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第1話

「あっ……ん、ぐっ、あぁっ……や、やめっ」  今、俺の下で喘いでるこいつと最初に二人で飲んだのは、後輩を助けるためだった。後輩はオメガで番持ち。番は、この辺りじゃ有名な学園の理事長の息子、つまりは御曹司だ。  本来なら、後輩……礼緒だって働かなくてもいい筈なのに、礼緒の出生は一般家庭だからと譲らず、その番が折れた形になったらしい。  まぁ、アルファって言うのは番を閉じ込めたくて仕方ないけど、その番の願いなら何だって叶えたいと思う生き物らしいから、仕方ないのかもしれない。  バイト先である"エデン"の先輩である婀都理さんも店長もアルファだから、よく言っていた。  俺は、ベータだから解らないけど。  こいつ、細川はアルファであり、アルファだと言われればその通りの態度や相貌をしている。絵に描いたような嫌なアルファだ。  何でこんなことになってるのか、と聞かれれば、俺も何でだろう?と首をかしげるだろう。 「クッ、ハハハッ、いい様だなアルファ様が」  にっこりと笑いかけながら、俺は細川の中に埋めたバイブを出し入れする。  その度に、細川の背中が跳ね上がる。そんな反応が面白くて、ついつい苛めてしまう。今日がアナル初体験のアルファなのに、遠慮なしに。  押さえようとした声すらも、バイブの振動をあげて、中にある良いところを擦ってやれば、再び上がり、俺の耳を楽しませてくれる。  必死で逃げようとしているようだけど、全くと言って良いほど全身に力が入っていない。捕らえることも、容易いからベッドの上に引き戻してお仕置きとばかりに刺激を増やす。  低く、命令することになれているその声が甘い鳴き声をあげている、アルファが俺の下で必死に逃れようともがいている、その姿を見て俺の征服感が満たされていくことを感じた。  俺のモノだって痛いくらいに張りつめているけれど、まだ、じっくりと味わいたい。  きっと、こういう感情が沸き上がってくるのも、久しぶりに俺が酔っているからなんだろうと思う。  一際、大きな声を出して細川がイク。  さっきから、何度も出しているモノはもう薄くなって、ポタポタと透明な汁が溢れるだけだった。  あっ、あっ、と声を上げていた細川は、ビクビクと体を震わせながら気絶する。  何度か頬を軽く叩いてみたけど、反応は返って来なかった。  ちっ、とため息を吐きながら俺は細川の中を犯していたものを抜き出す。  バイブが抜き取られたそこは、ヒクヒクとこちらを誘うように動き、中から入れるときに使ったローションがどろり、と溢れてくる。 「えっろ……うーん、まぁいっか」  俺は、細川の体を抱き起こし、自分の上に抱えあげる。  おれ自身はベッドに座って、対面座位の体制だ。唇をペロッとなめずり、尻を開きながら細川の体をゆっくりと自分のモノの上に下ろしていく。  意識を失っているからか、細川の後孔は俺のモノをゆっくりと素直に飲み込んでいく。 「んっ、んんっ……ふっ、んぅ……」  目覚めてないのに、その唇からは僅かに甘い声が漏れ、俺の加虐心に火を着けた。  太い雁口を飲み込んでしまうと、そのまま細川を支える腕から力を抜く。  すると、自重に従って勢い良く細川は俺のモノを飲み込んだ。 「んっ、あっ、あぁああああっ!!……なっ、なに?」 「あっ、起きた」  流石に気絶してる事も出来なくなったのか、細川はその刺激で目を覚ました。  起きてすぐ、俺の顔を見てどれだけの絶望が細川を支配しただろう?そう考えると、とても愉快な気分になる。 「なっ、なんっ……ひあっ!?」  細川が俺の事を認識すると、身じろぎをして距離を取ろうと動く。  そんなことをすれば、逆効果なのに、ね。  案の定、声をあげ、俺にすがり付いてきた細川は、何が起こったか理解できてはいなさそうだ。  その様子に、堪えきれずクスクスと笑い声がこぼれてしまう。  笑い声さえ響くのか、必死に力の入らない手で俺の体を押さえようとしてくる。  全く、無駄な行為だけど。 「はなっ、せ……なん、おれ……んぁ!あっ!!」  衝撃が落ち着いてきたのだろう、細川は俺を真っ直ぐ見て、いう。  が、俺にはそれが面白くはない。  だから、下から緩く突き上げる。すると、面白いくらい細川は跳ね上がる。クスクスと笑えば涙目で睨まれた。 「なんっ、やぁ!!」  そんな目で見られて、興奮しないわけがない。細川の中に入り込んでる俺のモノが、膨らみを増すのが解る。  中の快楽を堪えるように、細川は俺の肩に爪をたてた。  その痛みで、ぐっと息を詰める。  