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19-4
祐樹はすぐに戻ってきて、何かを孝弘の手に押しつけた。
「これ使って」
手のなかのものを見るとローションとコンドームだった。
それがわかったところでさっと電気を消され、常夜灯のみの薄闇になった。リアルにセックスするんだといきなり実感する。
「用意がいいんだな」
つい確認してしまったが、どちらも未開封でほっとした。いやべつに、未開封だからってなにもないって保証はないし、開封してたとしても何か言える立場じゃない。
祐樹は目を細めてそんな孝弘を見ている。
ぞくりと男を刺激する表情だった。そのまま体を寄せると耳元でささやいた。
「たしなみ、だよ」
大人の余裕を見せつけられた気がして悔しい。
ひとまずそれは枕元に置いて、シャツを脱ぎ捨てた。
なんだか現実感がない。祐樹はじっと孝弘を見ている。
そのまま、祐樹を引き寄せて口づけた。
ベッドに座ってキスを重ねながら、祐樹のシャツのボタンを外していく。
胸のうえに手を置いてみたら、祐樹の鼓動が指先に伝わった。すこし速い。
開いたそばから手を入れて、背中を抱き寄せて肌の感触を味わった。祐樹はいっさい抵抗しなかった。心配していたが、ちゃんと腕を回してくれてキスを返してくれた。
一方的な行為にするつもりはないとわかって安心する。
深く口づけながらお互い服を脱がせあって、あちこち触れた。
どこに触っても祐樹はとめなかった。
孝弘の唇が首筋から鎖骨をたどって胸の先に触れても。
そのまま舌でやんわり乳首を押しつぶすと、かすかに声を上げて背中をそらせた。ちいさな粒を甘噛みする。
「ん、あっ、あ…っ」
祐樹のこらえきれない声が孝弘の興奮をさらに煽る。
唇で挟んでいじると、そこは小さくたちあがってきた。もう片方を指先でこねながら、そっと祐樹の表情をうかがう。
喉をならす猫のような、うっとりした顔。
上気した目元の色がなまめいていた。
「気持ちいい?」
「ん、いいよ」
ささやきながら耳元にキスをする。
孝弘は片手で背中のカーブをいとおしみながら、ゆったり手を下して、腰の先の割れ目までたどる。滑らかな尻のカーブをなでて、前に手を回すと祐樹の性器に触れた。
他人のものに触れるのは初めてだ。
半ば起ちあがっていて、孝弘は安心する。
自分の愛撫にちゃんと感じてくれているのがうれしかった。
「おれも触っていい?」
祐樹がそっと孝弘に手を伸ばした。そこはすでにどくどくと力強く脈打っている。
「いいけど、ちょっとやばいかも」
「なにが?」
「高橋さんに触られたら、すぐいきそう」
「いいよ、べつに。女の子じゃないんだから」
祐樹はおかしそうに笑っている。
「いっても、まだできるでしょ」
お互いの手のなかで高めあった。
熱がどんどん蓄積されて、無意識に腰が揺れる。
「どうしよ、めちゃくちゃコーフンする」
祐樹に触られてると思ったら、あっという間に限界に近付いた。
「だしていい?」
「あ、んっ、いいよ…。おれも…っ」
荒い息をつきながら、お互いの手のなかに放熱した。
しばらくだまって息を整えていたが、孝弘はティッシュでざっと手をぬぐい、祐樹の手もきれいに拭いてやる。
「まだいける?」
「ん、いいよ」
もう一度、深く口づける。
舌を差し入れて誘いかけると祐樹のほうから積極的に絡めてきた。主導権を取られて、それがうれしくて気持ちよくて何度もキスを交わした。
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