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番外編02
設楽は煙草を灰皿に揉み消すと、箱を持って寝台へと戻った。
「おい変態、こりゃあいったいなんだ? 穴開けられてぇのか?」
設楽が目の前にニードルを差し出せば、涙と涎で顔をぐしゃぐしゃにした真崎がゆるゆると首を横に振った。その目には、僅かな恐怖と好奇心、それと、期待が入り混じっている。
「ううっ…ふうっ」
「どこに穴開けて欲しい」
囁くように言いながら、設楽はニードルで軽く真崎の頬を撫でた。
「ふっ…ぅ、ふ…」
さすがに刃物を向けられれば恐怖を感じるのか、幾分か呼吸を浅くして動きを止める真崎に、設楽は薄く笑う。そのままゆっくりと真崎の目を覗き込んだ。
「っふ…ぅっ」
ニードルを真崎の視界にしっかり入る場所へと移動させて、設楽はゆっくりと口を開く。
「舌か? 唇か? 胸か? 腹か?」
喋る事の出来ない真崎の反応を窺うようにひとつひとつ言った後で、設楽は笑った。
「まあピアスの形状からしてその辺りだろうが…。いいだろう、お前の望んでる場所に穴開けてやるよ」
「ぅ…ううッ」
上体を起こす設楽を、真崎の濡れた視線が追う。シリコン製の猿轡を食んだ唇が、微かに震えていた。
いつの間にか抜け落ちたバイブが寝台の上で羽音を響かせる。
「誰が抜いて良いって言った?」
設楽の膝が、ハーネスを纏う真崎の雄芯を容赦なく圧し潰した。
「ああぁあッ! あぐッ、ううぅっ、あ゛ッ」
悲鳴を上げる真崎の膝が反射的に閉じて、設楽の脚を挟んだ。
「しっかりケツに咥えてろって言わなかったか、ああ?」
「ふうッ、…ふっ、う゛う゛…んッ」
痛みにボロボロと涙を零しながら頷く真崎を見下ろして、設楽はじわじわと膝に体重をかけていく。真崎の目には、はっきりとした恐怖が浮かんでいた。
「どうした。玩具にされたがるくせに、壊されんのは怖いのか?」
「んうッ、うっ…ふっ…あぐ…ッ」
「脚を開け。本当に潰されてぇなら、そのままでも構わんがな」
胸を上下させながら浅い呼吸を繰り返し、真崎はゆっくりと膝を開いていく。設楽は膝を退けて、従順な態度を褒めるように雄芯をハーネスの上から撫でてやった。結構な荷重をかけたにもかかわらず、痛みに萎えるどころか真崎の雄芯は幾らか質量を増しているような気がするから呆れたのもだ。
「さすがに使い物にならなくなんのは困るってか? 可愛らしいところもあんじゃねぇか」
「うう…ッ、ふっ…んんッ」
この男の限界はどの辺だろうかと、設楽はそんな事を考えながら硬度を増した雄芯を手で弄ぶ。時折気紛れに強く握り込めば、真崎は嬌声とともに涙を零した。
そろそろ恐怖も薄れてきただろう頃合いを見計らって、雄芯から手を離した設楽は再びニードルを真崎の目の前に突きつける。
「さて、利口な玩具には褒美をやらねぇとな」
「ふうッ、う…っ、んッ」
「存分に泣き叫べよ」
たいして興味もなさそうに言いながら、設楽は無造作に真崎の乳首を摘み上げた。その強さに、真崎は背を反らせて胸を突き出す。
「ん゛ん゛ッ、うっ」
限界まで引き上げては指を離し、圧し潰すように捏ねくり回していれば、真崎の胸の上で小さな飾りがほんのりと赤く色づいて尖った。設楽がニードルをゆっくりと近付けると、ピクリと真崎の肩が震える。
僅かに恐怖の色を浮かべる真崎に構うことなく、片手で摘まんで固定した胸の突起を設楽は一気にニードルで横から刺し貫いた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛ッ! ッぐ、…ふっ、ふうッ、う゛ッ」
