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「いいよ。好きなようにして」
孝弘が顔をあげて、言葉の意味を確かめるように祐樹の眼を間近にのぞきこんできた。欲に濡れた強い眼差しが、喜びにきらめいている。
「祐樹が好きだ」
手管もなにもない子供のようにシンプルな、まっすぐに胸に届く告白だった。
「いっぱい触りたい」
熱い手が腰を抱き寄せた。
素直にベッドに押し倒されて、お互い服を脱がせあう。
ホテルのオレンジっぽい照明のなかで、孝弘のしっかりと筋肉をまとった上半身が浮かび上がる。
その体に欲情するのを、はっきりと感じた。好きだと思う。
ベッドに横たわり、お互いあちこち触りあって、口づけあった。手のひらから気持ちが伝わるような感じがして、あっという間に体が熱くなる。
祐樹は体を起こすと、孝弘のうえに体を重ねた。
見下ろすと孝弘は楽しむような顔で目を細めて祐樹を見ていた。
「重い?」
「全然」
祐樹が上半身をすこしそらして卑猥な動きで腰を押しつけて欲望を擦りあわせるように動くと、孝弘がぐっと息をつめた。
困ったような顔をするのがかわいいと思う。
「祐樹、エロすぎる」
もっと困らせてみたくて、さらに下に移動して、口に含むとそれはぐぐっと質量を増した。
孝弘が上半身を起こして、祐樹を熱のこもった眼でじっと見ている。
深く咥えこんでちらりと見上げると、視線が合った途端、片手で顔をおおって眉間にしわを寄せた。
孝弘の快楽をこらえる表情、短い息遣いに祐樹も興奮が増していく。
丁寧に舌を這わせ、見せつけるようにゆっくりとしゃぶると、徐々に舌先にぬめりを感じるようになってくる。
「も、いいよ」
ぐいっと引き上げられて、体を入れ替えられた。
「想像以上にエロくて積極的で、最高」
熱い吐息とともに耳元でささやいてきて、昂った祐樹の性器を手のなかに包みこんだ。
どんな想像をしてたんだか。まあどんなのでもかまわないけど。
思ったのは一瞬で、そのあとは孝弘の手と口に翻弄された。
「あ、あっ。孝弘、ん、そこ、もっと」
「もっと強く? もっと早く?」
いじわるな質問に肩をかんでやると、笑い声を上げながらリクエスト通りに動かしてくれた。気持ち良くて声を抑えられない。
もういいかとあっさりあきらめて、孝弘が追い上げるままに快楽を受け取った。
「あっ、ああ、ふ…う……っ」
孝弘の口に含まれて擦られると、びくびくと体が揺れる。やわらかな粘膜に包まれて、ぞくぞくと背筋を電流が走り抜けた。
お互いに高めあって一度達したあと、背中をなでていた孝弘の指が、いたずらするように背骨をたどって降りてきて、そっとその奥に触れてきた。
お伺いを立てるように指先で揉みこむようにこすりつけて、祐樹の反応を確認している。肩に額をぶつけてうなずくと、顔中にやさしく口づけられた。
ぬるりとしたローションをまとった指が入り口をほぐすように触れてくる。祐樹はちょっと苦笑した。いつの間に。
「用意がいいね」
「たしなみ、だろ」
5年前を思い出させるやり取り。
ローションとゴムを受け取って、困惑した顔を見せたことを覚えている。
それなのに、きょうは余裕の顔をして祐樹を翻弄しているのだ。
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