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第十三話「零れる愛情、いつまでも」
繋がっている。心も、体も。それだけで達してしまいそうな感覚を覚える。こんなことは初めてだ。零れる言葉の声色にも愛情が自然と溢れる。
「…辛くねぇか?ゆっくり動くから、辛かったらちゃんと言え」
「何か…変や、今日は…」
小さく震えながら井上はそう言うと、己の張り詰めた自身の括れに指を添え強く握った。その行為から察するに、きっと浅野と同じ状況なのだろう。とてもその姿が愛しく見えた。浅野は腰を折ると額や頬にキスを降らせる。暫しすると一気に腰を引いて一気に最奥を穿った。
「っ…ひ…ンッ」
井上が自身を握る指を緩めた刹那の出来事だった。呆気無く白濁を零し、己の腹を白く汚していたのだ。たった一回の抽送で果ててしまった恥ずかしさに井上は手で顔を覆う。その手の甲に唇を緩く押し当てながら浅野は言葉を紡いだ。
「前言撤回。ベッド以外でも優しく出来る訳ねぇわ」
「っ…ん…ンーっ…ぅ…」
結合部を更に深く繋げる様に腰をぐいぐいと押し付けながら耳元で囁きを落とす。それだけで堪らないと言う様に両手の中から甘く短い声が断続的に響いた。井上は震える手を伸ばして次は安易に達しない様に強く自身を握っている。その上から優しく握り込むと浅野は腰を引いては送りを繰り返した。粘着質な音と肌がぶつかり合う音が混じって室内に響く。耳に入るそれにさえ二人は間違いなく興奮を煽られていた。必死に堪えている井上にまた一つぽつりと浅野はぽつりと落とす。
「何回でもイきゃいいだろ…我慢すんな」
「――っン!」
そろりと重ねた手で自身を掴む井上の手を指先から絡め取ると、それを机に押さえ付けて強く最も良い箇所を強く抉った。堪らず井上は果てる。構わず浅野は角度を変え、後ろを向かせて貪る様にがつがつと穿った。あまりにも強い快楽に涙を浮かべながら井上は浅野が与えるそれに堕ちていく。片手を臀部に回し、ゆるりと尻肉を掴み広げながら懇願するように甘い声を吐いた。
「もっと…詠斗…っ、詠斗のこと感じたい…」
「わざとだろ、テメェ」
撓る背から腰のライン、指からはみ出た柔らかさを物語る尻肉。全てが浅野を興奮させ高ぶらせていく。自分の快楽を求めて何度も何度も次第に早く突き上げれば、尻の割れ目に滑らせ外で白濁を零し、漸く浅野の方が果てた。二人の乱れた息遣いが不規則に室内に充満していく。邪魔をするものは何もなく、それからも二人は何度も果てた。
「愛してる…凛…」
乱れた衣服を整えながら二人はぽつりぽつりと会話を交わしていた。
「詠斗」
「何だよ」
先程から数回これが繰り返されているが一向に変わることのない内容に浅野は少し苛立ちを見せ始める。ずっと井上は名を呼ぶだけでそこから先に言葉が待っている様子もない。何が言いたいのか、考えているのか、浅野には理解出来ずにいた。それ故の苛立ちなのだろう。
「詠斗」
「だから何だって…」
「そうじゃないでしょう?詠斗」
痺れを切らした浅野は言葉を強めに変えて問い返す。すると、違う言葉が返ってきた。そこで漸く浅野は井上の意図を察することが出来た。とても簡単なことだったのに、気付かなかった方が可笑しいくらいだ。
「……何だよ、凛」
「ふふ、宜しい」
満足そうに薄い唇が緩やかに弧を描く。名前を呼ばれたのが余程嬉しかったように。その様子をみて浅野も小さく笑みを口端に滲ませた。しかし、辛そうに腰を擦っている。立っているのも少しばかり危ういくらいだ。容赦無く井上の体を貪った浅野からすれば流石に少しばかり申し訳なさはある。ゆるりと口を開けば心を配る言葉をぶっきらぼうにかけた。
「おぶってってやろうか」
「いいんですよ。この痛みもまた、君と一つになれた証なのかなぁ、なんて嬉しかったりしますので」
「…よくまぁそんな事が普通に言えるよな。恥ずかしい奴」
言葉とは裏腹に浅野は笑みを絶やしてはいなかった。二人の間に流れる空気の柔らかさに心地良ささえ感じている。きっとまだこれからも感じる事が出来るんだろうと喜びさえ溢れてた。そう、二人を邪魔するものはもう何もないのだ。
「帰れるか?何なら家まで送ってってやるけど」
「では、体調不良を装って甘えてしまいましょうか」
片目を伏せながら半ば無邪気にそう告げて来る井上に浅く溜息を吐くと片腕を掴み己の肩へと回しながら浅野はゆっくり歩を進める。
「ほら、戯言はそれくらいにして行くぞ。今晩はアンタの手料理だからな」
「鬼畜ですね。それに俺、他人様に振る舞えるような腕前はしてないんですけど…」
「アンタが振る舞う事に意味があんだよ。いいから歩け」
自分の口から出る言葉は羞恥を生まずとも他人からの言葉に耐性はないのか、井上はほんのり頬を紅潮させた。その様子を意地悪に覗き込んではそっぽを向かれてしまう。
そうやって二人はいつまでも、変わらずに傍にあるのだろう。
これからも、二人のひみつゴトは続いていく。
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