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第二章 初めてのキス

 それからの蛍の日々は、激変した。  一日三食、ちゃんと摂る。  毎日、お風呂に入る。  朝昼夜の体内時計が、整う。  そんな基本的な生活習慣が、次第に身についていった。  もちろん、等の働きによるものだ。 「蛍、朝だぞ。朝食は、何がいい?」 「蛍、一緒に昼ドラ観ようぜ」 「蛍、そろそろ寝ないと明日に響くよ」  こんな声かけはもちろん、蛍が動きたくなるような仕掛けも打ってあるのだ。  食事は和を好む蛍だが、等はあえて見たことも無いような異国の珍しい料理を用意する。  勧めるドラマは調べてみると、著名な脚本家や演出家の手掛けた作品。  寝具は常に清潔で、シーツもパジャマも毎日洗濯してくれる。 「今日のお風呂、すごかったよ」 「気に入った?」  バスタブに、たっぷりのバラの花びらが浮かべてあることもあった。

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