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第22話 災い転じて 3

フンフンと奏汰の鼻息がかかって、止むことのないバードキス。 「~~~っ、つかもっかい言う隙がねえっつの!」 「あは。もう一回聞きたいんだけど、蓮くんが目をぱちくりしてるのが可愛いくて つい」 奏汰の満面の笑みに耳が熱くなる。 そんなこと考えながらキスしてきてたのかよ。ずっと顔見られてたとか恥っず・・・ 下げようとした顔は大きな手にガッチリ挟まれて固定され、俺は至近距離で真顔に戻る奏汰から目を逸らす。 「言って。ハイ、僕と?」 「かっ、奏汰・・・と」 「何を?」 「せ・・・・・・・・・くす」 「をなんだっけ?」 「・・・・・・・・・したい」 くっっっっそ恥ずかしい。なんだよこれ! さっきは勢いでサラッと言えたのに、改めて言わされるとくっっっっそ恥ずかしい!! 顔が熱くて溶けそうだ。ついさっきまで奏汰の手のほうが熱いくらいだったのに、今は俺の顔のほうが何倍も熱を持ってる。 「蓮くん、好きな人としてきたんでしょ? 今日はやめとこっか」 「や、なんで・・・っ俺、ちゃんと言ったのに!」 「今したいんだ? 必死になっちゃってかーわい♡」 奏汰がニヤニヤと満足気に顔を緩ませる。 しまった。完全に遊ばれてる。 これ以上熱くなったらショートしてしまいそうなのに、奏汰の追撃は終わらない。 「あんなに拒んでたくせに、好きな人とヤッたのがそんなによかったの? 足りなくて僕ともしたくなった? 蓮くん淫乱だったんだね」 「違、そんなんじゃ」 「どう違うの?」 「結城さんとしても勃たなくて、気持ちいいとか思えなくて、奏汰に・・・会いたいって」 なんて言えばいい? 他の男とセックスして来てすぐにヤリたいなんて淫乱そのものだ。どう違うかなんて説明も言い訳もできないじゃん。 「僕だと気持ちいいってこと?」 「う・・・ん」 「どう触られるのが気持ちいい?」 「どう、って」 こうして頬を包まれてるだけでドキドキして、何度も奏汰に判を押された唇が じん と痺れたようで、もう十分気持ちいいんだけど・・・ それじゃ足りない体が浮ついて、今ならどう触られたって全部がきっと気持ちいい。だから 「奏汰の好きにしてほしい」 「いいの? 蓮くんのここも」 指さされたのはちょうど乳首の辺り。 指先は体に沿って触れないように下がっていく。 「ここも」 臍の高さで一旦止まり更に下へと向かい、股間を指さしまた止まる。 「ここも。もちろん背中も腰もお尻も。蓮くんの全部に触るけどいい?」 「ぅ・・・」 痛い尻の中が きゅん と締まる。 全部って、ナカも? とは聞けず、セックスしたいと言ったんだから当たり前だと自己完結する。 「い、い」 触ってほしい。 この痛みを、結城さんじゃなく奏汰からのものに変えてほしい。 トップスの裾から内側を這い上がって来た手が胸を覆って左右に揺れる。奏汰の手のひらが乳首に擦れてなんだかくすぐったい。 「ん、・・・ふッ」 思わず笑ってしまう。 「やっぱ開発係はまだやめれなさそうだなあ」 「別に、もおいいっ、て・・・ブフッ」 「だーめ、蓮くんを開発するのは僕自身の為でもあるんだからさ」 奏汰は胸の上まで俺の服を捲り上げ「持ってて」と言う。 両手でそれを握り、ベッドの上に立たされ奏汰を見下ろす。 何をされるのかわからない不安と期待が心音を大きくさせて、全身にセンサーが張り巡らされたように緊張感が走る。 最初にセンサーが反応したのは、奏汰の唇が触れた腹筋。ぎゅっと収縮してピクピクと動くのが自分でわかる。 小さな痛みを感じるくらいに吸われると、心音のアラートが徐々に音量を上げる。 視線を上げた奏汰とバッチリ目が合って、言い様のない気まずさに ぎゅうっと目を閉じた途端、今度は腰から背中にかけてのセンサーが大きく反応する。警戒レベル強のその部分を指の腹で撫でられ、「んう」と喉の奥が鳴る。 上下に滑る不規則な指の動きで、衝撃を受けてもいないのに膝が折れそうになる。 「しっかり立っててよ蓮くん。これくらいでヘバッてたら最後までできないでしょ」 「うッ・・・ぅ、んっ」 奏汰の言う通りだ。背中や腰を撫でられたくらいで情けねぇ。こんなんじゃ、ただでさえ痛いケツの中を弄られたらどうなるんだ。自分から求めたくせに痛てぇって泣き喚くつもりかよ、だっせぇな俺。 「へば・・・て、ねーしっ。早く下、触れよ!」 「まだだよ。