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第3話

 それに対して大学という場所は、一匹狼でいるにはちょうどいい場所だ。中学校や高校と違って時間割が学校側に決められているわけじゃないし、隙間時間はわりと長いから図書館に籠ることもできる。家よりはずいぶんと過ごしやすい環境だ。 「こんにちは」 「こんにちは、今日もたくさん読んでるね」 「はいっ! 柏田さんのオススメが面白くて、シリーズ全部読んでるところです!!」 僕は、図書館に籠ることが多く、そこの職員さんである柏田さんという女性と仲が良くなった。この図書館には就職して一年目らしく、年齢は割と近い方。 「よかった、また感想教えてね」 「はい!!」 小声で話をして、そのまま別れる。柏田さんは職員のいる部屋へ、僕は二階にある書架と勉強するための場所を目当てに。やはり、二階へ来ると空いていた。空きコマといえど、今の時間は一限目だから、図書館に来る人は少ない。 「っと、たしか……」  今日は読書も兼ねているがやりたいことは勉強だ。奨学金を借りている身で遊び惚けるわけにはいかない。まあ、遊ぶ相手なんていないけれど、あまりにも目に余る成績では、奨学金の申し込みを取り消される場合もあると聞いたことがあるので、頑張らないといけない。 「あ、あった」 参考書を探し出し、それを本棚から取る。本当であれば買いたかったが、一時期のためだけに買うのは、と躊躇ってしまい、図書館で見ることにしたのだ。僕はその本を手に取って、荷物を置いた席に戻る。  黙々とレポート作成などの作業をし、わからない部分は参考書から見つけて解決をする。途中、席から見える窓の外の景色を見やれば、僕とは縁遠そうな集団がはしゃいでいるのを見つけた。縁遠そう、というと失礼だけど、僕は誰かとはしゃぐのは苦手なのだ。 「あれ……?」 ふと、その集団の中心にいる男性の一人に見覚えがあることに気づいた。その人はよく覚えている。華やかな顔立ちの、男の僕からでもイケメンだと感じる、美しい人だ。 「あの人……」 また絡まれているなぁ、と思う。イケメンゆえに絡まれるのか、今日も数人の女子に囲まれていた。ただ一つ、この間と違うのはその人以外にも男がいるというところだ。友人同士のグループにしては、イケメンさんだけやけに絡まれている。  なんとなくジッと見てしまったが、それどころではなかったと思い出し、慌てて視線を机に移した。そして僕は自分の取っている科目の時間までしっかり勉強し、柏田さんに挨拶してから図書館を後にした。 今日はファストフード店のバイトだ。授業が入っている昼間では、あまりシフトに入れないので、専ら、夕方からの勤務。大学も近い、大きな市街のお店なのでどの時間も忙しいが、なんといっても夕方は学生さんが多く来店する。

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