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第153話

未亜side キュっとシューズと床のこすれる音がして、目を向ける。 「…あれ、赤井…郁どこ行ったか知らない?」 ニコニコと機嫌がいいのか前までの厳しい口調の春くんはどこにもいない。 「…お手洗いに行くって、さっき教室を出て行ったよ」 「へぇ…あっそう。素直に言ってくれば何もしなかったのになぁ」 小さな声だったがハッキリと言った。 「何言って…」 「ううん、なんもないよ。ところで、俺になんか聞きたいことでもある?」 「え…?なんで?」 突然の質問に何も返せない。 「……あー。もういいわ。なんかどうでもよくなってきた、お前のこと。」 春くんはそう言いながら、夕日が入り込む窓際へ移動し、壁に寄り掛かった。 その間に笑顔から無表情に変わっていく。 「……どういう意味?」 「さっきの話、がっつり聞いてた。」 「…っ!?」 「で?」 「でって…」 窓の外からの光で顔が影になっているが、眼だけがギラっとこちらを睨む。 「俺はどうなろうと別に構わない。」 「何言ってるの…」 「俺はあいつ自身が好きだから。あいつの性格もしぐさも、全部愛おしい。」 「な、なに言ってんの?……あんな目に合ったのに?」 「なんでお前がそのことを知ってんのか、知らないけど。…それって別に関係なくないか?郁がひどい目にあったって……レイプの被害を受けたって、だから?これ以上お前の言い分があるなら聞いてやるけど」 「言い分って…私は!」 「あのさ、用がないならさっさと帰れ。お前なんてどうでもいんだよ……」 「…!?」 「もしそのことをみんなの前でバラしたいならどうぞお好きに。俺のことはいくら話されても痛くもかゆくもないからな…でもな、あいつにだけ危害を加えてみろ、お前のことただじゃおかねえからな。」 低い声で言う春くんに一瞬恐怖を感じる。 でも、すこし聞いてただけでしょ。 どこにいるかなんて分かるわけないだろうし…。 郁くんを少し苦しめてやりたかっただけなのに。 なんでこんなことになったんだろう。

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