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第2話

ピンクの壁紙に安っぽいシャンデリア。テレビはうちにあるのより3倍ぐらいは画面がデカイ。風呂はうちの2倍かなあ。アメニティでいつも置いてある薔薇のバスソルトが意外と気に入っているから、必ずバスタブに投入する。男同士でも何も言われない勝手知ったるここのラブホテルは今週は3度目だ。 「ね……、レオ、俺さ、もう……限界」 彼の脚の間に体を滑り込ませて正面から抱き締めた彼の首元から、ふわりとボディーソープの香りがした。 「ユウくん、そういう時。何ていうんだった?」 後ろに廻した指で彼の解れて柔らかくなった入口を指の腹で押すと、誘うようにそこが痙攣する。 「……入れて」 震える声が、か細くて可愛い。 「何を?」 淡々と話す俺の首に回す腕に力が込められるのがわかった。 「レオの、それ」 エッチな癖にこういう恥じらいをされるとなかなかにクるものがある。仕事とはいえ、楽しまないと損だ。 「仕方ないなあ、今日はそれでいいや」 「はや……く」 揺れる腰に手を滑らせて、薄い唇に軽くキスをしながら押し倒していく。体を2つ折りにして恥部を晒すユウくんのそこは、期待と興奮で歓喜しているようだった。 「今日はね、アキって呼んだらダメだよ」 風呂上がりのまだしっとりしている前髪を撫で付ける。目元が薄ら赤く、男前はこんな時も男前なのだなあとぼんやり思った。 「なんで……っ」 「ユウくんは俺に抱かれてるんでしょ?他人を思い描きながらセックスされるの、今日は嫌だなあ」 ユウくんは煽るような上から見下すような視線がお好み。 「……」 「でもね、アキに俺らのこと。見られているって思いながらヤってみようか」 一度落として飴を差し出すと、嬉しそうに目を輝かせる可愛い所がある。 「ん、ふ……あ……、」 前より後ろを弄って、ドライでイクのが最高に好きなんだそうだ。 「アキに、君の恥ずかしい所をいっぱい見せてあげて」 赤く染まった耳が、更に赤みを増す。 「アキ、すき、おれをみて……、すき……」 自ら腰を振って囁く彼の腕を掴む。 俺じゃない誰かを見ている彼を、俺はゆっくり瞬きをしながら見つめる。 俺はホモじゃないけど、仕事上男とも寝る。意外と入れたがる客よりも入れて欲しがっている客の方が多いから、あまりネコはやった事がない。 「ユウくん、気持ちいい?」 「う、……んっ!」 細いわりにはしっかり筋肉が付いていて惚れ惚れするような体の筋を指でなぞると、彼の先端が痙攣してとろりと白濁とした液体が腹に落ちた。 「あれ、射精するなんて珍しい」 口元に手の甲を当ててバツが悪そうに目をそらす彼の瞼に唇を落とした。 「アキに見られてるって思ったら……ちょっと、」 「可愛いね、ユウくん」 彼の胎内から引き抜いて軽く処理をして隣に転がる。ラブホの埃っぽいシーツが冷たくて気持ちいい。 「……うっせえよ」 「可愛いよ」 背中を向けて横を向いてしまった彼に、ぐちゃぐちゃになっていた布団を引き上げて肩まで掛けてやる。 「レオさ、そんなことポンポン言うから客がガチになるんじゃねえの」 頭が動いてちら、とこちらを片目で睨まれた。 「本当のこと言ってるだけなんだけどな」 「……ふーん」 目が泳いで布団に潜り込んでしまったユウくんを追いかけて体を両手で掴む。 「風呂。一緒に入ろ?ローズの香りにしてあげる」 俺を買う人間の理由は様々。 ただの性欲処理目的なら気は楽なんだけれど、ユウくんみたいに好きな人の身代わりを求められることもある。 この身代わりってやつが嫌いじゃない。 「……レオが俺を綺麗に洗ってくれんの」 「して欲しい?」 「…………うん」 ベタベタに甘やかして優しくして、俺を通り越して好きだと言われる。 恋人ゴッコで触れる他人の体温は気持ちが良い。

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