喉を仰け反らせ、ぶるぶると躰を震わせながら真崎が涙を流す。全身を強張らせて痛みを堪えておきながら、ハーネスに戒められた雄芯ははち切れんばかりに存在を主張し、鈴口から透明な糸を腹に垂らしていた。
「もう片方も、欲しいか?」
泣きながらガクガクと頷く真崎の顔には紛れもない恍惚が浮かんでいて、設楽は思い立ったように猿轡を外した。はっきりと噛み痕の残ったシリコンが、透明な糸を引いて真崎の口から離れる。
「うっ…はッ、はぁっ…ぁっ」
「どうして欲しいのか言ってみろよ変態」
「わたくしの…乳首に、ピアスを着けてください…貴方の、手で…」
ずるりと皮膚を貫いているニードルを引き抜けば、それだけで真崎は嬌声をあげた。
「っあ、ああっ…設楽様ッ、お願いします…早くっ」
強請るように背を反らせ、胸を突き出す真崎の胸へと設楽はピアスを着けてやった。留め具をつければ、本体と留め具とを繋ぐ細い鎖が小さく揺れる。僅かに滲んだ赤い体液を、設楽は無意識に舌で掬い上げていた。
「はあぁっ、設楽様…っ、気持ちいい…。もう片方も、着けてください…。貴方の手で…貫かれたいッ」
我慢できないとでも言うように身を捩る真崎の、右側だけ手と足を繋ぐ鎖を外してやる。
「自分で押さえてろ」
「はい…っ」
真崎は言われた通りにピアスの着いていない方の乳首を自分で摘まみ上げた。勃たせるまでもなく尖りきった乳首を、ニードルで刺しやすいようにきゅっと引き上げて胸を突き出す。
「っぁ…設楽様…っ、これでよろしいでしょうか」
「上出来だ。褒美をやるよ」
「ありがとうございます…っ」
ニードルをあてがったまま、設楽が低い声で囁く。
「離したら今度こそ踏み潰されると思え」
「は、い…」
つぷりとニードルの先端を潜り込ませれば、真崎の躰が硬直するのが分かる。設楽は一気に貫かず、ジリジリといたぶるようにニードルを進めた。
「ひぎッ、…っあ゛、あ゛あ゛ッ、ひたら…様ッ、そんっな…あッ、ああぁ…っ!」
「痛ぇのが好きなんだろ? 乳首に穴開けられてチンコから涎垂らすド変態だもんな」
「あぐ…っ、ん゛ッ、もっと…罵ってくださっ、あぁあッ」
ニードルの先端がようやく反対側の皮膚を突き破る頃には、真崎は失神する寸前だった。ビクビクと痙攣するように躰を震わせる真崎の指はだが、乳首を摘まんだままだ。半開きの口から唾液を滴らせ、うっとりと涙を流す。
「離していいぞ」
「は…ひ…、ひたら…しゃま…ぁ」
とろりと恍惚に溶けた表情で返事をする真崎のろれつは、完全に回っていなかった。痛々しいほどに膨れ上がった屹立は、とめどなく溢れる蜜で下生えをぐっしょりと濡らしている。
「ぁ…ぴあす…着けてくらさ…」
真崎が求めるように設楽へと右手を伸ばす。その手を設楽は容赦なく払い落とした。
「玩具の分際で持ち主に触るんじゃねぇ」
「も…しわけ…ごじゃいませ…、ひたらしゃま…ゆるひて…くらさ…」
「黙れ。着けて欲しけりゃ元のようにテメェで脚でも掴んでろ」
返事をし掛けるものの、口を噤んだ真崎はだらりと伸びきった右足をゆるゆると動かして膝を立てると、その足首を自ら掴む。
もう片方の乳首にも設楽がピアスを着けてやると、真崎は幸せそうに微笑んだ。
「設楽様ぁ…お礼に…ご奉仕させてくらさい…」
「その前に、手が動くなら先にする事があんだろうが」
「っ…はいっ、気が付かず…申し訳ごじゃいませ…っ」
ぱたぱたと寝台の上を探るように手を動かして真崎は抜け落ちたバイブを拾い上げると、迷うことなく自らの後孔へと突き立てた。
