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第24話 貴方とならどこまでも END
部屋に戻ると、誠実にベッドへと押し倒された匠。
はぁ、と長い、それは長い溜息を誠実が吐くものだから、匠は本当にどうしたのだろう?と首をかしげてしまう。
「誠実?」
「……あぁー、怠い……」
沢山のアルファやオメガが来るために、番になり匠にしかそういうフェロモンを感知されなくなったとはいえ、不安だった二人は、自分たち用に調整された抑制剤を飲んでいた。
それを押しのけて、威嚇ともとれるフェロモンを出したのだ。
誠実はとても無理をしたのだろう。それが分かり、匠はお疲れ、と誠実の頭をなでた。
「うぅー……匠ちゃん相変わらず、いい匂い……」
「変態かよ……」
呆れながらそう返せば、誠実はへへへ、と笑う。
暫く二人でそうしているうちに眠ってしまっていたらしい。
気が付けば朝で、昨日の体制のまま、上に乗っている誠実の体を叩き起こす。
「誠実……、誠実、起きろ……誠実~?」
「ぅ……、うぅ……す、すむ、ちゃん?」
「あぁ、おはよ」
「おはよー……うわっ、重かった?ごめん」
「いいよ。それより、風呂入りに行こう」
昨日のスーツを脱ぎ捨てて、朝風呂のために着替え、部屋を出た二人。
大浴場は、案外人が少なく、ゆったりとすることができる。
「はぁ、染みるなぁ」
「おっさんみたいだよ、それ」
少し熱めの風呂につかり、はぁ、と息を吐けばくすくすと誠実に笑われる。
それにしても、と天井を見上げながら呟く匠。
「帰ってきて……あんまり良かったとは思えないな……」
「あぁ、うん。それについてはどーかん」
帰ってきてよかったとは、あまり思えない。
色々あったせいで、返ってきてよかったなぁ、と思うことよりも事件になったことの方が大きく占める。
日本という国は、厄介ごとの起こる国だ、と誠実と匠は思った。
「昨日、本当に良かったのか?」
「ん?あぁ、俺の友達の事?大丈夫だよ、だって俺の友達、だからね」
誠実が、俺の友達、という部分に力を込めて言うから、あはは、とから笑いしてしまう。
類は友を呼ぶ、その通りなのだろう。
匠も思っていないだけで、似たり寄ったりな友達が多い。
ふぅー、と再び息を吐き、そろそろ上がるか、と誠実たちは風呂から出た。
途中で、水分を補い、着替えてブッフェへ。
少し変わった料理にも挑戦してみたが、美味しくいただけた。
特に、デザートとして取ったスイカを使ったケーキなどはスイカとケーキが結びつかない分、どんな味がするのかと思えばとてもおいしくいただけて、驚いた。
そして、二人はキャリーを引きながらチェックアウトをしてホテルのロビーを出る。
出たところで、雄大が待ち構えていた。
「お前、仕事は?」
「今日まで休みだ。ほら、乗れ」
飛行場だろう、と雄大は後ろを指さす。
タクシーに乗るよりは、安上がりだが……と雄大をみて、匠は少し唸ってから、わかったとトランクに荷物を押し込み、後ろの席へと座った。
「昨日、あれからどうなったんだ?」
「どうもこうも、あれからすぐにお開きになって、飲みなおしたい奴だけ集まって最上階にあるバーで飲んだり地下のカラオケルームで歌ってたりだな」
「ふーん?」
「あの相崎は、先に帰ったみたいだ」
あっそ、と誠実が返す。それは本当に興味のないような返事。
いや、相崎と聞いて覚えていただけましなのだろうか?
「次はいつこっちに来るとかあるのか?」
「いや?俺たちとしては、こっちにいるよりも、あの国にいた方が平和だって事に改めて気づかされただけだ」
その返答に、雄大は苦笑する。
「お前らにとってはな……また、今度は幸助も連れてそっちに行くわ」
「それは、良いけど……休み取れるの?」
「その辺の心配はしなくていい」
にやりとわっるい顔をして笑う雄大に、マネージャーがかわいそうだな、と一瞬だけ同情した。
そうこうしている内に、国際飛行場へと付き、雄大の車から荷物を下ろす。
雄大とは、ロータリー部分で別れた。なんでも、これから幸助とデートらしい。
夫婦となって、誠実たちと負けず劣らずいちゃいちゃしている。
悪かったな、と言えば俺がしたかったことだから、と返されてしまう。
多分、雄大は不安なんだろうな。誠実と匠がいつまでもつか。
そんな心配はいらないというのに。
フライトの時間になって、搭乗口より乗り込む。
席はビジネスではなく、ワンランク上の少し広めの所。
隣はもちろんお互いで、全員が乗り込むと時間通りに飛行機は空に舞った。
時差の関係もあり、窓を閉めて眠りにつこうかという時、誠実が笑う。
「ふっふふっ」
「どうした?」
「いや?ただ……やっぱり、匠ちゃんと二人の方がいいなぁって思ってね」
「なんだそりゃ」
誠実にとって、これから帰る場所は昔からの知り合いが居ない分、匠と二人きりだと思える場所、なのだろう。
だからこそ、そこが平和だといえる。
だって、誠実には匠しかもう、要らないのだから……。
「匠ちゃんがいるなら、どこまでも、どこにだって行けるのに……ね?」
「……俺だって、同じだよ」
その顔はどこまでも穏やかだった。
END
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