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第四話 野木崎 賢一 /1

 県庁近くの立体駐車場に車を停めると、匠は野木崎と共に正面のオフィスビルの入り口をくぐる。  野木崎は兄の同級生だ。先日兄と居酒屋で食事をした際、偶然遭遇した。就職活動をしない匠を気遣って、兄がIT企業に勤めている彼に、仕事の当てはないかと尋ねたのだ。 「一般人はパソコンやってればみんな同業だと思ってるから困るよな。プログラマとかデザイナとかオペレータとか、やること全然違うのに」  居酒屋でそう言って笑っていた彼は、地に足のついた迷いのない大人に見えた。現実に靄がかかって目的もなく流されている自分とは、全く違う人種。  高校ではサッカー部の部長をやっていてそれなりの大学も出たのに、今はブラック企業でIT土方をしているんだと自虐する。  その物言いまでも自信に満ちているように見えて、匠は彼が怖かった。自分がどれほど空虚な人間であるか、思い知らされる。

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