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第八章・8

 ランチを終えて社に戻ると、社長室に大きな包みが届いていた。 「何だ、これは」 「あ! 僕がお願いしていた荷物です」  それは、樹里が描いた絵画だった。  80号の大きなカンバスに、樹里は3ヶ月間の想いを込めた。  徹への想いを、表現したのだ。 「以前、ここに飾りたいといっていた、樹里の作品か」 「ちょっと、恥ずかしいですけど。よかったら、どうぞ」  さっそく梱包を解こうとする徹を、樹里は慌てて止めた。 「僕が後でやりますから。絵を飾るって、結構めんどうなんです」 「では、慣れている樹里に頼むか」 「はい」  楽しみだな、と徹は廊下を歩きながら考えていた。  午後からは、調整会議が入っている。 「会議中に、絵のことを考えたりしないようにしなくては」  鬼の社長が気もそぞろ、では示しがつかない。  それでも、樹里のことを思うと頬が緩んでしまう徹だった。

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