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第240話
side千歳
「任せるって誰に?」
蜜が風呂へ行ったタイミングで百に聞く。答えは、にんまり悪い笑顔で返ってきた。
「ナ・イ・ショ」
「何でちょっとエロい言い方するんだろうな」
「何でちょっと茅ヶ崎みたいになってんの? 千歳そんなキャラだった?」
「茅ヶ崎と一緒にしてくれるな」
本気で嫌だから。
「すげー嫌そうな顔すんじゃん」
「すげー嫌だからに決まってる」
思わず顔をしかめると、眉間をぐりぐり指で押された。
「百」
「何?」
眉間を押してた手を掴んで、そのまま百の唇に自分のを触れさせる。
「信頼してるけど、あんまり危ないことはしてくれるなよ」
「分かってる、けど」
「けど?」
「…千歳からするの初めてじゃね?」
「百は口にはしてくれないからな」
「それ前も言ってた」
可笑しそうに吹き出したその唇にもう1回触れて、「分かったか?」と念を押す。
「分かったって。千歳って結構心配性」
「自由人が2人もいたら心配性にもなるだろ」
「俺もカウントされてんの?」
「百は蜜より自由人だろ。行動範囲も広いし、目の届かない所にも行くし。けど、そういうところに助けられてるのは事実だし、そういう百が好きだから仕方ないな」
「好きだから歯型つけたって?」
「それはそう」
まだ百の首で存在感を主張する歯型。『いッッてぇ!!』って叫ばれたから、相当痛かったと思う。すまんとは思ってるけど満足もしてる。
「まー千歳じゃなきゃ殴ってるけど」
「蜜と俺以外がつけたら俺だって殴ってる」
百の指が俺の喉をなぞる。
喉に噛みつかれて許せるのも蜜と百だけだな。
「俺ももっとしっかり噛みつけばよかった」
そう言って薄く笑った百は、俺に自分のスマホを渡すと蜜を追いかけてバスルームへ。
……何となく。何となくだけど。
「…ちょっと興奮した。って言ったら冷たい目で見られそうだ」
独りごちて、スマホの画面をしっかり確認した俺もバスルームへ足を向けた。
――さて。万事上手くいくといいが。
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