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蓮は何も聞いてこなかった。 俺の様子がいつもと違うと気づいていながら いつもと同じように全部与えてくれた。 相変わらず身体には誰かの残した痕跡。 でも今日はそれを見てホッとする。 俺の頭の中を誰が占領していても 蓮はそれを責めたりしない。 蓮にとって俺は、この痕を残した人と同じ ただ肌を合わせて、気持ちよくなって 溜まった物を一緒に吐き出すだけの存在。 蓮は俺にそれ以上を求めてこない。 「っもっと…もっと!」 腰が浮くほど抱えられて 激しく打ち付けられて 頭が真っ白になる。 そう、そのまま… 頭の中で勝手にリピートされる あの会話を消して 「ああーーっ……!」 ・ ・ シャワーを浴びて出ると、キッチンで 蓮が慣れた手つきでフライパンをふっていた。 「いい匂い、ナポリタン?」 「おお、腹減っただろ」 ナポリタンは前にも作ってもらった事があった。 俺が気に入ってたのを覚えてたんだろう。 蓮はこれまでも何度かご飯を作ってくれた。 そのどれもが凝った物ではなかったけど ちゃんと美味しかった。 俺が傍らに立って覗きこむと 蓮がソーセージをひとつ摘まんでフーフーと 息をかけて冷まし、俺の口に入れる。 「ウマイ」 「そっち、もう消して」 パスタを茹でてる鍋を顎で示す。 皿出して、お茶入れて…俺は指示された事を 淡々とこなして すぐにナポリタンは出来上がった。 「蓮のナポリタンめっちゃウマイ!」 考えてみれば昼からまともに食べてなくて めちゃくちゃお腹が空いていた。 ガツガツ食べる俺を、いつものように 蓮が目を細めて満足そうに微笑んで見つめてる。 「和真それ好きだよな」 「うん。今度教えてよ」 「…教えない~」 「なんだそれケチ」 「食いたくなったら来なさい」 蓮は半分冗談のように笑って言った。 「餌付けかよ」 俺も笑って返した。

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