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第65話
郁side
朝、目が覚めたらお父さんもお母さんも居なくて、壁掛け時計を見れば8時前だった。
「……寝すぎた、かも…」
まだ寝足りないような感覚がするけれど、昨日よりはスッキリしていた。
体を起こして洗面所へ向かう。
顔を洗って歯を磨けば、完全に目が覚めた。
リビングに行けばお母さんがのんびりニュースを見ていた。
「…おはよ」
「おはよう、郁。よく寝ててたね。」
「うん。」
「朝ご飯食べる?」
「うん、食べる」
「分かった。あ、その間に着替えてきたら?その服脱いだら洗濯機に入れて回して?」
「うん、洗剤は?」
「もう先に入れてあるよ」
「わかったー」
ラフな服装に着替えて、先ほどまで来ていたTシャツとハーフパンツを洗濯機に放り込んでスタートボタンを押す。
「よしっ。」
リビングにまた戻れば、机に食パンにイチゴジャム、卵焼きが置いてあった。
「卵焼き?」
「お父さんのお弁当のあまり。甘口にしてあるから郁も食べるかと思って。いらないなら食べるけど?」
「たべる!」
「何飲む?」
「何があるの?」
「なんでもあるけど」
「オレンジがいいな」
そういえばコップに入れて持って来てくれた。
「…はい。」
「ありがと」
するとお母さんはニコニコしながらこちらを見て来た。
「な、に?」
「うん?…楽しみなんだね、春くんに会えるの」
「な、なんで?」
「顔に書いてあるから」
恥ずかしくなって顔を背けた。
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