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番外編03
設楽の腕が無造作に動いて、真崎の躰が寝台の上に仰向けに転がる。その反動に、拘束されていない右手と右脚が投げ出され、後孔からバイブが抜け落ちた。
「ぁ…ひ…たら…さ…」
ひゅーひゅーと喉を鳴らしながらうっとりと微笑みを浮かべる真崎の右足を、設楽は掴んで持ち上げた。ず…と寝台の上を引き摺って引き寄せれば、ゆっくりと唇が動く。
「挿れてくらさ…ひたらさま…。わたくひの…使ってぇ…」
ゆるりと動いた真崎の細い指が、尻たぶを僅かに開く。そのすぐ横で、ひくひくと襞が物欲しそうに口を開き、濡れた赤い肉が覗いていた。
ぐっ…と、真崎の両脚を胸につくほど押し上げて、設楽は雄芯を開ききった穴へとあてがう。覆いかぶさるように焦点の合わない目を覗き込んだ。
「欲しいか」
「ほ…ひぃ…」
「誰に言ってる。ハナからぶっ壊れてる玩具に興味はねぇんだよ」
ゆらりと、真崎の瞳が動いて設楽を映し出す。だらしなく開いていた唇が、綺麗な弧を描いた。
「設楽様ぁ…どうか、わたくしのはしたない穴を…貴方のペニスで壊してください」
「ははっ、上出来だ。使ってやる」
開ききった襞をなお押し広げて、設楽の雄芯が真崎の躰を貫く。一気に最奥まで埋め込まれる衝撃に、真崎は艶やかな嬌声を迸らせた。
大きく開かれた脚の間で、ハーネスを纏った屹立がぶるりと震える。鈴口から滴り落ちた雫が真崎自身の胸元へと透明な糸を引いた。
「はぁッ、あッ、設楽様っ、気持ちいいッ」
快感に全身を強張らせる真崎を抱え上げて、設楽は後ろへと倒れ込んだ。腹の上に乗り、自重で奥の壁を抉り仰け反る真崎の腰を掴み、さらに引き下げる。
「あがッ、いっひ…ッ、それっ…いじょお…壊れッ」
「ぶっ壊して欲しいんだろ?」
「はひっ! 壊しっ…くだッ、ひあぁああッ」
悲鳴とともに、真崎の躰が仰け反る。
設楽の指が、乳首に垂れ下がった鎖にかかっていた。
「ちっ…ぎれ…ッ、ひッ、ぎもちいいッ、設楽様ぁ!」
ガクガクと躰を震わせて真崎が涙を流す。雄芯を食んだ後孔がぎゅっと締まり、設楽は僅かに目を細めた。
「変態。テメェの片手が空いてんだろぅが。ケツの穴抉ってやっからテメェで弄れよ」
「あひッ、あいがとうごじゃいま…っ」
歓喜しながら細い指を鎖にかけて引っ張る真崎を、設楽が下から突き上げる。薄い筋肉を纏った真崎の躰は、本当の玩具のように設楽の上で踊り狂った。
突き上げられては落ちる度に最奥を抉られ、真崎はボロボロと涙を零す。理性などとうにぶっ飛んで恥も外聞もなくなった真崎は、穴という穴から体液を滴らせ、恍惚に酔い痴れているようだった。
「あっ…ひッ、いいッ! ぎもぢい゛ッ、乳首…っ、千切れ…っ」
「おいおい、持ち主に断りなく千切るんじゃねぇぞ変態」
「はひっ! ひたらしゃまの…仰るとおぃにいたひまふっ」
設楽の腹の上で、これまで以上にダラダラと涎を垂らして真崎の雄芯が揺れ動く。みっしりとハーネスの食いこんだソレを強く握り込めば、真崎の口からは悲鳴が迸った。
「ひぎぃいいい゛ッ、らめっ、さっ…わんな…れ、くらしゃッ…イギたく…なっちゃ!」
「なれよ。もっと苦しめ。もっと壊れてみせろ」
容赦なくハーネスの上から雄芯を擦り上げ、ナカの媚肉を設楽が抉る。壊れたいと言うなら、人の尊厳など微塵も失くしてぶっ壊れろと、そう思う。
「あひッ…い゛、イギだい…ッ、出し…ったぃ! はぐぅ…ッ」
一度意識が向けば我慢など出来る筈もないのは設楽にも分かる。幾度吐き出すことなく絶頂を迎えているか知れない真崎の雄芯は、既に変色しそうなほど張り詰めていて、限界も近い。
イヤイヤと頭を振りながら涙を振り零す真崎を、設楽が軽薄な笑み浮かべて見上げていた。
