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第77話
そう言って、百はリップバームを取り出した。
百は興味ないかも知れないけど…これめちゃめちゃ高いやつだよ。自然由来のものにこだわってて色んなフレーバーがある人気のやつ。
ひとつ3000円~4000円とかするやつだよ。こんないいやつ貰っていいのかな…。
「百使わないの?」
「俺、唇あんまり荒れないし。ネイルにも使えるらしいから」
「めちゃめちゃ嬉しいけど…」
今度 百ん家行くときはいいお菓子持っていこう。そうしよう。
「んー、と…じゃあ甘えちゃお」
「なくなったら言えよ? まだあるから。姉ちゃんも一度に送りすぎなんだよな…」
そのお陰で俺はいつもぴかぴかでいられます。
百のお姉さん、ありがとう。
ごろごろしながら駄弁っていれば、お風呂の沸く時間。
昨日のバラを浮かべて、今日も優雅にバラ風呂を堪能する。
百にブラッシングをしてもらった俺は、体を先に洗って湯槽へ。
「蜜、入るぞ」
「どーぞー」
俺は裸だけどお湯にはバラが浮いてて底まで見えないし、っていうか小さい頃なんて一緒にお風呂入ったからなぁ。百ん家の広いお風呂。
それに百は裸ではありません。
俺の頭洗うだけだから。
頭皮にオイルを垂らして、軽くマッサージ。
「このオイルって何のため?」
「ブラッシングして浮いた汚れとかを吸着させんの」
「へぇ~」
「2、3分置いとくから手でもマッサージするか」
「はーい」
百が俺の手をマッサージしてくれるのを見ながら、何となく口を開く。
「百って将来 会社継いだりするの?」
「どうだろうな。親の仕事に興味ないわけじゃないけどそこまででもないし。姉ちゃんの方がやっぱ関心ある感じ」
「エステティシャンだっけ」
「そうそう。あと、ネイルの技能検定とか化粧品の何か…検定?とか、リンパセラピストだか何かそういうのも受けてたな」
「すごいねぇ」
「俺はそこまで貪欲になれないから」
「ふぅん」
将来何になるのかな、とか、どうしようかな、っていうのは漠然とある。極めたいものとかことが、俺にはまだないから。
「蜜、シャンプーするから頭こっちな」
「はーい」
頭だけ浴槽の外へ。首がちょっと痛くなる体勢だけど、我慢。
「シャンプーしゅわしゅわする!」
「これ炭酸水と混ぜてんの」
「気持ちいい~! ほんとにヘアサロンみたい!」
これは…いいぞ。しゅわしゅわ気持ちいい!
炭酸水と混ぜるだけなら自分でもできそう。
でも人に頭洗ってもらうのが気持ちいいのもあるんだよな。
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