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第154話

春side 「…」 困惑の表情を浮かべ、何も言わなくなった赤井。 イライラが増幅する。 こういう人はきっと、何を言ったところで言い訳しかしないんだろうな… つかつかと赤井の正面まで歩いていき、パンっと頬を平手打ちをした。 頭の中を整理するより先に体が動いていた…。 あー、あ。 やっちゃった。 手を出すつもりはなかったのに。 「…っ、な、なにするのよ!このことみんなにばらすわよ!」 カッとなってやってしまったことは仕方ない… 「はぁー。…で?………これ見てもそんなこと言えんの?」 ずっとポケットに入れていた小型のボイスレコーダー。 「ひ、卑怯よ!!」 「あ?どっちが??」 「くっ……」 「今の全部取ったけど?どうする?クラスにばらまこうか?」 「でも、郁くんの居場所、わかんないでしょ!?」 「ふーん」 こいつは俺がどのタイミングから話を聞いていたのかわからないようだ。 この教室に入ってきてから、俺の目線の先に赤井はいない。 「邪魔。どけろ」 ドンっと目の前に立ち尽くした赤井を押しのける。 つかつかとロッカー前まで歩き、ロッカーの前に置かれた赤井の荷物の中身が出ることも気にせず思いっきり蹴とばす。 ガチャっとドアを開け、怯える姿にさらに苛立つ。 「これ、どう説明すんの?」 「…っ!!…ご、ごめんなさい!!!」 謝ってきたがもう遅い。 「……は、はっ…」 呼吸の乱れた郁をすぐにロッカーから出してやり、目隠しと手の縛りを取る。 「…ごめんな郁。すぐ助けてやれなくて」 正面から抱きしめ、ぽんぽんと背中を優しく撫でる。 「はぁ…はぁ……」 涙を浮かべ今にも過呼吸寸前だ。 「…大丈夫。保健室行って少し休もうな。」 こくんとうなずく郁を見て少し安心する。 「で?お前はいつまでそこに突っ立っているつもり?」 その一声で赤井は教室を飛び出した。 郁は頭の中で整理ができていないまま、ぼろぼろと涙をこぼし続ける。 「大丈夫。守ってやるから。…ごめんな、早く帰ってこれなくて」 郁は俺の制服をぎゅっと掴む。 俺が郁と離れなければこんなことにはならなかった。 酸素を求めるように大きく息を吸う郁の背中を優しく撫でる。 「大丈夫、落ち着け。ここには俺しかいないよ。……大丈夫だから」 ほんとに過呼吸寸前だった。 過呼吸はなってしまうと、体力を消耗するし、うまく呼吸ができず焦りを感じてしまう。 その焦りがさらに過呼吸を酷くしてしまう場合もある。 だから、過呼吸にならなくてよかった。 そう思う反面、暗闇の狭い場所に閉じ込められるという恐怖体験をさせてしまったのは事実で…。 郁の精神面がすごく気になって仕方ない。 郁が落ち着くまで、ずっと抱きしめて「大丈夫」と何度も繰り返した。 怖い思いばかりさせてごめんな、郁……。

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