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第39話
小悪魔って俺に使う?って百は笑ってる。
千歳も百もそばにいてくれてるけど…今が特別なだけなんだよな。
誰とだって、形は違えどいつかは別れがあるんだよ。ずっと一緒、なんて、きっとない。
淋しいな、って思うけど…大人になるってきっとそういうこと。
朝からちょっぴりセンチメンタルになってしまった俺。
でもね、アンニュイな蜜ちゃんも可愛い、と評判なのです。
そりゃあね、なーにがアンニュイだよ、って唾吐くようなのがいないわけじゃないけど。そういうのは放っとけばいいの。俺の人生に必要ないから。
「女王様ってああいう陰口は気にしない派?」
茅ヶ崎が、ちらっと視線を走らせる。
「視界に入れる価値もないと思ってる派。俺がわざわざレベル下げて同じになってやる必要なんてないでしょ?」
「確かにねぇ~」
自分がお姫様だと思ってんじゃないの、とか、たまに言われることもあるけど。別に思ってはない。
自然とそういう扱いされちゃうんだからしょうがないでしょ? そういう風に扱われたことない人には分かんないもんね。って返してあげるけど。
面と向かって言ってくるならいい方だよ。それなら俺だって相手するけど、陰でこそこそ言うのは論外。よって視界に入れる価値もなし。
…『可愛い』はさ、きっと今だけの武器だから、それ以外のものを俺は見つけなきゃいけない。
20代、30代になったら『可愛い』なんて言われなくなるし、そしたら容姿以外の何かを…持っていないとな。
百とか千歳はなー、大人になればなるほど美形と男前に磨きがかかりそうだからなぁ。
「ねー、百。可愛い以外の俺の武器って何?」
「ツンデレと度胸と決断が早いとこ。他にもあるけど全部言うか?」
「即答ありがとう。…ツンデレって武器…?」
「武器じゃねーの? 慣れてる俺でもたまにドキッとするけどな」
「百はさぁ~、ほんっと俺のことよく分かってるよね~最高」
「藤くん褒め上手だねぇ~」
やっぱりこうやって甘やかされちゃうんだよなぁ。
彼氏云々からこうして色々な考えちゃう俺は、実は割と繊細に出来ているんではないかと思うの。
ほんとに繊細な人間は自分で自分を繊細とは言わないだろうけど。
結局俺はさ、自分に武器がないのを分かってるから…。でも、空っぽなのは嫌だ。そういう気持ちを…彼氏で埋めようとしてるの…本当は知ってる。
だからすぐ好きになって付き合って、相手の本質も知らないままだからこうなって…。
ダメだなぁ。
最初ので懲りたはずなのになぁ。
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