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第86話※
───僕はもう違うって……すでに俺、二番目でも無いって事……?
瞳をウロウロさせて悲しみに暮れる天が、内に在る潤の指先を無意識にキュッと締め付ける。
何もこんな時に、決定的な言葉を言わないでほしかった。
本当は "一番" なのではと勘違いしてしまいそうなほど、天の快感を誘う潤からは感じてはいけない愛を感じた。
だから、分からない。
潤の言動の意味が、とことん分からないのだ。
「天くんはどうなの?」
「それ、は……」
突き立てられた指先が、内襞を優しく掻いた。
ぷるっと腰を震わせた天は次第に頭が冷えてきて膝を閉じようとするも、潤の長い足がそれを阻む。
天にとって一番目となったその人の言動は、「分からない」というよりも「意地悪」にしか聞こえない事に気付く。
あれだけ勇気を出したのに、さらにまだ言わせようというのだから相当だ。
「二番目が、いい……っ。 さっきからずっと、そう言ってるだろ! 俺は潤くんの二番目でいい!」
「違う。 僕の何番目かじゃなくて、天くんにとって僕は何番目なの?」
「……んぁぁっ……潤くん、……っ」
ぐちゅぐちゅと中を掻き回す指が二本に増えていて、躊躇い一つ無く襞を抉られる感覚に、囚われた膝がビクッと強張った。
真っ直ぐに見詰めてくる潤に答えようとしても、返事をさせてくれない指先が意地悪にしか思えない。
与えられる内側からの刺激があまりにも気持ち良くて、虚ろになる思考も邪魔をした。
今が告白のチャンスだと分かっていても、ほんの数回しか機会の無かった強烈な刺激に震え、繋がれた掌に力を込める事しか出来なかった。
同じだけ握り返してくれた潤は、温かな唇で天の細い顎を舐め、じわりと耳元にやってきてゆっくりと囁く。
「天くん。 僕は最後の秘密を打ち明けるのがすごく怖いんだ。 打ち明けたら、天くんは一発で僕を嫌いになっちゃうかもしれない……そばに居ることさえ許してくれなくなると思う」
「な、に……っ? 何なんだよ、その秘密って……!」
「………………」
快楽の波に攫われて忘れていた、潤が打ち明けると言った "秘密" 。
濡れそぼった孔に指を挿れ、天の射精を促し、何なら潤も貫くつもりだったのではないのか。
今さら、どんな事を聞いたって嫌いにならない。 こんなにもそばに居てほしいと思っていたのに、それを許さなくなるなどあり得ない。
告白と秘密と快楽が頭と体をぐるぐると駆け巡り、促されているはずの射精が滞る。
潤の指先は天の秘部を優しく拓き続けていて、襞を擦るくちゅくちゅ音は止まらない。
天のフェロモンを止めるため、射精だけを促そうとしていた手付きとは明らかに違っている。
「あ、っ……そ、んな……っ、んんっ……んぁっ……!」
「僕は卑怯者にはなれない。 ……天くん、イっていいよ」
一心に天を見詰めていた潤の瞳が、下腹部に移動した。
二本の指を素早く挿抜し、内部で僅かに膨らんだ男性にしか存在しないそこを重点的に擦られる。
潤の舌先が、胸の突起を舐めた。 強弱をつけて吸われもした。
小さな嬌声を上げる天が悶える毎に、潤の匂いが濃くなっている。 彼を惑わすつもりで居た天の方がその匂いと上下の愛撫にやられ、小ぶりな性器が腰の動きと共にぷるんと揺れた。
「ん、ん、んっ……っ、はぅぅっ───」
ぐに、ぐに、と前立腺を一際強く押された直後だった。
我慢出来ずに背中を仰け反らせた天は、ぷるぷると腰を震わせながら白濁液を自身の腹に飛ばしていた。
しかしまだ、潤の指先は収縮を繰り返す秘部に入ったままである。
動かしはしないが、抜く様子もない。
瞳を瞑った天の目の前が黒から白色に変わって脱力し、ぺたんと布団に背中を付けた。
「……はぁ、……はぁ、……っ」
「天くん、そのまま聞いてて。 マフラーを巻いた理由、なんだけど……」
「…………ん、?」
まともに聞いていられる自信は無かった。
けれど潤が天の肩に頭を乗せて項垂れたように感じたので、薄く瞳を開いて彼の言葉を待つ。
今の今まで自身の嬌声と吐息がうるさく、賑やかだった鼓膜が途端に静けさに包まれると、やはりどうしようもない羞恥が襲ってきた。
天が絶頂を迎えても抜かれる事のない指先に少しでも神経を集中させてしまわないよう、この静寂を利用して無になるしかなかった。
どんな事を聞かされるのか、たとえ聞いたとしても脳がそれを処理できるほど正常な働きをしてくれるとは思えない。
「僕ね、……」
「…………うん」
繋いでいた手が解かれる。
よほど言いにくい事らしく、天の瞳を見ないようにしている潤の視線が腹に散った精液に注がれた。
ここまでしておいて、思わせぶりな愛をチラつかせておいて、言えないなんてナシだ。
沈黙が続くと、さらに言いにくくなる。
秘部を指先で犯されたままの天が、先を促そうとした次の瞬間……潤の口から思わぬ事を告げられた。
「僕、…………αなんだ」
───………………?
全裸にマフラーを巻かれている天は、自らがそんな姿である事をすっかり忘れていた。
首を傾げ、潤の言った台詞を頭の中で反芻してみる。
ぱち、ぱち、と瞬きを繰り返し、指先を突き立てたまま天の体をひっしと抱いてきた、潤の色素の薄い髪をただ見詰めた。
「……え、…………? ……α……?」
「……そう。 天くんが自分の性別と同じくらい大嫌いな、αなんだよ……僕は」
「…………っ!」
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