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 目が覚めると薄いカーテンから日が差し込んでいた。  一瞬、どこだっけ?と思い、ああそうかと思い出す。高橋さんちに泊めてもらったんだっけ。  腕時計を見ると9時を過ぎたところで、リビングに行くと祐樹はすでに起きて、ソファで雑誌を読んでいた。テレビからは英語のニュースが聞こえてくる。  祐樹は昨夜見た部屋着のままで、休日のゆるい感じがいいなと思う。 「おはよう、よく眠れた?」  孝弘の顔を見て、にっこり笑う。 「おはよ。寮のベッドより寝心地よくって一瞬で落ちた」 「よかった。朝ごはん、食べる人?」  ソファから立ち上がった祐樹がキッチンに入っていく。 「いつも食べるよ。屋台の軽食だけど」 「いいね、北京の朝ごはんって感じ」  安くて手軽なので家で食事をするよりも路上の屋台で食べたり、軽食を買って職場で食べるほうが多いのだ。 「高橋さんが作るの?」 「作るっていうか、毎日、同じメニューなんだけど。おれもまだだから一緒に食べよう」  そういって祐樹が出してきたのは、なぜか鍋敷きとお玉と汁椀だった。  ふしぎに思ったが、顔洗っておいでといわれて洗面所に向かう。  顔を洗ってからキッチンを覗くと、沸騰した土鍋のなかで豆腐がふわふわ浮いていた。そこに薄切り豚肉ともやしを入れてふたをする。  え、朝から鍋?  それが顔に出ていたのだろう、祐樹はすました顔で微笑む。 「基本、鍋なんだ。肉も魚も野菜もキノコもなんでも入れられて、味付けも適当でいいから」  ふたをあけて最後にうどんを入れると、ポン酢の瓶を渡された。  それをテーブルに運び、祐樹が鍋を運んでできあがり。  テーブルのうえの朝ごはんを見て、孝弘はとうとう我慢できず吹きだした。 「高橋さん、おもしろすぎ」  日本でも中国に来てからもあちこち外泊はしているが、朝ごはんに鍋を出されたのは初めてだ。  遠慮なくげらげら笑う孝弘をみても祐樹は気を悪くした様子もなく「料理、苦手なんだよね」とあっけらかんとしている。  聞けば朝も夜も外食でない日はだいたい鍋だという。 「坦々風に辛めにしたり、和風だしにしたり、こんな感じでポン酢とかごまだれとかで、とにかく適当な具を入れて煮るだけ。この国で外食続くと胃が疲れるし、あっという間に太りそうだから」  朝から鍋なんてと思ったが、豆腐ともやしと豚肉のシンプルな鍋はけっこうあっさり胃におさまってしまい、意外とありかもなあと感心した。  包子(パオズ)油条(ヨウテャオ)(揚げパン)ですませるより、よほどバランスがいい。 「ごちそうさまでした。おいしかった」 「うん、お粗末でした」  食後には熱いほうじ茶と塩昆布が出されて、その渋い好みにまた爆笑する。  祐樹は相変わらず、つくったすまし顔だ。  朝は優雅にスクランブルエッグにサラダにクロワッサンとかいいそうな見た目とのギャップにかなりやられた。

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