69 / 69

最終話

 至極適当にティッシュで体を拭いて、そのまま手足を投げ出すみたいに、ごろっと仰向けになった。  ダメ、全身だるい。1ミリも力入んない。  そのままくたっとしていると、春馬さんが「よっこらせ」と言いながら俺の体をまたいで、折り重なってきた。  そして、真顔でこんな尊いことを言う。 「伝わった? 好きな気持ち」 「うん。いっぱい感じたし、ちゃんと受け取ったよ」  春馬さんは、俺の額に軽くキスをした。 「これからは、もっといっぱいいっぱい、言葉でも伝えるね。いままでみたいに毎日は会えないし、僕、考えてることが顔に出ないし。あんま伝わらないかなって思って」  なでなでとされつつ、俺はひとつ、彼の勘違いを解いてあげることにした。 「えっとね、春馬さん、顔によく出るよ? 恥ずかしそうな時とか、めっちゃキュンキュンするし」 「えっ?」 「もちろん、分かるのは俺限定だよ。他人から見たら春馬さんは表情筋の動きゼロの人だと思うけど、俺の認識では、春馬さんは激萌えキュン可愛タイプの性格です」  そうそう。そういう、真顔でびっくりするやつね。  萌える。  春馬さんは二度三度ぱちぱちとまばたきしてから、頬をすり寄せてきた。 「あの……、変な質問するね?」 「う? どうぞ」  春馬さんは、俺にしっかり目を合わせて、こくっと首をかしげて尋ねた。 「みいにとって、僕は何?」 「んー? もう先生ではないから、恋人でありー……」  ベッドサイドに置かれた書籍が目に入る。 「腐男子仲間、かな」  クリスマスプレゼントにBL10冊セットをもらって、大歓喜するような。  恋人の家にあいさつにいくのに緊張しすぎて眠れず、夜通しBLを読むような。 「あの、みい。卒業して一緒に住んだら」  春馬さんは、つぶやくように言った。 「ふたりで、この世のBL全部読み尽くそうね」 「規模やば」  そんなプロポーズ、真顔でするって……。  何それ、萌える。 (了)

ともだちにシェアしよう!