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 すごいなと素直に思った。  企業に所属せずに、自分の才覚で商売しているというバイタリティや行動力が。 「あいつも中国各地、色んなとこに出入りしてるから、ちょくちょく情報交換してるんだ。北京で落ち合えるのなんて3カ月に1回くらいだけど。一緒に買付けに国内を回ったりもするし、まあ他にも色々つながりはあるよ」  孝弘はぞぞむの仕事の手伝いもしているようで、その情報交換の場を、祐樹は目撃したのだ。 「安心した?」  いたずらっぽい目で、祐樹をじっと見つめてくる。  完全な口説きモードに入っているのがはっきり見て取れた。両手を握られて、ベッドに座ったまま向き合うかたちにされる。 「べつに安心とか……、そんなのじゃないよ」 「そう? 祐樹は? 誰かいるの?」  孝弘は一気にたたみかけてきた。  なんて答えるべきなんだ?  正直にいないと言えばいいのか、いるからやめろと言えばいいのか。でも嘘をついても、つき通せる気がしなかった。 「どうだろうね」  ためらいつつ苦し紛れにそう言っても、孝弘は平然としていた。 「いてもいいよ。口説くから、俺に落ちなよ」  祐樹の逡巡をどう取ったのか、孝弘は腰に手を回すとやわらかく抱き寄せた。 「好きだ」  再会してから初めて好きだといわれた。  耳元でささやく声が、祐樹をそそのかす。  ここに落ちておいでと誘っている。  それはものすごく強い誘惑だった。 「……こまる」  拒否できない祐樹は、どうにか言葉を探しだした。  それを聞いた孝弘は、じゃあやめないと耳のふちに口をつけながらささやいた。 「嫌ならそう言えよ。だったらやめる」  でないとやめてあげられない、などと耳のしたのくぼみをなめて上目づかいに見上げてくる。  嫌じゃないから困っているというのに。  そんなことは先刻承知で、この男は迫ってくるのだ。獲物を狙う肉食獣のような眼で自分をねだる孝弘に、祐樹は音を上げた。  本気を出した孝弘を、どう頑張っても拒める気がしなかった。 「いいよ、しても」  孝弘はうれしそうに笑って、祐樹のシャツを開いた。  鎖骨に口づけて、下りてきた唇に胸の先を口に含まれた。  乳首をこねるように舌を押しつけられて、びくっと肩がはねる。 「キスだけって言わなかった?」  すねた口調でなじると「どこにとは言わなかったでしょ」としゃあしゃあと答えて、肋骨のうえを唇でたどる。  悪びれない返事に、思わずくすりと笑みがこぼれた。降参だ、と思う。  このぶんでは前回同様、体中に口づけられそうだ。 「いいだろ、ここ。こないだも気持ちよかったよな?」  気持ちがほぐれているのを自覚した。触れられて体が悦んでいる。もっととさらに先をねだっている。この手がくれる快楽を覚えていて、祐樹だって求めている。   もういいか、意地を張らなくても。  正直に、あんなにも真っ直ぐ好きだと孝弘は言ってくれたのだから。

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