「ふうっ、ん…ッ、設楽…さま…、お願いします…ご奉仕の許可を…」
縋るように見上げる真崎に、設楽は軽く顎をしゃくった。
左側は拘束されたままで、不自由そうに身を捩りながらも真崎は設楽のすぐそばまでにじり寄る。だが…。
右足で躰をひっくり返したものの、膝をついた事で上がった足首に左手をとられ、自由な右手はすぐに抜け落ちそうな玩具を押さえていて寝台の上に突っ伏したまま真崎は身動きできなくなった。
顔を横に向けて喘ぐだけが精一杯の真崎を、設楽が嘲笑う。
「どうした? せっかく奉仕させてやるって言ってんだ、してみろよ」
「っ…設楽…様…、左手も…外しては頂けないでしょうか…」
「我儘な野郎だな」
「申し訳…ありません…。どうかお許しを…」
懇願する真崎の髪を無造作に掴み上げ、設楽は口許に酷薄な笑みを浮かべてその顔を覗き込んだ。
「馬鹿じゃねぇのか。玩具なら玩具らしく、使ってくださいだろうが」
設楽が言った瞬間、弾かれたように真崎の表情が変わるのが見てとれた。うっとりと溶けた瞳には設楽しか映っていない。
「っぁ、設楽様ッ、分を弁えず出過ぎた真似を致しました」
真崎の上体が半ば仰け反るほど持ち上げられていた設楽の手が、ぱっと髪を放す。支えるものも、自ら支える事も出来ない真崎は顔面から寝台の上に落ちた。
「うぶ…っ」
「テメェは何だ? 言ってみろ」
「設楽様の玩具ですっ。どうか…わたくしを使ってください!」
寝台に突っ伏したまま、愉悦に満ちた声で真崎は懇願した。その髪を、再び設楽の手が掴み上げる。
「どこを使って欲しい」
「っ……貴方に使っていただけるのなら…どこでも…」
「殊勝な振りはよせ。別に俺はテメェを使ってやる必要はねぇんだよ」
「の…ど…、喉を、わたくしの喉を設楽様のペニスで塞いでッ」
髪を引っ張られている痛みなど苦痛ですらないのか、真崎の顔には明らかな悦楽の色が浮かんでいた。
設楽の手が、ゆっくりとおろされる。”使う”と、その言葉通り、設楽は真崎の頭をまるで道具のように自らの雄芯の上におろした。
「望み通り塞いでやるよ。思う存分苦しめ」
真崎の口が半分ほど雄芯を飲み込んだところで、設楽は髪を手放した。当然ながら自分で支えることが出来ない真崎は、一気に喉の奥まで剛直を飲み込む羽目になる。
「うぐッ…え゛ぁ、う゛ッ」
一気に耳まで赤くなるのが設楽にも見てとれた。息が出来ない苦しみはどれほどのものだろうかと思う。あっという間にボタボタと唾液が下肢を濡らしていくのを感じながら、設楽は無表情に真崎の頭を見下ろしていた。
背を震わせ、次第に声すら出せなくなっていく真崎の髪を、設楽は掴んで持ち上げてやる。
急速に流れ込む空気を貪り、咳き込みながら息をする真崎の頭を、だが設楽はすぐさま自らの雄芯の上におろした。モノのように扱えと言うのなら、最低限呼吸をさせてやればいいかと、ぼんやり思う。何せ真崎は、そのために設楽を選んだと、そう言ったのだから。
小さく喘ぐ真崎の髪を掴み上げ、呼吸をさせてはまた喉を塞ぐ。そんな行為を繰り返しながら、設楽は感情のこもらない目で真崎をじっと見ていた。
真崎は、人を見る目はあるのだろうと、そう思う。確かに、設楽は人を物のように扱う事が出来る。興奮して我を失うような事もない。
既にぐったりとされるがままになった真崎の顔を覗き込めば、閉じる事を忘れた口から舌がだらりと垂れ下がっていて、とうに理性の欠片もない事が窺えた。
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