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第51話:教会の子供たち17
その後。子供たちは一人残らず宿泊棟を出て、敷地内の小道を戻った。
先頭を行く子がカンテラを持ち、他の子たちが揺れる灯りに続く。最後尾には修道士が二人、同じような灯りを持って付き添っていた。
ユァンとバルトロメオは暗い林の中から、近づいてくる列を眺める。
「あの中にペティエ神父はいないみたいだな」
「うん……」
あのあと二人は裏口から宿泊棟の庭を抜けだしたが、子供たちの無事を確かめたくて、帰り道に先回りしていたのだ。
ユァンはまだ養護院の制服を着ていて髪も黒く染めたまま。早くシャワーを浴びて着替えたいけれど、子供たちの帰りを見届けなければ気が休まらない。
そうして彼らの向かう先、敷地の外へ続くゲートへ目を向けた時。
「……あれ?」
闇を縫うようにしてこちらへ来る人影を見つけた。
「どうした?」
バルトロメオも同じ方向へ顔を向ける。
「人が来る。二人……、服装からして養護院の子。たぶん年長の子たちだと思う」
彼らは人目を忍ぶように、小道の脇の草陰をやってきた。みんなが帰る頃に来るなんてどうしたんだろうか。
彼らはユァンたちのいる林の前を、こちらに気づかないまま通り過ぎようとして……。
「……あれっ?」
ユァンは思わず声をあげた。
ほっそりした体つき、長い手足。あの時顔は見えなかったけれど、それはパーティの会場から逃げていったあの男の子に違いなかった。
声を発したユァンに向こうも気づき、足早に進んでいた足を止める。
「きみ……、きみだよね!? よかった、会えた!」
彼の方から駆け寄り、ユァンの前に立つ。パーティの広間では強ばっていた彼の唇が、今はやわらかくほころんでいた。
「きみのことが、どうしても気になって戻ってきたんだ。あそこで一人にしちゃったから……」
「じゃあ、僕を心配して……?」
ずいぶん年下の子に心配され、ユァンは嬉しいような、それでいて恥ずかしいような気持ちになる。
一緒に来たもう一人の少年は大人と見間違うくらいの大柄で、パーティでは見かけなかったと思う。体は大きいが、ふっくらした頬の辺りに少年らしさが残っていた。
目が合うと、彼は何度かまばたきしてから目を逸らす。
(……え、なんだろう?)
ユァンは彼のその反応が気になった。
「訳アリみたいだな、話を聞けるか?」
バルトロメオがユァンの肩に手を置き、いま来た二人を見る。少年たちは顔を見合わせてから、こちらに頷き返した。
「じゃあ、とりあえず……」
どこか適当な場所で座ってもらいたいけれど、修道士宿舎のあるエリアまではしばらく歩く。それでユァンは、サイロの脇にある物置小屋まで彼らを連れていった。
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