はー、はー、と息を吐いて体を震わせている細川。  可愛くて、愚かで、もっともっと、快楽で溺れさせたいと思ってしまう。  にやっ、と笑った俺に気が付いたのか、細川が体を固くする。が、すでに遅い。  くるっと体制を入れ換えると、俺は細川の両足を抱えて、突き上げる。  緩急を付けて、奥を突けば、いやいや、と細川は首を横に振り、甘い声を撒き散らす。  時折、正気を取り戻すのかグッと中が締まる。その中を、無理矢理に突けば、細川はいっそう大きい声を上げてよがった。  ラストスパートをかけるように動けば、酷く困惑したような細川。  それでも、細川の腰は快楽を求めて動き、細川のモノは起ったままだ。  ガンガンと突き上げ、中に出すと宣言すれば、細川は焦ったように首を横にふる。 「ぃ、や……だめっ……やめっ、やめ、あぁ、ああああっいやだぁああああああ!!!!」  細川の声と共に、ドクッと跳ねた俺のモノは、細川の最奥で果てた。  俺の精子を受けてか、細川も達しており、そのまま再び意識を失った。  流石に、これ以上続ける気は無く、仕方なしに中から引き抜くと、出したものを掻き出して、細川の隣に横になる。  細川は、すっかり落ちていて目覚める気配がない。  最後のいたずら心が起き、さっきまで入れていた中にローションをたっぷりとそそぐと、スキンを着けた俺のモノを入れて背後から抱き締めながら俺も眠りについた。  起きたとき、細川の反応を夢に描いて。  もぞもぞと、隣で動く気配がして、俺の意識が浮上してくる。  少しでも刺激を少なくしたいのか、ゆっくりゆっくりと動いていくそれに、内心笑いながらその様子をそっと見守る。 「……っ、っ!?ひっぎっ!!」  あと少し、と言ったところで俺は細川の腰を捕まえて引きずり混む。  当然、中に入ったままの俺のモノは細川の中に逆戻りするわけで。その刺激に、細川の口から悲鳴じみた声が漏れる。 「おっ、おまっ、いい加減に、しろ!」 「お前のせいで起きちゃったじゃん。俺も、コレも」  突き上げてみれば、中が強く締め付けてくる。  必死に耐えているようで、シーツを握りしめている拳が白くなっていた。  責任とってね、と冗談めかして言えば、しねっ、と涙目で睨まれた。全く怖くない。  まぁ、何だかんだで朝から濃くするつもりも無くて、一発出して細川のモノを擦ってイカせた。  昨日の事も相俟って、俺が抜き出た後も細川はぼうっとしたまま、そんな細川を放って置いて、シャワーを浴びに行く。  ついでに風呂を貯めて出てくると、細川と視線が合った。 「お、まえ……よくも好き勝手してくれたな」  ベッドの上に横になったまま、細川がシャワーを浴びて出た俺を睨んてくる。  が、今となってはアルファだとしても何の恐怖もない。  俺は揶揄うようにベッドに腰を掛けて、細川の頭を撫でてみる。まるで弟や妹にするみたいに。 「お前が昨日、俺が酔うほど飲ませるから悪いんだろ?」  クスクス笑いながら言えば、撫でていた手を叩き落とされた。 「まぁ、お前も貴重な体験出来てよかったんじゃない?それより、起きれる?そろそろ店から出たいんだけど」 「起きれるわけねぇだろ!!……っっ」  声を張り上げたせいで、腰が悲鳴を上げたのだろう。細川が悶える様を見て、笑う。  それを睨みつけて来る、で悪循環だ。  ただ、此処が自宅とかならまだしも、ここはバイト先の二階。セックスはオーケーだし、ラブホテル並みにそう言う玩具やローションなんかもそろってる。  店長の趣味とかじゃないけど、夜の店の常連なんかには貸している。最近まで、婀都理さんが連泊してたこともあった。まぁ、素行の悪い輩には貸さないから大丈夫。  こうやって設備が充実しているのも、まぁ言っちゃ悪いが店長の目についた玩具なんかの試しをさせられている、らしい。  詳しくは聞いた事無いけど。料金も、それでフィフティーってことになってるらしくて、タダ。  まぁ、その代わりキチンときれいにして帰らないと、二度と泊めてもらえない。  優しくも、厳しい。 「慈雨くん、入っても平気かな?」  細川の様子を観察しながら、部屋を綺麗にしていたら、廊下からノックの音がした。  顔を出したのは、店長。困ったような顔をしながら、俺に言う。 「ごめんね、この部屋、僕が後で片付けるから、お店の方手伝ってもらってもいい?桜一郎くんが、今日急にこれなくなっちゃって」  あーっ、と俺は言いながらチラッと細川の方を見る。細川は、俺を睨みながらしっしっと追い払うように手を振った。  やれやれ、と思いながら一つ息を吐いた。 「何時までですか?昼までなら、何とか出れそうですけど」 「うんうん、お昼まででもいいよ、ありがとう!