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 背骨を数えるように手を下ろしていき、腰の先に行き当たる。そっと指先を這わせて後孔に触れると祐樹が体を震わせた。  拒絶されないのを確認して、手のひらにローションを垂らした。  ぬるみをまとった指はふしぎな感触で、祐樹に触れると手のひらからするすると逃げてしまうような気がする。  指入れていいのかな? 1本? 2本?  あまり知識がないから痛くしないようにできるか心配になる。  つつましく閉じた場所をこじ開けていいのか迷っていると、祐樹がささやいた。 「おれ、自分でしようか?」  ためらったのを誤解したのか、そんなことを言う。 「だめ。俺がしたいけど、痛そうかなって思って」 「平気だよ、ゆっくり入れて」  その言葉に従って濡れた指をゆっくりと挿入する。ふうっと祐樹が息をついた。  初めて触れたなかは熱かった。  やさしく抜き差しするとふわっと祐樹が微笑む。 「痛くない?」  「ん、平気」  指を増やしても祐樹はかすかに喘ぐだけだった。  快楽をこらえる表情に孝弘の興奮が増していく。  奥まで入れて熱いなかを探る。 「あっ、ああ、やっ…、ふ…、んん」  明らかに反応する場所を何度も擦ると、祐樹の声がすすり泣くようなものに変わった。ときどきゆるく頭を振って、腰が揺れている。 「やらしい顔、たまんない…」  ささやいて、パッケージを開けて手早くゴムをつけた。 「入れていい?」 「いいよ、来て」  足を抱えて上から見下ろすと、祐樹が濡れた目で見上げてくる。  しっかり目線を合わせたまま、体を沈めた。ぴったりと孝弘を押し包む熱い内壁に息をつめてこらえる。 「気持ちいいよ、すごく」  祐樹があまくささやくから、あとはもう本能で動くだけだった。  溶けそうな熱さを感じる奥まで深く入りこみ、抉るように突き上げた。祐樹は口をすこし開いて、速く浅い呼吸を繰り返している。 「あ、あっ……、いい、ん…」  合い間に混ざる小さな喘ぎ声に煽られて、ゆっくりだった動きがどんどん早くなり、二人の荒くなった息づかいが部屋に響く。 「高橋さん、いい? だいじょうぶ?」  祐樹はうっとりした表情で孝弘を見あげてうなずく。 「あっ、あ、そこっ……、も、いく…っ」  きゅうと締め付けられて祐樹が達したのが伝わり、その刺激で孝弘も熱を放った。  心臓がどくどく音をたてて、耳元で鳴っているようだ。  背中に回っていた祐樹の腕が、ゆっくりとシーツに落ちる。  無謀備にゆるんだ表情がかわいくて、つながりを解いたあとも、孝弘は祐樹を抱き込んで離さなかった。  うすいカーテン越しに、大きな満月が透けて見えていた。  まるくひかる、中秋の月。

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