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第十二話「溢れる、越えたい想い」

言葉に比例する様に性急に井上を求めている。半ば乱暴にカーディガンのボタンを外し同様にシャツのボタンも手早く外していく。その動作さえ焦れているのか浅野はぽつりと愚痴を零した。 「たく、脱がし難い服装しやがって」 「脱がされる為に着てるんと違うよ…」 反論の言葉を向けて来る井上の首筋に柔らかく噛み付いた。せめてもの腹いせだ。だが、井上は拒むことなく甘く吐息を漏らしながらくしゃりと浅野の髪を軽く掴み逆手は肩にそっと置く。それを合図に浅野は井上の後頭部に手を回し、浮かせてちょうど髪で隠れるうなじの皮膚に強く吸い付いた。焦る声が井上の口から零れる。 「ちょ…っと、浅野君。痕はあかんて…」 掴んだ髪を遠慮がちながら引っ張るも浅野は止めようとしない。寧ろ離さぬようにと抱き込み更にきつく皮膚を吸った。唇から軽やかな音が立ち漸くそれが離れれば紅く濃い花弁の様な痕が散らされている。長めの前髪に口付けを落とした後互いの額を重ねれば井上は恨めしそうに浅野を見た。そんな表情にも動じる様子なく浅野は言葉を薄く唇ろ重ねながら囁きを落とした。 「アンタはもう俺のモン。誰にも渡さねぇ。だから、アンタも俺を見失うな」 「…狡いわ…」 双眸を伏せる井上の睫毛が震えている。皺を作り寄せられる眉間にそっと口付けを落とすと閉じられた目の端から滴が零れた。すかさずそれを親指で拭ってやるもそれすら構わないといった様子で井上は起き上がり、浅野のシャツを捲り上げて胸元に口付けた後皮膚に強く吸い付いた。濃く、消えないくらいに濃く残るようにと強く吸う。浅野はちりりとした小さな痛みに耐えながらやんわりと柔らかい髪を撫でた。漸く唇が離れれば、同様に花弁が散らされた。そしてやんわりと何度も啄むような口付けを浅野に与えるとキスの合間に言葉を紡ぐ。 「もう、俺以外とキスしたらあかんよ?」 浅野の唇が少し赤味をさしていたからだろう。四ノ宮と唇を重ねた事を物語っていた。 「あー……今のは結構キた」 「え…?っん…」 その言葉の後に浅野は直ぐ様深く互いの唇を繋ぐ。浅野の中で何かが弾けたのだ。再び体を押し倒し、ゆっくりと舌先で唇を割り侵入させ咥内を弄った。鼻孔から井上は甘い時を断続的に漏らしていく。井上からも求めるように弄ってくる浅野の舌に己のを添わせてぎこちなく絡ませた。浅野は薄く双眸を開き窺えば間近に井上の蕩けた表情が見える。それさえ煽られている様に気持ちが昂り絡め合う舌をちゅく、と音を立て吸りながら開けた服をそろりと払い胸に飾られた突起を摘んだ。井上の背に弱い電流が走り自然と胸を突き出す形になる。唇を離せキスで濡れた唇で浅野は吐息に笑いを乗せながら意地悪を吐いた。 「誘ってんのか?」 「…っ、ちゃう…そんなこと…」 浅野は少し体をずらし反対の乳首を吸いながら歯を立ててやると、井上の口から甘ったるい声が漏らされた。確かめる様に中心を布越しに撫でると反応していることが分かる。確実に己の手で快楽を与えているという喜びが浅野の胸に湧き上がった。そして、それにきっと名前を付けるなら、愛だと思った。自分の手で快楽に溺れていく井上が愛おしいと思える。同時にそんな風に出来るのは自分だけでいいという独占欲さえ溢れていた。井上を自分に縛り付けておきたい。自分でなければいけないと思えるくらいに、壊してしまいたい。そんな想いを抱きながら窮屈そうに主張している前を開放してやるべくベルトに手を掛ける。気持ちが焦っているのか、上手く取れなかった浅野の手の上から井上が手を伸ばしベルトを解いた。そんな仕草にさえ一々煽られている。下服のチャックを下ろし前を開けば、反応した自身で膨らむ下着を食んだ。先程の仕草からは予想つかず羞恥が湧いているのか腕で顔を隠している。慣れていないのか慣れているのか分からなくなる井上のそんな所にもまた惹かれている自分が居て少し自嘲した。 「なぁ。名前で呼べよ」 「…え…?」 「浅野じゃなくて、名前。呼んでくれ」 浅野は自分でも驚くほど声が切なく震えていた。最初は何故なのかはっきりと分からなかったが、過ったのは母親と親友の顔。越えたかった。分からない愛ではなく、自分に向けられている愛が欲しかった。次第に僅か視界が歪む。 その時――。 「俺は、罪な奴や。詠斗、君のことを愛してる」 浅野は目を見開いた。確かに井上の瞳には浅野が映っていた。 向けられている。しっかりと自分に。それに応えるように浅野は下着ごとずり下げながら躊躇なく自信を口に含む。溢れる先走りと唾液を混ぜて竿に伝わせれば後孔を濡らしていく。亀頭から根元にかけてしゃぶり上げながらゆっくりと濡れる後孔に指を添え挿入した。異物感に井上が小さく呻く。だが、ある個所を指先で掻いてやれば直ぐに後ろは蕩け始めた。苦しそうな呼吸から甘ったるいもの変化した頃、井上から言葉が次がれる。 「詠斗、来てや…。俺も人間や、我慢出来へんよ」 もう理性の無い蕩けた表情で訴えて来る。それに応えるように浅野は自身から口を離し己の前を開けさせ自信を取り出し己の唾液を先端に塗り付け何度か扱いてから後孔に宛がった。 「二度目…か。ここでアンタとこうするのは」 「今度はちゃんとベットでシてや…?」 「ベットの上ではもっと容赦しねぇけど?」 不適に笑んで見せてはゆっくりと腰を進めていく。繋がるのは二度目。だけど、何かが違った。気持ちも繋がってくような感覚。井上の表情も然程苦しそうではなかった。身も心も一つになるとしたら、こんな感覚なのだろうかとさえ浅野は思っていた。

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