あぁ、僕下で呼ばれちゃったから、支度できたら早めに来てもらっても良いかな?」  したから、どんどん店長を呼ぶ声がする。あわあわと店長は駆け足で階段を下りて行った。 「俺、仕事行って来るけど、動けるようになったら風呂入っちゃって。帰りはここ降りてけば店に出るから。帰れるようなら、帰れよ。んじゃ」  細川は返事をしなかったけど、聞こえているだろう。  俺はヒラヒラと手を振りながら部屋を出て、少し息を吐いてから気合を入れ直す。  この店に居る時は、下手な事は自分に許していない。少しのミスもしないように心がけている。  この店の、アルファ率が高いせいもあるんだろうけど、やりがいはある。  それから、昼時には予定通り上がらせてもらった。  着替えてから、二階の部屋へと上がってみれば、憮然とした表情でバスローブを着た細川がベッドの上に座っていた。  何でバスローブ?とか思ったりしたけど、そう言えば俺の服は平気だったけど、細川の服はぐちゃぐちゃに汚してた事を思い出した。 「うごけるようになったんだ、細川」 「……」  無言の返事、だったが、隣に腰を下ろしたことで状況が変わった。  反動か解からないが、ころん、と細川は後ろへ転がり込んでしまった。かなり、不服な顔をして。 「……お前、それでどうやって風呂行ったわけ?」 「うるさい、黙れ!」  と言った所で、細川の腹が音を上げる。  その大きさに、俺は思わず笑うしかない。  そう言えば、細川は昨日の夜から何も食べてないんだったと思い出す。  俺は、朝賄いを食べたから大丈夫だったが、そう言えば何も考えてなかった。  まぁ、俺の初めての時の朝何て、此処まで酷くはなかったけど、朝ごはんを食べようとは思わなかった。  ただただ、呆然としてたかな?もうよく覚えてないけど。  それで稼いでた時期もあったし。 「お前の腹の音の方がうるさいくらいだろ。服、後どのくらいで……乾いたみたいだな」  ピーピーっと鳴る洗濯の終わった音。それに俺は腰を上げて洗濯機を確認する。  乾いていたそれを、細川の上へ放る。 「何すんだ」 「それに着替えろ。早く。それとも何?俺に着替えさせてほしい?」  そう言うと、細川はくそっ、と悪態を付きながらのろのろと着替え始めた。  ゆっくりとなら、行動できるようになったらしい。  恐るべし、アルファの回復能力。と思いながら、それを視姦する。  にっこりと笑いながら見れば、細川に屑と罵られた。  細川ほどじゃないと思うけど、な俺は。  漸く着替え終わった細川を連れて、一階に降りる。 「店長、金払うんで裏で食べさせてもらってもいいですか?」 「うん、いいよ。今、作って持っていくから、待ってて」  食べれないものは無いでしょ?と店長が言うのに頷くと、ニッコリと厨房の方へ引っ込んでいった。  俺は、バックヤードの休憩室へ足を踏み入れると、椅子に細川を座らせて、その対面へと腰を下ろした。  携帯を弄りながら待っていると、家族から何だか、大学生には考えられないような量のメールと電話が入っていた。  家族に一斉にメールを反すと、はぁ、とため息を吐いた。  まぁ、確かに最近は朝帰りなんてしてなかったから心配したかもしれないけど、俺がそんなヤバいやつに捕まるかって話で。  それからも、友達や家族とのメールのやり取りをしている内に婀都理さんが料理を持ってきてくれた。 「お疲れさま、今日はありがとうね慈雨くん」  そう言いながら、婀都理さんはスムーズに配膳をしていく。  その手つきは、見習いたい。婀都理さんを見ていると、自分がまだまだだって痛感する。  ごゆっくり、と出ていった婀都理さんを見送ってから、頂きます、と手を合わせた。  細川にそういえば、苦手なものとか聞くの忘れていたが、まぁいいか、と思い直して。  今日のランチメニューはサンドイッチとサラダ。それに、今は暑いから冷製スープが付いたものだった。  相変わらず、店長の料理は美味しい。  ただ、気まぐれにしか料理をしないので、店に出された料理や賄いの味の差が激しい。決していつもの料理が不味いというわけではない。店長が作るほうが美味しいのだ。なぜか。  ごちそうさま、と手を合わせて俺は細川を家まで送った。アルファの家系だと言っていたが、結構な大きさの日本庭園がある民家だった。  そこのお坊っちゃんだろう細川が、どうしてこんな性格になったのかとても不思議だ。  最後まで文句か舌打ちしかなかった細川を送り届けたあとは、家に帰る。  あんまり、帰りたくないけど。

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