ぐっと設楽の腹筋が引き締まり、上体が起きる。目の前で小さく揺れる鎖を、設楽は剥き出しにした歯で挟み込んだ。口角が上がったそれは、明らかに笑みを象っている。
「引き千切ってやろうか。ん?」
くっ…と軽く横にずらしてやれば、肉を貫通している金属がずるりと動く。穴を空けたばかりで塞がろうとする肉が容赦なく引き攣れて、真崎は悲鳴を上げた。
「うあぁあああッ、あ゛ッ」
全身を硬直させる真崎の雄芯が、ビクリと大きく跳ねる。鈴口から生暖かい液体が滴り落ちて、設楽は呆れたように笑った。
「気持ち良くて漏らしたのか? どうしようもねぇ野郎だな」
「ぁ…ひ、…もぅ…イかせてくら…ひゃい…」
焦点の定まらない目を虚ろに泳がせ、胸を喘がせる真崎の口から小さな懇願が漏れる。そろそろ限界かと、設楽は歯に挟んでいた鎖を離すと真崎の胸を軽く押した。どさりと、寝台の上に沈み込む真崎の拘束を外す。
「オラ、イきたきゃ勝手にテメェで外せよ」
「あぃがとぉごじゃいま…」
ゆるゆると手を動かす真崎に、だが設楽は勢いよく後孔を穿った。
前触れもない突き上げに、真崎の背が撓る。仰け反った喉から声にならない悲鳴が漏れた。
「あ゛ッ、―――…ッッ!!」
細い指が、自らの雄芯を掻きむしる。強引に揺さぶられ、ハーネスを外そうにも上手くいかないもどかしさに真崎は泣き叫んだ。
「ひやぁッ、あ゛ッ、待っ…お願ッ、待ってくらさ…っ、イぎぃ…!」
「良いツラだ。望み通りぶっ壊してやっから覚悟しろ…ッ」
「あひッ、あ゛ッ、イぐぅ!! イギだッ…」
突き上げられるたびに声を漏らし、真崎の指先はハーネスの上を滑る。両手が自由になろうとも吐き出せない苦しみに苛まれ、真崎は文字通り壊された。
設楽の指が、ハーネスを外す。
ビクンッと大きく一度腰を跳ねさせて、真崎は雄芯から噴水のように白濁を吹き上げた。瞬間、後孔がぎゅっと収縮して設楽の雄芯を締め付ける。奥の壁をさらに押し上げて、設楽は欲をぶちまけた。
「あぐッ、ひたらしゃまっ、おくが…ぁ、せーえき…いっぱいれふぅ…っ」
「ッ…は、喜んでんじゃねぇよ変態」
訳も分からず四肢を投げ出し、真崎は穴という穴から体液を垂れ流す。
設楽に揺さぶられるまま、勢いがなくなってもなお真崎の中心は先端からダラダラと体液を吐き出し続けた。だらりと垂れ下がった舌を懸命に動かして、真崎は虚ろに言葉を紡ぐ。
「はうっ…あッ、イイ…ひたらしゃまぁ…とまんら…っい、わたくひの…ぺにす…壊えちゃ…まひた…」
「そりゃあ良かったな」
「はひぃ…ひたらしゃまの…せーえき…あふれちゃ…まふぅ…」
視線を宙に彷徨わせる真崎の中から雄芯を引き抜き、設楽は額にかかった前髪を掻き上げた。
ずりずりと寝台の上を這って顔を寄せた真崎が、嬉しそうに萎えた雄芯に頬擦りする。
「おそうじ…ひてもいいれふか…?」
「勝手にしろ」
「あいがとうごじゃいま…」
柔らかくなった雄芯をちゅうちゅうと吸う真崎を見下ろし、設楽は小さく息を吐く。いつまでも離そうとしない真崎を引っぺがし、首を圧迫して軽く気絶させて、ようやく設楽は寝台から降りることが出来た。
直視するのも憚られるほど乱れた寝台に、真崎を残す事に設楽は罪悪感など感じない。ついでに言えば躰を清めてやろうという気にすらならなかったのである。
布一枚纏うことなく寝室を抜け出し、設楽は台所を探す。さすがに腹が減っていた。単身用にしては大きな冷蔵庫を無遠慮に開ければ、それなりに食材が並んでいる事に安堵する。わざわざ買いに出なくて済むのは有り難かった。
味見を済ませた鍋の蓋を閉じて設楽が寝室へと引き返そうとすれば、タイミングよく廊下に真崎の姿がある。
「おい変態」
「設楽様…?」
首筋をポリポリと掻きながら寄ってくる真崎もまた、布一枚纏ってはいなかった。真崎がくんくんと鼻を鳴らす。
「いい匂い…煮物…ですか?」
「テメェのせいで飯を食いそびれたからな」
「そういえばそうでした」
