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第16話 ストーカーさんこんにちは 3

自由になった俺の脚を徐ろに掴んでボトムスを抜き取り左右に広げる奏汰に睨まれて、嫌な予感で冷や汗が出る。 「・・・蓮くん、気持ち良かったの?」 「えっ、イヤ、全然!?」 思わず否定するけど、屹立の先に触れて離れた奏汰の指に糸を引く先走りが俺の嘘を暴いてしまう。 「助けないほうが良かった?」 「これは、違くてっ」 「違うって? 勃起させて我慢汁垂らして何が違うの?」 痛みを感じる程の力で握られ上下に擦られ、自由になったはずの脚に力が入らず抵抗もできない。 「ぅ・・・ ぁ・・・っ」 「感じてないで答えてよ。『好きな人』の為に経験出来れば蓮くんは誰でもいいんだもんね?・・・僕以外だったら」 奏汰の指が陰茎にくい込んで、痛みと握り潰されるんじゃないかという恐怖で膝がガクガクと震える。 「かな・・・、ぁっ、痛・・・っ」 「それも嘘でしょ? だって蓮くんの汁止まんないじゃん」 「ほんっほんと! も、やめ・・・て!」 耐えれなくなって逃げようと腰を浮かせるが曲げた両膝を捕まえられ、前のめりになった奏汰が俺の屹立に自分のそれを押し当てて来る。 擦り合わせるように腰を前後させる奏汰。 こんなの挿入しなくてもセックスと一緒だ。 俺のせいで奏汰がおかしくなったんなら、俺が止めなきゃダメだろ。 「やだ、お前とはヤれないって! 正気になれよ奏汰!!」 「蓮くんを好きになるのが、セックスしたいって思うのがおかしい事なの? 僕は、前田くんの気持ち分かるよ。どうしても手に入れたくて、その為には手段を選ばない、ううん、選んでなんかいられないんだ」 腰を引いた奏汰は自分の昂りを握る。 ピタリと奏汰の先端が窄まりに当てられて、反射的にひくつく俺の後ろ。 「蓮くんが僕を嫌いになっても、『初めての相手』として一生覚えててくれるよね?」 「奏汰、待・・・っ」 前田の気持ちが分かるどころか、やってる事一緒じゃねぇか! ゆっくりと押し入ってくる塊。圧迫感と異物感で吐き気がする。これがアナルセックス? ぜんっぜん気持ち良くなんかない。むしろ気持ち悪い。苦しくて痛くて、痛くて 「・・・いっっってぇ!!! 抜け奏汰このクソデカチン!!」 「抜けって、だってまだ半分も挿れてないよ?」 「半っ!? 尚更無理だろ!早く抜け!」 「待って蓮くん。そんな怒鳴ったら中締まって・・・・・・・・・ぅ!」 「は・・・?」 痛い尻の中がジワリと熱くなる。 まさかとは思う、まさかとは思うけど! 「はぁ・・・ごめん、中で出ちゃった♡」 てへへ、と自分の頭に手を乗せて悪びれる様子もなく奏汰がはにかむ。 嘘、だろ。 奏汰とヤッてしまったうえに初めてで中出しとか。 ケツの痛みとあまりのショックで気が遠くなってくる。 「蓮くん!? ちょっとしっかりして! 中の精液出さないとお腹壊すからお風呂行こう!」 白目を向いた俺を見て慌てた奏汰に挿入したまま抱え上げられて、深く入らないように尻を支えられて階段を下りる。 「ひっ、あ・・・ぁ」 奏汰が歩く度、振動と中に出されたものの(ぬめ)りで少しずつ挿入が深くなる。 穴は裂けそうに痛いのに内壁は快感を覚えていて、奏汰の腹に擦れる屹立がまた先走りを溢れさせる。 しがみつきたいのに後ろ手に拘束されたまんまで寄りかかっているしか出来なくて、奏汰以外のどこにも頼れない俺はいっそこのまま奏汰を好きになれれば楽になるかもしれない、と思う。 バスルームの壁にもたれ掛かるように床にそっと降ろされ、奏汰が腰を引く。 「あ、・・・だめ、それっ」 オモチャや指とは違う太くて肉々しい塊が抜け出る感覚は、排便する時と似ているようで別の快感を伴っていて、声を漏らさずにはいられなくなる。 「あ─・・・、ぅあッ」 ズルッと全てが引き抜かれたと同時に、自分の腹に白濁を吐き出す。 やば・・・、イッちゃったよ俺。奏汰のチンコで・・・ 「蓮くんイキんで。中のせーし、ちゃんと押し出して」 「は・・・ぁ、う ぅ・・・ぅ」 奏汰に言われるまま下腹部に力を入れてみる。 「あっ! 出てきたよ! 蓮くんのお尻の穴から僕のが。・・・わぁ~、すごくヤラシイ。頑張ってる蓮くんのお尻の穴、すっごく可愛いよ!」 なんなんだよコイツ。キラッキラの瞳で人のケツ穴見て興奮して。マジで変態かよ。 「ぅ・・・、ん はぁ」 俺は奏汰の変態ぶりに呆れて、ケツをまじまじと見られている恥ずかしさも忘れて溜息しか出ない。 穴から出した奏汰の精液が肌を伝い垂れて床に液だまりを作る。 「蓮くん上手。えらいえらい」 頭を撫でられ無性に腹が立ってくる。ふざけんな、何が「えらい」だよ。 