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第17話 unlock 1

ーーーーーーーー 休み明けの月曜日。 僕は教室の窓から雲の少ない青空を見上げ溜息を逃がす。 「はぁ・・・蓮くん、可愛い・・・」 「どうした中谷。そんな憂い顔で外見てたら、鍛えられた尻が無防備で俺に襲われても知らないぞ」 いつの間にか隣に並んだ前田くんに パン、と尻を叩かれる。 「特に鍛えてはないよ。体質的なものだよ」 「そうなのか!? 羨ましい限りだな。さすがはモテ男、今朝も下級生に声掛けられてただろ」 「挨拶されただけ。みんな、イメチェンした僕が物珍しいんだよ」 「そんなことないよ。俺は元々中谷がカッコイイってわかってたし、みんなもそれに気付いたって事だよ」 「ありがとう。お世辞でも嬉しい」 嬉しい、けど・・・ 「蓮くんにも思ってもらえたらなぁ」 「言わないだけで思ってるんじゃないか? 実際中谷を変えたのは蓮くんじゃん。俺にはいい感じに見えたけどな、ふたり」 いい感じって、どこをどう見たらそうなるの前田くん。 蓮くんには他に好きな人がいて、その人の為に男を落とせるくらいのビッチになりたくて、僕は蓮くんのその願望を利用してるだけの卑怯な男なのに。 「あれからちゃんとヤれた?」 「まさか。ストーカー案件も解決してお泊まりは無しになっちゃったし、毎週日曜の開発も昨日は断固拒否状態で・・・もう! どうせストーキングするならもっと時間かけてやってよ前田くん!」 「ええっ!? 俺のせい!? いや俺が悪いけどさ・・・なんかごめんな」 蓮くんに拒否されてるのは前田くんのせいじゃない。僕が無理矢理犯したからだ。八つ当たりして謝らなきゃいけないのは僕のほう。 でも毎晩抱きしめてた蓮くんの体に突然触れなくなって、なのに彼の泣き顔だとかイキ顔だとか、肌の感触や尻がキツキツだったとか・・・生々しく脳裏やアソコに残っててどうにかなりそうなんだ。 「前田くんはいつもどうやって男を口説いてるの?」 知りたい。もう一度蓮くんとセックスできる方法・・・じゃなくて!仲良くなれる方法があるのなら。 「口説くなんてしないよ。縛って快楽だけ与えてやればいいんだよ。そうすればオスみ溢れるガチムチだってすぐにメス落ちする。あ~、あの瞬間が堪んないんだよな~」 嬉々とした表情でグラウンドを見下ろす前田くん。 「あっ、見ろよ中谷。あそこでサッカーしてる林なんてさ、柔道部主将で普段威張り腐ってんのに俺の前じゃ発情期の猫みたいに鳴き喚くんだよ。可愛いだろ?」 男らしくて柔道部主将で昼休みに友達とサッカーするリア充な林くんが可愛い?僕にはよく分からないけど、前田くんはゴツイのがタイプなのかな。そして猫が好きなのかな? 前田くんの好みは置いといて、そういえば蓮くんもガムテで拘束されてたのに前田くんに弄られて勃起してた。 もしかして蓮くんもそういうのが好きなのかも・・・ 「ありがとう前田くん、参考になったよ。あと、八つ当たりしてごめん」 「いいよ全然。蓮くん、落とせるといいな。応援してる」 前田くんは僕の尻を撫でて自分の席へと戻る。 正直言って変態だけど前田くんはやっぱり優しくていい奴だ。これからは『師匠』って呼ぼう。 「ただいま」 帰宅すると既に夕飯が並べられた食卓の前に座る蓮くんがいて、もし蓮くんと結婚できたらこんな風に毎日帰りを待っててくれるのかなー、なんて妄想してしまった。 「おかえりー。遅かったね、今日は蓮くんのほうが早かったわよー。先に食べてって言ってるのに、あんたが帰るまで待つってきかないんだから。さっさと手洗って来て食べな」 母の言葉を聞いて、ちょこんと座る蓮くんが10倍可愛く見えてくる。何それ何それ、マジで奥さんみたい。 速攻で手を洗い蓮くんの隣に座る。 「俺より遅いなんてめずらし」 「委員会長引いちゃって。蓮くんは相変わらずバイト休みなの?」 