って、涙が出てきた。  きっと、アーヴィンさまは全てご存じだったのだ。  僕がこんなふうにはしたなくて、主の教えに背いていることを見抜いていたから……。 「……ごめんなさい。ごめんなさい」 「よく頑張りましたね、ロイ」  アーヴィンさまは優しく微笑みながら、僕のペニスに指を添えた。  敏感になってしまった僕は、びくりと跳ねる。 「ふぁ、だめです……っ、いま触っちゃ、あぁんっ」 「本当は? 神に誓ってそう言えるのですか?」 「……ぁ、あ、ごめんなさい、んぅ……っ」 「14年間押し殺していたことです。たった一度で、全てさらけだせるものではないでしょう?」  アーヴィンさまは、跳ね回る僕の体を押さえつけ、再び僕のものを擦り始めた。 「ああっ、あッ、あんっ」 「君の(みだ)らな体を、主に差し出すのです。ほら、言いなさい。本当はどう思っているのですか?」 「……きもちぃれす、ぁあっ、こんなきもちくなるの、知らなかった、」 「恥ずかしい子ですね」 「ごめんなさぃ、ごめんなさい。全て神様に捧げます、……だから、ああっ」  お(ゆる)しください。  こんなに簡単に、また昇り詰めてしまうことを――

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