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第211話
茅ヶ崎の情緒が忙しいな。
「百だって俺と千歳のこと愛してるでしょ!?」
「なに蜜、何でそんな必死なの? 可愛いけど」
「俺はいつ何時も常に可愛いでしょ!?」
「うん」
百、素直。
それで俺は少し冷静になった。それは千歳も同じだったみたいで、「俺は何をしてるんだ…」って言いながら百から体を離した。
でも俺はまだ離れられない。
「…愛してるって言って…」
何かこのセリフ、ドラマの重い女みたい。
「言ってあげてよ藤くん!! 藤くん渾身の『愛してる』が聞きたい!!!! そして須賀谷くんも聞かせて!!!!」
「え、茅ヶ崎に聞かせるのは嫌だ」
「須賀谷くん辛辣ぅ!!」
「茅ヶ崎の欲望に忠実なとこ、俺結構好きだぞ」
「藤くんありがとう!!!! 心から!!!!」
「茅ヶ崎の情緒どうした」
体を半転させて、百が俺の髪を撫でた。
「俺と千歳だけの百でしょ…」
「…蜜?」
好きになると心が狭くなるんだね。初めて知った。
千歳や百のこと好きな人がいても前は平気だったのに。見る目あるね、くらいに思っていられたのに。
今はそれができない。だってふたりとも好きだもん。ふたりとも俺の彼氏なんだもん。
「愛してるって言えば安心すんの?」
「…心込めてくれなきゃ安心しない」
「俺が蜜と千歳に嘘つくわけないじゃん」
それもそうだね。そうなんだけどね。
「蜜」
呼ばれて顔を上げれば、柔らかく髪を撫でられる。千歳も同じように髪を撫でてくれた。
「何がなんだかよく分かんないけど、蜜と千歳のことは愛してるよ」
「「俺も」」
「そんで息ぴったりだな、ふたりとも。それは妬ける」
「目からすごいエネルギーチャージ出来たぁ~」
茅ヶ崎が満足げに息をついた。
でも俺はまだ満足じゃないの。
「…背中にひとり足りない」
「これは失礼」
千歳が背中からハグをしてくれて、ようやくホッと息を吐く。
やっぱりふたりともいないとダメ。すごい贅沢だけど、他じゃ代われないから。
「…ちゅうは?」
顔を上向けると、ふたり分のキスが額に落とされた。それから両頬にひとつずつ。
「よく分かんないけど、機嫌は直った?」
「ちょっと直った」
俺たちを見ながら、「こんな相思相愛な3人の間に割って入ろうだなんて身の程知らずのなり損ないだな…」って委員長が呟いていた。
ねぇほんとその呼び方笑うからやめて。
「ところで藤くん、さっきのいい体の人たちとはどういったご関係なのぉ~?」
あ、それ俺も気になってた。
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