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俺に1週間をくれるか、くれへんか

 平凡な容姿と平凡な能力しか与えられていない僕は変わり映えしない生活を続けて、静かにおじいちゃんになるんだと思っていた。 なんとか1日をやり過ごして 友達も恋人も出来ずに淋しい孤独のまま。 ずっと闇の中。   でも、一筋の光が差し込んだ。 それがどんどん広がって虹になり、僕を包む。 『大丈夫、君は1人じゃないよ』って。 救ってくれたのは1匹の妖精と6人の小人だったんだ。    『ほい、お疲れさん……今日はありがとう』 バイト終わりに鮭弁当とお茶を買った僕は軽く頭を下げ、コンビニを出た。 家に帰ってもやることがないから、ただのんびりと大通りを歩いていく。 店が並んでいるけど、ほとんどシャッターが降りている……昔は賑わっていたんだと先輩たちが話していたな。 まぁ、ここ出身じゃないから本当のことは知らないけど。  僕……佐藤平太(さとうへいた)はそこそこの会社で働く両親から生まれた1人息子。 親と先生から『とりあえず大学は出た方がいい』と言われて入った四年制大学に通い、コンビニのバイトでアパートの家賃と生活費を稼ぐ毎日。 黒くてミディアムな髪型に、へのへのもへじで書けそうな顔、服装は基本的に白いTシャツと藍色のジーパン……いわゆるモブ。 自分なんかどうでもいいと思っているんだ。 でも、一生に一度の20歳の誕生日だけは、奮発してはしゃぎたいと思っているものの……お金がない。 今からでも短期バイトを始めようかと思うほどジリ貧だ。 今日だって本来なら休みなのに、無理を言ってバイトにしてもらったんだ。  「20歳になったら、何か変わらないかなって期待してるんだけどな」 何気なくぼやいたら、視線の先に求人のフリーペーパーが立て掛けてあるのを見つけ、ちょっとついてるかもとニヤつく。 「やっぱり1000円となると、力仕事だよな」 青い冊子のページを繰ると、やっぱり頭も力も並々な僕には敵わない仕事ばかりが並んでいた。 「げっ……あそこの喫茶店、月額サービスを始めたくせに給料安っ!」 ああ、ついてないや。  というより、月額サービスって流行りだよな? この街でも始めた店が何件かあるとか。 「月額サービスってどうなんだろうな……使ったことないかも」 冊子から目を離して、ちょっと計算してみた。 確か、喫茶店のコーヒー飲み放題が月3000円だから、1日1杯で100円、それでーー。  「なぁ、坊主」 いきなり、トンと肩を叩かれた。 「はいいっ!」 ビクビクしながら振り向くと、タバコを咥え、黒色で肩まで付くくらいの髪にパーマがかかった男性がクククッと笑っていた。 「そんなに驚かせたか? そりゃ、すまんかったな」 今度は肩を2回叩いてくる彼。 目尻に皺を寄せても完全には潰れないくらいの大きい瞳に、口の上下に棚引く髭がある彼はワイルドなイケメンな気がする。

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