すっげぇ痛かったんだからな! つーか今も違和感すげぇんだからな! なのに結局気持ち良くなってイッちゃうし、初めてが前田じゃなくて奏汰で良かったって思ってる自分がいる。 奏汰に腹が立つのと同じだけ俺自身にも腹が立つ。 結城さんは処女が嫌いで もちろん男なんか好きじゃなくて。でも彼を好きになった俺は報われないとわかっていて無駄に足掻いて。 奏汰にこんな事をさせるなんて。軽い気持ちだった自分は本当に馬鹿だった。 「奏汰、ごめんな」 「どうして蓮くんが謝るの。僕は好きな人とできて嬉しいよ。無理矢理だったから謝るのは僕のほう。ごめんね、十分に解して無かったから痛かったよね」 「っ、お前が謝んな! 俺が全部悪い!」 浅はかな自分が情けなくて、周りを巻き込んでしまった後悔で涙が出そうだ。 「ああっ、泣かないでよ蓮くん。いや やっぱ泣かせたいけど、でもそんなふうに泣かせたい訳じゃないんだよ~」 正面から抱きしめられて、背中に回った奏汰の手が腕を拘束しているガムテープを剥がしていく。 「肩とか関節とか色々、痛くない?」 「ぅ・・・だい、だいじょぶ」 「怖い思いさせてごめんね。好きだよ蓮くん」 「・・・うん」 なんで「うん」なんて言っちゃうんだ。受け入れちゃダメだってわかってるだろ。俺は、結城さんが好きなはずだろ・・・? 俺は自分なんかを好きになる奴が苦手だ。 でも考えてみれば、今まで俺は好意を向けられた相手は女性しかいない。ゲイの俺にとってそれは違和感でしかなくて、苦手意識を持って当然だったのかもしれない。 まさか男の奏汰が自分を好きだと言い出すなんて思いもしてなくて・・・ なんだろう、こうして奏汰に抱きしめられてると、どうも落ち着かない。 こいつを汚しちゃダメだって思ってる反面、こいつにめちゃくちゃにして欲しい気持ちもある。 「奏汰、俺・・・」 「ああ! そうだ、前田くん!」 「えっ? あ、ああ・・・」 そういえばあのサイコ野郎を放置したままだ。 つか俺今、奏汰に何を言うつもりだった? あっぶねぇ。ノンケの奏汰が俺を好きだなんて、ゲイが珍しいだけでただの興味本位じゃん。血迷うなよ自分! 気を取り直して、バスタオルを腰に巻いた俺たちが部屋に戻ると 「んん~!んー、んー!」 イモムシみたいな前田が床に転がって暴れている。 「前田くん、僕は君を許さないよ。僕の大好きな蓮くんに手を出したんだから」 奏汰は転がる前田に近付いてしゃがみこみ、口元のガムテープを一気に剥がす。 「うっ!」 「そうだ。前田くんのお尻も気持ち良くなりたいよね? ちょうどいい物があるよ」 開発ボックスから奏汰が取り出したのは、イボイボの突起が複数ついた極太の黒いバイブ。 我ながらなんてものを買ったんだろう、と背筋が寒くなる一品だ。 「ま、ままま待って中谷! 俺はタチ専だから掘られるのは・・・」 「タチ専? よく分からないけど、前田くんはゲイなんでしょ? だったら問題ないよね」 前田の体中に巻かれたガムテープの尻の部分だけが出るように手で裂く奏汰。 「すみません! ごめんなさいぃぃ!」 「もうしない?」 「し、しないよ。約束する!」 「もしまた蓮くんに酷い事するなら、コレ突っ込んで学校の前に前田くんを捨て置くことになるからね」 「ひ・・・っ。わかった、わかったから!」 青ざめた前田の顔を見て納得したのか、奏汰は雑に前田を巻いたテープを剥がしていく。 「まさか中谷がこんなにブラックだとは・・・」 「へへ、蓮くんに関してはだけどね」 ははは、と笑い合う奏汰と前田。 イヤイヤ俺に関してはブラックになるとか怖いって。 ヴヴヴ・・・、と床に落ちた奏汰の制服のボトムスからスマホのバイブ音がする。 「母さん今日夜勤だからもう家出るって。あ、良かったら前田くんも一緒に夕飯食べない?」 「「え!?」」 「ちょっと待て奏汰、マジで言ってんの・・・?」 信じらんねぇこいつ、自分を犯そうとしてた奴と一緒に飯食うとか有り得ねんだけど。 「いいのか・・・? 俺、2人に酷いことを・・・」 誘われた前田も相当困惑している様子だ。 「危機一髪だったけど、蓮くんの処女は僕がもらったからもういいよ。それに前田くんは貴重なおホモだちだから!」 「中谷~~~」 親指を立ててグッドサインを作る奏汰と、うるうると瞳を潤ませる前田。 なんだよこれ。アホらし・・・ こうしてストーカー前田は奏汰の懐の広さ(?)によって許され、おホモだちへと昇格したのであった。 俺はというと、尻の痛みもさる事ながら、奏汰に対して芽生え始めたこそばゆいような感情に戸惑うばかりだった。

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