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第1話

「いらっしゃいませ~」   静かな店内、ここはとある書店。僕、滝本律(たきもとりつ)の働くアルバイト先でもあった。夕方から夜にかけてシフトの入っている僕は、この空間と本屋特有の匂いが好きだった。そんな心穏やかな気持ちで接客をしたり、掃除をしたりと、クルクルと動き回っていると、広い店内だというのに、騒がしくなった。そちらの方をほかのお客様も見ては顔をしかめている。これは良くない、と思い注意しようと移動した時だった。 「めっちゃカッコいいですね!!」 「これから一緒に遊びに行きませんか?」 どうやら男性が女性に絡まれているようで、男性の表情はわずかに眉根を寄せている程度だが、とても迷惑がっているのが見て取れる。僕はトラブルになる前に、と思いその男性に声をかけることにした。 「お客様、大変お待たせいたしました。お探しの商品をレジにてお預かりしておりますので、ご確認の方、お願いできますでしょうか?」 「ありがとうございます」 女性たちは僕が来たことによって不味いと思ったのか、それとも用事があることを知ってか、はたまた周囲の視線に気づいたのか、そそくさと離れていき、店外へと出ていった。僕はそのまま男性を人気の少ない場所へ誘導した。 「大丈夫ですか?すみません、勝手に…」 「こちらこそ、すみません。助けてもらって。恥ずかしい話、ああいったのはどうしようもできなくて…」 「助けになったようで良かったです。また、何かお困りごとがありましたら、店員にお申し付けください。それでは、失礼いたします」 あれから男性は一冊、本を購入していき、そのまま帰られた。僕はそれ以外は特に変わり映えもなく同じような時間を過ごした。

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