ふたり同時に「頂きます」と手を合わせて、母の料理を口へ運ぶ。 「あー、うん。もう潮時かな。新入社員が研修来てからバイトはみんな削られて辞めたヤツもいるし。俺も今週中には辞めるって言ってくる」 「えっ、辞めちゃうの? 好きな人は?」 「あー・・・、そう、だな・・・」 何そのハッキリしない返事は。好きな人のことはもういいの? それとももしかして何か進展があったとか!? 「蓮くん好きな人いるの? 彼女?」 「いや、彼・・・女とかじゃっ」 母の無遠慮な質問に蓮くんは言葉を詰まらせる。 「イケメンだもんねぇ。いないわけないわよね。奏汰もイメチェンして少し前までは彼女いたみたいなんだけど。元が根暗だから飽きられちゃったのかしら。最近は蓮くん蓮くんって。彼女ロスに付き合わされてるんでしょ? ごめんねー」 「おばちゃん、違くて・・・イヤ、うん。・・・俺は別に。いつも夕飯ご馳走になってるし」 「じゃあ今日、泊まりに行っていい?」 「は!? ・・・う、うん」 僕がどさくさに紛れてお泊まりを強請ると、少し慌てながら渋々頷く蓮くん。 母よ、ナイスアシストです! 「もーあんたはほんっとに! 内弁慶のくせに懐いたらしつこいんだから。蓮くんも迷惑ならちゃんと断らなきゃダメよ? 夕飯のことは気にしなくていいの! この前もみっちゃんからお米やお肉たくさん頂いたんだし」 “みっちゃん”というのは蓮くんの母親で、お向かいさんのよしみでうちの母とはかなり仲がいい。 てか母さん! せっかく蓮くんがOKくれたのに余計な事言わないでよ。空気読んで! 「別に迷惑とかじゃ・・・。音々の弟だし」 チクッ と心臓に魚の小骨が引っかかったような痛みが走る。 蓮くんの中での僕のポジションは幼なじみの弟で、多少わがままを言っても聞き入れてくれるくらいはしてくれて、「好きだ」と言ってもきっと真剣には受け取ってもらえない。それが現実。 奥さんみたいだなんて、ありえないほど虚しい妄想なんだと気付かされる。 前田くんの言った通りに縛って快楽を与え続けたら、蓮くんは鳴いて喚いて僕を求めてくれるようになるのかな。一人の男として意識してくれるようになるんだろうか。 僕は行儀良く口を閉じて咀嚼する蓮くんの綺麗な横顔をじっと見つめる。 「なに?」 視線に気付いた蓮くんはチラッと一瞬こっちを見て、気まずそうにまた箸を口へ運ぶ。 「なんでもない」 好きになってほしいけど、自分がいい男だとは思えないしきっと無理だろう。 せめて男として意識してほしい。 自分が身の程知らずで高望みをしているのはわかってる。だからこそ突き進むしかないんだ。 「ご飯食べたらすぐ蓮くんち行くから。風呂も蓮くんちで入る。いいでしょ!?」 「バカ!あんたね、遠慮が無いのもいい加減にしなさいよ!」 「母さんには聞いてない。いいよね、蓮くん!?」 「べ、別にいいけど・・・」 やった! 「もー、蓮くん甘やかしちゃダメよ! 奏汰は図体ばっか立派になって中身はまだまだ子供なんだから!」 「風呂くらいマジでいくらでも使ってくれて構わないから。おばちゃんこそ気遣わないでよ。ほら俺だって、昔よく音々と一緒にここで風呂入れてもらったじゃん」 「そういえばそうだったね~。懐かしいなぁ。音々のほうが体おっきくて、男と女逆転してるーなんて言ってたわよねぇ」 「一緒に寝たらいっつも俺、音々に潰されてたしさ」 蓮くんと母が楽しそうに昔話に花を咲かせる。 ちょっと待って。蓮くん、姉ちゃんと一緒に風呂入ってたの!? 嘘だろ何それ姉ちゃんが羨ましすぎる! 僕だって、僕だって蓮くんと同い歳に生まれてたらきっと一緒に風呂に入って一緒に寝て、って一緒には寝てくれるからそれはいいとして。 とにかく、たとえ相手が姉でも、蓮くんと一緒にお風呂は絶対に許せない。

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