初めての時はあんな状況だったし、今日はうんと優しくしてあげたいから」 「優しいとかいらねえっ、俺は」 女じゃないし。何より1秒でも早く尻の痛みが奏汰のものになればって思ってんのに~! ったく紳士気取りでモタモタやってんじゃねーよ! 「早、く・・・かな ひあッ」 上半身に微弱の電流が走るような感覚に声が裏返ってしまう。 なんだ、今の。胸んとこが急にじんじんして・・・ 細く目を開けると舌先で俺の胸を舐める奏汰が見える。 さっきは擽ったいだけだった乳首なのにどうして。背中を撫でられながら触られると、まるでそこも同じように性感帯になったみたいだ。 「蓮くん、乳首立つと気持ち良くなるんだね」 そ、そうなの? そんなとこ弄られた事無いからわっかんねーよ。 ちろちろと舌先で舐められ、唇で挟んで吸われ、歯で甘噛みされ 「どれがいちばん好き?」 と奏汰に聞かれる。 どれも好き。どれも気持ちイイ。そう答えればいいだけなのに、奏汰の質問を真に受けて「どれだろ」と真剣に考えてしまう俺。 「早く答えてよ。時間切れ」 「あっ、・・・ぁ、ぅ」 躊躇している間に じゅっと吸われそのまま突起を舐られて、もう片方を指先で捏ねられて腰が砕けそうになる。 奏汰にこんな器用なことができるなんて聞いてない。『巨根マグロ』はガセだったのか!? 「もっ、もういいから! 後ろ・・・もう」 下着の中で屹立が震えて濡れる感触が気持ち悪い。 痛いのにそこを埋めて欲しいとヒクつく後ろが腹の中を焦れったくさせる。 「見てわかんない? 僕、いま手が離せないんだ。欲しいなら自分でパンツ下げてよ」 「う・・・っ」 そりゃそうだ。全部奏汰にやってもらおうなんて都合が良すぎる。 骨盤の辺りボトムスの履き口に親指を掛け下げようとして、屹立に下着が引っかかる。 少し屈んで奏汰の肩に手を置いて片手下着を下げると、一度下を向いたそこが反動で跳ね奏汰のシャツに先走りを飛ばす。 「あ・・・ごめ・・・」 「いいよ別に。むしろもっとつけて」 ようやくベッドに寝かされ、一緒に横になった奏汰が抱きしめてくれる。 いつも眠る時と同じ場所。違うのは、俺の目に映るのは壁じゃなくて奏汰のつむじだってこと。 俺の片脚を脇に抱えると、奏汰は潤滑ジェルを指に絞り出す。 ひた、と後ろに冷たさを感じて体が強ばる。 「ちょっと腫れてる・・・。ほんとにヤッちゃったんだね・・・ムカつく」 低く重い奏汰の声。 容赦無く指二本が差し込まれて強ばった体が大きく震える。 「い・・・ッ、」 「僕こんなにムカついてるの生まれて初めてかもしれない。蓮くんが痛くても、気にしてあげられないかもしれない。それでも僕とセックスしたいって言える?」 「した、い。痛くてもっ、いい」 なんでもいい。奏汰でいっぱいにして欲しい。お前を傷付けた俺に罰を与えて欲しい。 俺は縋るように奏汰の頭を抱える。 「・・・嘘だよ。・・・大好きな蓮くんに、僕が酷いことできるはずないでしょ」 差し込んだ指をゆっくりと動かす奏汰はいつもより何倍も優しい気がした。 だけど俺にはそれが酷くされるよりも辛くて、いっそブチ犯してくれたほうがマシに思える。 「奏汰、痛くしろって! じゃないと俺・・・」 「しない。でもわかってて。本当は無茶苦茶腹立ってるし蓮くんをめちゃくちゃにしたいって思ってることも、僕がそれをめっっっっちゃ我慢してるってことも」 「っうう・・・」 ぎゅうううっと骨が変形するかと思うくらいの痛い抱擁が、奏汰の本音そのものなんだと思った。 痛くする事も酷くする事もできるはずなのにあえて優しく抱くのは、俺に罪悪感を捨てさせない為だ。 奏汰お前、真っ直ぐで単純で純粋なだけじゃなかったんだな。本当は狡くて小賢しくて・・・。 俺、お前のこと好きになって早くも後悔してるかもしんない。 奏汰とヤッた二度目は、結城さんが残した痛み以上のやたらデカチンの奏汰に拡げられた痛みで、結局俺はボロボロになった。 「蓮くん、好きだよ。好きすぎて、胃が痛いくらい好き」 「僕の全部が入ったら、もっと好きが増して好きの爆発系になるくらい好き」 とか何とか訳の分からない好きを最中に浴びせられ、なんでこんな奴を好きになったんだ、と自分を責めた。 けど 「もう、僕以外としちゃ駄目だよ?」 と、動けなくなった体に抱きついてくるのが可愛くて、俺は初めて奏汰の背に腕を回し壁に背を向けて眠りに就いた。

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