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第七章・6

「樹里は自分のことを、私のペットだと思っているのか?」 「……」 「私は君をペットだなんて、思っていない」 「綾瀬さん」  ぎゅう、と樹里がしがみついて来た。  濃密なフェロモンに、酔いそうだ。  痺れる頭で徹は、樹里に意地悪を言った毛利を呪った。 (またあいつ、余計なことを吹き込みやがって!)  近いうちに、文句を垂れに行かねばな、と恨んだ。  しかしおかげで、発情した樹里を味わえる。  ヒートしたΩを抱くのは、初めてだ。 (おそらく、私を繋ぎ止めようと思って、わざと薬を飲まなかったんだな)  その身体で、絡めとろうと思っているに違いない。  樹里のちょっぴり黒い部分を伺えたことを、徹は嬉しく思った。 (じゃあ、こちらも少し意地悪になってみるか)  徹は樹里の耳元に、唇を寄せた。

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