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第1話

 ついにリョウの職場もテレワーク体勢に入った。  企画・開発の部署なので、打ち合わせはテレビ会議で事足りるし、調べ物や個人的な作業も、セキュリティにさえ気を配れば、家のパソコンで充分間に合うのだった。  とはいえ、当然出勤しているときのように拘束されっぱなしということはなく、自分のペースで仕事を進められれば割と空き時間もある。そして、人と会わない。コーヒーを飲みながらの雑談もない。少しばかりの空虚な感情を持て余す。  世の中がこんな状態の中、在宅で仕事を続けられるというのは、本当に幸いなことだと思うリョウだった。だって、現場に赴かないと仕事にならない業種はいくらでもある。例えば――  観光業界はエンターテインメント業界と並んで一番の痛手を負っているといえよう。アヤが副支配人を務めるホテルも例外でなく、本当ならば卒業旅行や春休みを利用しての家族旅行などでそこそこにぎわうこの季節、館内は静まり返っている。一か月ほど前から予約キャンセルが相次ぎ、この先の予約も前年比の三割にも満たない。  それでも、休んでいられはしない。逆にイレギュラーの対応に追われて忙しい。客室稼働率の予測を毎日更新し、無駄なく、必要な客室数と人員を用意しなくてはならない。  それでも接客の仕事はほぼないに等しい状況となったので、普段ならあり得ない定時退勤が常となった。いつもは寝に帰っているだけのような自室に長くいると、どうにも手持ち無沙汰だ。支配人昇格試験の勉強をするのにちょうど良い時間を与えられたと思えばいいのだろうか。

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