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第38話

「俺が適当に相手しとくから先に行ってていいぞ」 「さっすが千歳! ありがとう!」 「俺代わろうか?」 百がにんまり笑う。 「百はやたらとあの人を怒らせそうだからな」 千歳が笑うと、ざーんねん、って百が笑った。 ところでお気づきだろうか。 俺の彼氏だから香月さんのことをちゃんと『先輩』と呼んでいた千歳だけど、俺が愛想を尽かしたから『あの人』って呼んでることに。 降格だよ。 「蜜!」 「おはようございます。話なら俺が聞きます」 早足でこっちにやって来た香月さんに、千歳が素早く俺より前に出てストップさせる。 「お前に話はない! 蜜に話がある!」 「あったま悪っ」 吐き捨てたの俺じゃない。頼もしい百さん。 「昨日、『お前』って呼ぶの一番許せないって言われたばっかじゃん。もう忘れたんだ? そんな出来の悪い頭で蜜に近寄んのやめてもらいたいよなぁ。どう思う? 茅ヶ崎」 「え~? これってぇ~、フラれたことも分かってないんじゃないのぉ~? かわいそぉ~。頭が」 「ちょっと2人とも、笑うからやめてよ」 もう笑ってるけど。 香月さんは目を見開いて絶句してる。俺ってこーいう子だから。 「じゃあ千歳、悪いけどあとよろしくね?」 「あぁ」 千歳が頷いたのを確認して、さっさと通りすぎる。 香月さんはただ目を見開いて口を開けて、俺が通りすぎるのを見ていた。あんな間抜けな顔初めて見た。 「っていうかぁ~、ほんとにフラれたこと分かってない感じだったねぇ~」 「蜜がまだ自分に惚れてると思ってたんじゃねぇの?」 「昨日あんな態度だったのにぃ~? おめでたいねぇ。でもそんなとこがそそるよねぇ」 茅ヶ崎が肉食獣の目ぇしてる。 「はぁ~…自分に自信がある人は嫌いじゃないけど…」 俺のため息に、百がそっと髪を撫でてくれる。 「自分に自信があるのと彼氏を所有物みたいに扱っちゃうのとはまた別物だもんねぇ~」 「茅ヶ崎はそういうのを飼い慣らすのが好きなんだろ?」 「確かに好きだけどぉ~、藤くんにも興味あるよぉ?」 「茅ヶ崎に百はやんない」 「ちぇ~。女王様の命令は絶対だからなぁ~」 別にそんなことないけど。 それに、百が茅ヶ崎がいいって言うなら話は別だし。俺は本人の意思を尊重するよ。 「まーでも茅ヶ崎面白いからなぁ」 「えっっ、なに、藤くん僕に興味ある感じ!?」 「茅ヶ崎、その食い付き方どうなの」 「だってぇ~!」 「興味っつーか、面白いよな」 「もぉ~、藤くんてば意外と小悪魔だね?」

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