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18:00ジャストに代々木上原駅に着き、LINEを送ると、もう家にいるとのことなのでそのまま向かった。
インターホンを押すと、「はーい」という穏やかな声が聞こえた。
出てきた瞬間抱きついてやろう。
そう意気込んでいたのに、ガチャッとドアが開いたら、固まってしまった。
エプロンに、お玉……!
死んじゃう!
カレーのいいにおいがする!
「いらっしゃい」
「あ……春馬さん。きょうはカレーですか……」
「うん。いま温めてるところだから、ちょっとくつろいでて?」
聞けば、きのうのうちに仕込んでおいて、ひと晩寝かせたらしい。
愛が、愛され感がヤバい。
台所に立つ春馬さんの姿を、そっと盗み見る。
真顔なのに機嫌良さそうなのが、超可愛い。
いや、いつも泊まりの時は春馬さんがご飯を作ってくれるので、エプロン姿はよく見ているんだけど……お玉持って出てくるのはダメだったと思う。
可愛い、可愛い。
心の中で、恭平に呼びかける。
すまんな。俺の恋人は、多分お前が思い描いてるハイスペ彼氏とは、ちょっと違う。
そして、お前が知ってる川上先生とも、だいぶ違うんだ。
「はい、どうぞ」
「うわっ、おいしそ……」
ソファにくっついて座って、ふたり揃って手を合わせて、いただきます。
はあ、幸せ。
誕生日の『た』の字も出さないあたり、きっとまじめに改まって言うつもりなんだという想像もつき、幸せ2倍。
もぐもぐと食べながら、先ほど読んだBLの話をした。
「俺、『これは泣けますよ!』って派手な宣伝の作品でも泣くってそんなにないんだけど、泣いたわ。5歳の弟は反則でしょ」
「ただの不憫 受けとは違う感じで良かったよね。人生掘り下げてある感じがした」
春馬さんは、BLの感想でよく『人生』という言葉を使う。
彼はBLを純粋に恋愛作品として読んでいるから、物語として読み終えたあとに得るものがあると、満足度が高いらしい。
人生にこだわる理由。
ご両親を亡くしたことは、関係あるのだろうか。
それから、俺を一生大事にすると言ったこと。
「ねえ、『No Longer Teacher』ってどういう意味? 翻訳アプリで見たら、『もはや先生ではない』って出たんだけど」
「ああ、それはね。太宰治の『人間失格』だよ。英語版の題名は『No Longer Human』」
「じゃあ、教師失格?」
「そうだね」
しゃれてて深みがあって、意味が分かればなお考えさせられる。
良いタイトルだ。
春馬さんは、ちょっと斜め上の空中を見ながら言った。
「僕もそうだな。生徒を好きになって、ついに先生をやめちゃう。それに、特定の生徒に有利なテスト問題を作ったりもしたし。教師失格だ」
くすくすと控えめに笑う春馬さんが愛しくて、手首を捕まえてそのまま軽くキスをした。
「カレーの味する?」
「僕の口の中と同じ味がします」
「何それ、萌える」
もはや人間ではない。
翻訳した人は、『失格』の先に何を見て、その題名をつけたのだろう。
でもまあ、少なくとも、教師失格になった春馬さんと俺の未来は、明るいもののように感じる。
食べ終えて、まったりして、一緒にお風呂に入った。
湯上がりで血行の良さそうな春馬さんと、並んでベッドに腰掛ける。
時刻は22:30。
チラチラと時計を見ていた春馬さんは、控えめに尋ねた。
「お友達から、おめでとうメール来た?」
「うん、いっぱい来たよ。無駄に顔広いからね」
「心当たり、全員?」
「ん? んー、多分」
「じゃあ」
両肩をちょんと押されて、もふっと後ろに倒れた。
電気をさえぎって、逆光の春馬さんが微笑む。
「みい、17歳の誕生日おめでとう」
「ありがとう」
「1番最初に言うのと1番最後に言うのだったらどっちがいいかなって考えたら、最後かなって思って。君の17歳の誕生日、最後にお祝いを言ったのは僕。覚えててね」
「……春馬さんは、他人の出し抜き方が巧妙」
「必死だよ、みいの1番になりたくて」
そんな、言われて1番うれしいのなんて、春馬さんに決まってるのに。
春馬さんは、ゆっくりと顔を近づけてきた。
そっと目を閉じると、やわらかいキス……と思ったら、トレーナーの中にするっと手が入ってきた。
「ん……」
「いい?」
こくっとうなずく。
いいも何も、さっき俺が準備してたの、知ってるくせに。
春馬さんは、深く口づけながら、俺の上半身をまさぐる。
期待していた分、体が火照るのも早くて、触られたところ全部がチリチリと熱くなるような錯覚に陥る。
彼の息遣いがちょっと荒くて、それだけで興奮した。
「あ……、ぁ」
「乳首、固くなってる」
「ん、はぁ……っ、や、まだぐりぐりしないで」
舌の先で潰すみたいに刺激される。
春馬さんの頭をやんわり押さえようとしたけど、全然力が入らなかった。
「ん、ん……っ、俺も春馬さんの肌、触りたいから……っ」
「じゃあ、みいのが勃ったらね」
乳首だけを重点的に攻められて、もどかしさに思わず背を反らせた。
「あ、……はぁ、んっ、は……」
「下も固くなったね」
「ん、勃った、から……ぁ、」
懇願すると、俺の服を脱がせてくれて、春馬さんも、身につけていたものを全て床に落とした。
俺の体をまたいで、折り重なるように密着してくれて……背中に回した腕にぎゅっと力を込めたら、春馬さんの心音を感じた。
「可愛い。触りたかったの?」
「ん。あったかい。気持ちいい」
やんわり腕の力をゆるめると、春馬さんは、ちゅ、ちゅと音を立てて乳首を吸いながら、太ももの内側をそろそろとなで始めた。
もどかしい触り方。
身悶えてしまう。
「さ、さわって……、しごいてっ」
何の前触れもなくぎゅっと握り込まれて、そのままスピードをつけて上下。
シーツを握りしめて息を荒げる。
しごく手つきは手加減ゼロで、お尻の穴を解しながら、たまに耳元で「エッチで可愛いね」なんて言われて……追い詰められていく感じ。
「ぁ、あッ……はるまさん、ぁあっ」
ゴリッゴリッと、張り詰めたものをしごかれて、いとも簡単に足がわななく。
先走りがまとわりついて、クチクチと音がする。
いつもならこの辺で、1度イカせてくれるんだけど……。
「あ、イッちゃう、イク、イクッ……っ」
出る。
……と思ったら、春馬さんはゆっくりと手の動きをゆるめると、そのまま手放した。
「んん……っ、春馬さん、イキたい」
「そのまま。我慢して?」
春馬さんの体を見ると、中心はガチガチに反り上がっていた。
コンドームをくるりとはめる。
ここまで極限で寸止めされたことはなかった。
1ミリでも触ってもらえたら、それだけで大量に撒き散らしてしまいそう。
それに、中はまだ解しきってないはずなのに、ずくずくとうずいている。
こんな状態で挿れられたら……。
「みい、入るね」
「ぁあッ、……や、ぁ」
無理やり穴が押し広げられて、中に入ってきた。
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