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5年後
大学を無事卒業した僕は中臣グループで急成長中のIT部門の国際課に配属になった。
"Best regards.(何卒宜しくお願いいたします)"
取引先へのメールを打ち終わり、無事に送信すると、ふぅと息を吐いた。
今日はいつも以上にテキパキかつ丁寧に仕事をする……だってプレミアムフライデーだから。
「ユー、帰るで!!」
15時前にそう聞こえてきたから振り返ると、ビジネスショートなのに金歯が光る根切社長だった。
「お疲れ様です、根切社長」
まじめに頭を下げたのに、その頭を鷲掴みにされた。
「今からはマニや……ユーアンダースタンド?」
金歯を光らせて、雑に撫でるマニ。
「みんな待ってるから、はよ」
しびれを切らしたエツがマニの背中からひょっこりと出てきて睨んできたから、僕は挨拶をして手早く部屋から出た。
スマホを開くと5件の通知、しかも同じアプリからだった。
‘‘そろそろ伸びてきたから切らして?’’
オレンジの車がアイコンだから、これはカイリ。
‘‘一緒に気持ちよ~くなろうね’’
変わらずひよこの僕のアイコンはサガ。
‘‘今日もぐちゃぐちゃにしちゃうよぉ( ´∀`)"
過激な口説き文句と絵文字の主のツクは梨のアイコン。
‘‘いつまでも待ちましゅよ、ぼくちん’’
ピンクのブタのおしりのアイコンはもちろんモト。
個人のも作ったのに、連絡が多いのはなぜか『\おいで屋/』の方。
個人はそれぞれ違うから。
サガとキヨは本当に友達になり、遊びのお誘いメールが多い。
ツクは毎日夜に電話するから、電話マークばっかり。
対照的にモトは言葉責めのメッセージばっかりだし。
カイリはニューヨークから帰ってきて、出張美容師になっても散髪のお誘いをしてくれる。
マニとエツは仕事の相談が多いかな。
「おお……帰るんか」
休憩室で缶コーヒーを飲んでいるキヨに出会う。
「関本部長はまだですか?」
会社の中だから、敬語でしっかり話す。
「まぁ、残業になりそうやけど」
冷たい目付きで言うキヨ。
「は、はやくペーターにとかしゃれたいけどな」
少しうつむいて、ボソッと言ったキヨの耳は真っ赤だった。
「社長命令や! 関本功李(せきもとこうり)、早退せえ!!」
マニは金歯を光らせるようにニイッと笑う。
「いやいや、あかんやろ」
キヨは苦笑いをする。
「うっさい、はよいくで」
またひょこっと出てきたエツがキヨにしがみつき、強制連行した。
「さっ、楽しみは仕事の後でだ!」
小さく、でも力強くつぶやいて、3人のお兄さんを従え、胸を張って歩いていった。
<おわり>
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