悪びれた様子もなく言って真崎が笑う。ぺたぺたと廊下を裸足であるいて台所に入った真崎は、コンロに乗った鍋を開けて破顔した。
「ぶり大根ですね。美味しそうです」
無邪気に笑う真崎の頭を、設楽は容赦なく引っ叩く。
「その前に言う事があんだろうが」
「言う事…ですか?」
きょとんと見上げてくる真崎に設楽は溜息を吐きたくなる。あれだけ人様に迷惑をかけておいて自覚もないのかと思えば、呆れてものも言えないというのだ。
無造作に伸ばした設楽の指が、真崎の胸に揺れる鎖にかかる。くっ…と軽く引っ張り上げてやれば、真崎の口からは艶やかな声が漏れた。
「はぁ…んっ、設楽様…こんなところでいけません…」
「そうじゃねぇだろうが変態。人にこんなモン着けさせといて一言もなく盛ってんじゃねぇって言ってんだ」
「ああ…、そうですね。わたくしとしたことが失礼を致しました」
馬鹿丁寧に頭を下げた真崎は、だがしかし設楽の前にすっと傅いたのである。疑問に思う間もなく目の前で頭を下げた真崎は、設楽の素足にしっかりと額をつけてこう言った。
「わたくしを、ずっと貴方の玩具として手元に置いてください…設楽様…」
「はあ!?」
「え? 駄目ですか…?」
「駄目もクソもねぇだろう。一晩だけっつったろうが」
吐き捨てる設楽の足元から、真崎が捨てられた子犬のような顔をして見上げてくる。
「わたくしは…お気に召しませんでしたか…? その…先ほどは出過ぎてしまいましたが…、今後はちゃんと玩具としての分を弁えますので…」
お願いしますと、そう言って真崎は再び設楽の足の甲に額をつけた。思わず設楽が足を引けば、真崎の口からは傷ついたような縋るような悲鳴が上がる。
「設楽様…っ」
「やめろ気色悪い。どうしてそう何度も俺が変態に付き合ってやらなきゃならねぇんだよ」
心底嫌そうに吐き捨てる設楽の前で、真崎は正座をしてその顔を俯けた。その耳が、僅かに赤い。
「その…初めてだったんです…。設楽様が…」
「ああ!?」
思わずよろめく設楽である。だが…。
「わたくしを…最後まで玩具のように扱ってくださったのは…貴方が初めてで…、その…いつも最後は優しくされてしまって…萎えるというかなんというか…」
「ただの変態じゃねぇかよ」
「あうッ、もっと…もっと蔑んでください設楽様ッ」
脚に縋りつく真崎から離れようとする設楽はだが、壁に阻まれて上手くはいかなかった。言う事があるだろうなどと言わなければ逃げられたかもしれないと、後悔したところで今更遅い。
しっかりと脚を掴む真崎に溜息を吐いて、設楽は一度目を閉じた。次の瞬間、目を開けると同時に設楽は真崎の躰ごとその長い脚を振り抜いたのである。
ガツッと、派手な音をたてて真崎は背中から壁に激突していた。
「っぐ…!」
「離せ変態。それ以上ふざけた事ぬかしたら承知しねぇぞ」
「ぁ…ああッ、設楽様…こんなに激しくされたらわたくしは…っ」
まさに逆効果。盛大に間違った選択をしたと設楽が気付いた時には遅かった。ボロボロと涙を零しながらしがみ付く真崎に眩暈を覚える。
いい加減腹は減るわ鬱陶しいわで、設楽は白旗をあげた。
「分かった。分かったから取り敢えず離れろ。持ち主の言う事も聞けねぇような玩具は要らねぇ」
「は、はいっ」
すちゃっと床に正座する真崎に一先ず胸を撫で下ろし、設楽は内心で頭を抱えたくなる。まったく妙な男に懐かれたものだと、苦虫を噛み潰したような顔をする設楽を、真崎がうっとりと見上げていた事は言うまでもない。
風呂だ飯だとどうにかあしらい、げんなりする設楽を変態から救ってくれたのは、携帯電話の着信音だった。液晶に映し出された”辰巳匡成”という文字に、設楽は一生この人についていこうと思ったとか思わなかったとか。
今後続くであろうド変態真崎と設楽の攻防戦の行方は、また別の話。
END
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