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 病は、音もなく忍び寄り、小さな体をあっという間に飲み込んだ。  母親の言いつけを破り遅くまで遊びくれた、背後に漂う夜の気配に気付かず、振り向けば星と月が綺麗だった、あの日の夜の闇のように。  静かに。  日を追う毎にからだは痩せ細り、母は毎晩泣いた。嵩む治療費、働きづめた父のからだも、ぼろぼろになった。  大きなベッドに横たわる小さな体。 その日は発作もなく、静かな寝息とかたい機械の音だけ、暗い部屋に満ちていた。  医者は二親に告げた。 「ならば今晩はずっと、この子の傍に居よう」  そう決めたのに、何故二人は小さな体をひとり置いて部屋を出たのか。  小さな体は今まさに、最期の灯火を消そうとしていた。静かに、静かに。  その夜見た夢は、やがて色褪せ、すり減り、彼方へ消える。  その夜見た夢は、まるであの日の夜の闇のようだった。

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