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夜、布団にもぐって、LINEを送った。
しっかし、気まずい。
まずはテストがダメだったことを謝るべきか、いや、学校のことにはあえて触れないほうがいいか……とか考えていたら、電話がかかってきた。
「もしもし」
『こんばんは、お疲れさま』
はー、いつも通り。
ほっとしつつ、とりあえず謝ることにした。
「あの、すいま」
『ごめんね』
ほぼ同時に謝っていた。
「え? 何がですか?」
『いや……授業中、気になって何回も見ちゃって』
「いやいや、あんな点取った俺が悪いんですよ」
慌てて否定したら、春馬さんは「ん?」と、不思議そうな声を上げた。
『点……? は関係なくて。その、片瀬 さんと仲いいんだなって、ちょっと、思って』
尻すぼみに答える春馬さんに、びっくりしてしまった。
それはつまり、俺個人にちょっと興味を持ったということか?
かっわいー……と悶えそうになるのをすんでのところでとどまり、平静を装って答える。
「俺、友達多いんですよ。一般人にステルスしないといけないんで。あいつはたまたま隣なだけで、そんなすごい仲いいわけでもないです」
春馬さんは「あっ」と言ったきり、何も言わない。
そして、ぼそっとつぶやいた。
『付き合ってるとかじゃないんだ』
「違いますよ。あいつ、ブラコンすぎて彼氏できないんです」
『……特別仲よくなくても、そういう話もするんだ。そっか、なんか……すごいね、一般人に紛れるのって』
そして、恥ずかしそうに「僕の学生時代と全然違う」と付け足した。
危うくキュン死しそうになる。
いまのところ俺は、春馬さんまたは川上先生の真顔以外見たことがないんだけど……こういう、電話してる時みたいなリラックス状態では、どんな表情をするんだろう。
「春馬さんって、学校でほんと笑わないですよね。電話だとちょこっと笑ったりするのに」
『そんな性格なのになんで教師になったのって、よく聞かれる』
そう言う声は、ちょっと楽しそう。
素でいてくれてるのかなと思ったら、普通にうれしかった。
……と思ったのも束の間で。
『この電話だけが癒し』
「あっ、え……っ」
『僕は楽しいことって、腐男子トークしてるときしかない』
萌えた。
あーもう。なんでこの人はこんな、尊いBLみたいなことばかり言うんだろう。
いや俺だって、本当は、BLについて春馬さんと語っているときが1番生き生きしてるんだけど。
しかしそんな恥ずかしいことは言えないので、あいまいに笑って話をそらす。
「あはは。ありがとうございます」
『これからも、よきネット友達としてよろしくね』
あ、そうか。
なんだかんだ言いつつも、春馬さんはちゃんと線を引いてるんだな。
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