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第210話
そんな話をしていると、廊下が少し賑やかになった。
まさか衛宮くん…? って思って千歳のそばにビタッとくっついて様子を見ていると、その賑やかさはどんどんこっちへ近づいて来た。
そして。
「おは……え? 何この空気」
現れたのは、さっき呼んだ人たちとはまた違う、5、6人の男子を引き連れた百だった。
百も割と背が高い方だけど、百の背後にいる男の子たちは更にガタイが良かった。何か格闘技とかやってそうな…そういうガタイのよさ。
百もお金持ちの家の子だから、簡単な護身術?的なのは教わってるみたいだけど。それにしたって背後の圧が強い。
「…何か、藤棚ファミリーって感じ」
「分かるぅ。しかもそれ、マフィアのファミリーってやつでしょぉ~」
俺の知らない百の姿のひとつだよなぁ、こういうの。
ちょっと淋しくなってバッと両手を広げると、千歳も同じことを考えていたみたいで、ちょうど同じタイミングで同じ動作をしていた。
それを見た百が思わずといった感じで吹き出して、俺と千歳をまとめてハグした。
「なに、ふたりとも。淋しかったの?」
「淋しかったの!」
「可愛いなぁ、蜜」
俺と千歳の背中を宥めるようにとんとん叩いた百は、体を離すとガタイのいい男の子たちに向き直った。
「ごめん、途中だったよな」
「いえ、眼福です」
「え?」
「あっ、こっちの話です。じゃあ、しばらくはそういう感じで」
「うん。悪いけどよろしく」
眼福とは何が眼福だったんだろうか。
……もしかして、百に惚れてるとかそういう…!?
千歳を見上げると、千歳も同じことを考えていたみたいで、ちょうど同じタイミングで俺を見た。俺たちすごい以心伝心。
とりあえず百の背後からふたりで抱きつく。
「?? え? なに? どうした?」
混乱する百の向こう側では、ガタイのいい男の子たちがなぜかすごい良い笑顔でサムズアップして「では手筈通りに!」って言ってルンルンで去っていった。
何でルンルンなの?
「女王様と須賀谷くんに妬いてもらえちゃう藤くん強い」
「え? 焼かれんの? 俺が? 何で?」
「そんで混乱してる藤棚も珍しいな」
「めったにないよねぇ。そんな藤くんも可愛い…」
「「茅ヶ崎にはあげない!!」」
「ハモっちゃう女王様と須賀谷くん可愛い…!!」
「なに? これなに? 委員長!」
「愛されてるなぁ、藤棚」
「はぁ? もちろん愛されてる自覚はありますけど?」
「自信満々な藤くんも可愛い!!」
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