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最終話
至極適当にティッシュで体を拭いて、そのまま手足を投げ出すみたいに、ごろっと仰向けになった。
ダメ、全身だるい。1ミリも力入んない。
そのままくたっとしていると、春馬さんが「よっこらせ」と言いながら俺の体をまたいで、折り重なってきた。
そして、真顔でこんな尊いことを言う。
「伝わった? 好きな気持ち」
「うん。いっぱい感じたし、ちゃんと受け取ったよ」
春馬さんは、俺の額に軽くキスをした。
「これからは、もっといっぱいいっぱい、言葉でも伝えるね。いままでみたいに毎日は会えないし、僕、考えてることが顔に出ないし。あんま伝わらないかなって思って」
なでなでとされつつ、俺はひとつ、彼の勘違いを解いてあげることにした。
「えっとね、春馬さん、顔によく出るよ? 恥ずかしそうな時とか、めっちゃキュンキュンするし」
「えっ?」
「もちろん、分かるのは俺限定だよ。他人から見たら春馬さんは表情筋の動きゼロの人だと思うけど、俺の認識では、春馬さんは激萌えキュン可愛タイプの性格です」
そうそう。そういう、真顔でびっくりするやつね。
萌える。
春馬さんは二度三度ぱちぱちとまばたきしてから、頬をすり寄せてきた。
「あの……、変な質問するね?」
「う? どうぞ」
春馬さんは、俺にしっかり目を合わせて、こくっと首をかしげて尋ねた。
「みいにとって、僕は何?」
「んー? もう先生ではないから、恋人でありー……」
ベッドサイドに置かれた書籍が目に入る。
「腐男子仲間、かな」
クリスマスプレゼントにBL10冊セットをもらって、大歓喜するような。
恋人の家にあいさつにいくのに緊張しすぎて眠れず、夜通しBLを読むような。
「あの、みい。卒業して一緒に住んだら」
春馬さんは、つぶやくように言った。
「ふたりで、この世のBL全部読み尽くそうね」
「規模やば」
そんなプロポーズ、真顔でするって……。
何それ、萌える。
(了)
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