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20. 2
落ち着いた、上品な身なりの青年は
横断歩道を渡りきり、和真に駆け寄ると
和真の頭をポンポンと優しく叩いて、何かを
嗜めている。
和真は、一瞬だけ肩をすくめて謝るような
素振りをすると、すぐに目を細めて笑った。
ー ああ、やっぱり和真だ!
見間違いじゃない!
それから彼は和真のお腹に優しく触れる。
和真も一緒にお腹を撫でて、手を繋いだ2人は
ゆっくりと川沿いを歩き出した。
ー ……そうか。そうなんだ。
和真の纏った長めのスプリングコートの下に
見え隠れするお腹が、膨らんで見えた。
ー …幸せなんだな。。
勝手に顔がほころんだ時、後ろの車にクラクションを
鳴らされた。いつの間にか信号が変わっていた。
クラクションの音に驚いたように、2人は一瞬
こちらを見た。
俺は車を発進させて二人の横を通り過ぎ
バックミラーで、もう一度2人を見ると
和真がじっとこちらを見ているような気がした。
「…ソイツ俺のだったんだぜ…」
そう呟いて1人で笑った。
一緒に歩く“彼”が、和真がずっと恋していた
“友人”と違うことはすぐに気づいた。
以前1度だけ会った“友人”は、俺と身長が
変わらないくらいだったけど
今日一緒の彼は、和真とそれほど身長差が
なかったから。
ー 新しい恋ができたんだな…。
“友人以上恋人未満”の関係から
彼はお前を引き剥がしてくれたのかな?
自分ができなかった事をやってのけたであろう
その彼に少しの嫉妬を覚えた。
あの時強引に和真を連れ去っていたら
そこに居たのは自分だったかもしれない…。
もう一度バックミラーを見た。
もう遠く、小さくなった2人がかろうじて見えた。
薄いピンク色の景色すらも
2人を祝福してるようだ。
手を繋いで歩く姿が、春の麗らかな日に
悔しいほどよく似合って、不幸な事など
2人には何もないように幸せそうに見えた。
「よかったな」
いつまでも幸せであってほしいと思った。
誰よりも。
自分の分まで。
高く澄んだ青い空がずっとお前の上に
続きますように。
~ 完 ~
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