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おまけ2

 side:ルード  僕が身ごもってから、アルフレッド様は僕に会いに来てくれる回数がめっきりと減った。  使用人の噂では、本命の方を東の棟へと囲われていると。  子どもを孕み、僕は用済みになったのかもしれない。  アルフレッド様がそう言ったわけじゃない。  けど、最初から分かってた。アルフレッド様は僕など見てはいないのだと。  何故、僕とアルフレッド様は結婚為されたのだろう?  何時までも、アルフレッド様は優しい。優しすぎて勘違いをしてしまいそうになるほどに。  ……僕が、子供を産むから優しいんだと思う。  もしかしたら、東の棟に居る方は子供を産めない方なのかもしれない。  どんな方なんだろう?あの塔に居る方は……。  そう言えば、レイモンドがこの屋敷を仕切るようになってから、兄さんを見てない。  兄さんは、辞めたって聞いたけれど、本当にそうなのかな?  だって、兄さんはアルフレッド様の特別だから。  そして兄さんにとっても、アルフレッド様は特別な人。  小さい頃から、アルフレッド様の側に居るために頑張って来たんだと父様は言ってた。  アルファがアルファに惹かれるなんて、アルフレッド様はどれだけ凄いアルファなんだろうって、父様にお話を聞いていた時は思ってた。  兄さんはいつだって完璧で、凄いアルファだったから。  だから、アルフレッド様に僕が選ばれたときは唯一、兄さんに勝てたと思ったんだ。  でも、本当に選ばれたのが僕じゃないとしたら……本当に選ばれたのは、誰? 「奥方様、寒いので中に戻りましょう?」  お体に障ります、とメイドが言うから外でお茶を飲んでいた僕はその言葉に従って素直に部屋の中へと戻る。  そう言えば、と思うけれど、僕はオメガと分かる前から、ずっと人にこうして世話されて生きて来たと。  それが普通で、当たり前になっている。  だって、僕は高位のオメガだから。それが、当たり前だと父様も言った。  それを、疑問に思ったことは無かった。  下賤なオメガとは違うのだと。  数か月後、子供を産んだ僕は、衝撃的な言葉を突き付けられた。 「離縁してほしい」 「……えっ?」  聞き間違いかと思った。  僕の産んだ子供が、この腕の中に居て、それを祝いにやって来たアルフレッド様が居て、幸せなんだって思ってた矢先の出来事……。  聞き返せば、もう一度済まない、と頭を下げたアルフレッド様に同じセリフを言われる。 「どう、してですか?僕、何かしましたか?」 「違う。ルードが悪いわけじゃない。ただ、私の問題なんだ」  本当に、申し訳ない、という顔をしてアルフレッド様に、腕の中の子供を奪われてしまう。 「クーリッド氏には、私から話す。ルードの再婚相手を見つけるのを手伝ってもいい」 「ちょ、ちょっと待ってください!何で、何で僕が離縁を……」  受け入れる前提になってるのか、それを問う前に、被せる様に済まない、と言ってアルフレッド様は出て行ってしまわれた。  言い逃げなんて、ひどすぎる。  産んだはずの子供も、この手に無いまま、僕はどうすればいいのだろう?  何もない部屋で、僕は途方に暮れる。  それから一カ月もした後、僕は本当にアルフレッド様に離縁され、クーリッド家に戻された。  本当に、何もなくなってしまった……。  家に戻ると、父様に暖かく迎えられた。母様も、泣きそうな顔をしてた。もっと、離縁された事を叱咤されるかと思っていたのに。  どうしてだろう?と思っていると、家の中に兄さんの姿がない。  何で?と首を傾げるものの、答えをくれる人は居ない。 「お前だけでも、戻ってきてよかった」  そう、父様がつぶやくのを聞いてしまった。  どういう事なの?  兄さんは、何処に行ったと言うの?  誰も、僕の疑問に答えてくれないまま、僕は婿養子を取ることに成った。  勿論、アルファで番のいない、僕をちゃんと愛してくれそうな優しそうな年上の人。  結果的に、僕は幸せになった。アルフレッド様の屋敷に居るよりも。  でも、今でも時々思い出す。  あの屋敷の、東の棟にいた方の事を。  もしかしたら、兄さんかもしれない、と思ったけれど、あり得ないと首を横に振る。  だって、兄さんもアルフレッド様も、どちらもアルファなんだから……。

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