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ブリーフ派

 おにぎりを食べ終わってコップに空けたノンアルコールビールを飲むと、モトも同じようにお茶を飲んだ。 「では、名前の通りに求める都へ行く準備をいたしましゅ」 黒縁メガネを外し、蝶ネクタイからベストと上を脱いでいくモト。 ちょっと肉付きが厚い身体のラインが白いYシャツから透けて見えて、思わず息を飲む。 「しょんなに、ジッと見られると……恥ずかしいでしゅ」 モトはまた顔を赤らめる。 今度はカチャカチャとベルトを外して、黒いズボンを脱ぎ、白いブリーフが露わになる。  「モト、ブリーフ派か……僕と一緒だね」 僕が共感すると、アタッシュケースから出した小豆色のハンカチで首元を拭いていたモトははひぃ、と言って顔をゴシゴシこすり始めた。 「平太しゃん、これ……とぅけてくだしゃい」 モトはプルプル震えながら、僕の横で小豆色の首輪を差し出してくる。 「これからぼくちん、平太しゃんの犬になりましゅ……一緒に快楽の楽園へいきましゅよ」 言ってることはよくわからないけど、これがモトなりの癒しなんだろうなと思い、首輪を受け取った。  モトは僕の横にストンと座り、首元を見せるように目を伏せながら、あごを上げる。 口元にある黒い点と目が合い、色っぽいなと思いながら輪を首に通して、長いヒモが前に来るように止めると僕はモトを抱きしめた。  「あっ、あの……」 戸惑った声が聞こえたのも気にせずに、モトの頭をヨシヨシと撫でる。 「ぼくちん、優しくしゃれると……どうしたらいいのか、わからにゃく、なるんでしゅ」 力なく、バニラアイスみたいな甘さで話すモトに自分の中に庇護欲があることを気付かされた。 「優しくなんかないよ……ただ、サディステックな自分が出せないだけ」 「犬って言ってたから、昔飼ってた犬にこうしてたなと思って……違う?」 ラブラドールレトリバーのトモは共働きの両親が淋しく無いようにともらってきた保護犬。 最初はビクビクしていたけど、一生懸命世話をしたら懐いてくれたんだ。 トモに会いたくて走って家に帰っていたし。 人間といるより気楽だったし。 なんか同じ匂いがしたんだよね、モトから。 だから、トモを反対にしてモトにしたんだ。 なんて思ってモトから離れながら顔を見ると、涙袋が大きい瞳は見開いた後、三日月状に細くなった。 「平太しゃんは面白い人だ……ドSの人にこのやろうを言う人はいにゃいからね」 モトは口も三日月状にしたから、口元のホクロが主張されてより魅力的に見える。

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